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第47話  テオの探していた『あの子』

「マスターっ! 心配したんですよっ!」

「ごめんね、みんな。ドラゴンは・・・。倒せたみたいだね」

「ああ。朱璃姉ちゃん、痛いところとかないか? 平気か?」

「うん。シアンちゃんに直してもらったから大丈夫。ね?」

「えっ、あっ、は、はいぃっ!」


 人見知り+赤面症か・・・。みんなの視線が集まった途端、顔を真っ赤にして、慌てて俯く。これじゃあ、なかなかみんなと仲良く出来ないかなぁ・・・。

 でもまぁ、時間を掛けても良いんだもん。最終的に、仲良くなれたら・・・。


「寒い・・・」

「あれ、シュリちゃん、大丈夫? 此処まで来るのに汗かいたからかな?」

「ああ・・・。まだ上行くの? もうドラゴン倒したし帰るんじゃダメ?」

「ごしゅじんさまが大変ならこれでいいよー。みんな、付き合ってくれてありがとー」


 エリーがニコッと笑って言う。これが見れただけで十分だ。来た意味があると思える。それに、シアンちゃんも。

 という感じで帰る事に決まったから、村の人たちに挨拶をして、エリーの魔法で家に帰った。


「あ、やっと帰ってきたよ」

「もう、遅いですわよ」

「咲耶、花凛・・・。なんで・・・」

「ちょっと手伝って欲しい事があるんだけど・・・。あ、新しい子が居る。よろしくねー。って、あれ? 一人じゃないよね。まあいいや」


 な、なんだなんだ? 一体私は何をすればいいんだ? 急すぎるし、大体何で私の所に来たのか不明だ。私はお手伝いさんじゃないんだよ?


「お手伝いとはいっても、そういう事ではなく・・・。新しい子を迎え入れられるか、という事ですわ」

「は?」

「今から行くところにね、行き場のない女の子が居るらしいの。まあ、私たちのメインは魔物退治なんだけど、その子を引き取ってくれる人を探して来て欲しいって言われて困っちゃって」

「朱璃の顔が真っ先に思い浮かびましたの。ですから、来てみましたわ」


 もう一人は行けるんだよね・・・。でも、どうだろう。シアンちゃんが居るから、もう一人人見知りの子だったら厳しい。そんなには面倒を見きれないもん。

 あ、それくらいは知ってるのかな。聞いてみよう。


「ああ、確か・・・。喋れないんだっけ。なんか、小さい時に色々あったとかで。人見知りとかではないけど、喋れないとなると、ちょっと貰い手が厳しくて」

「筆談になってしまうと思いますわ。いちいち大変ですわよね・・・。まあ、会ってから決めるんでも良いという事にはなっていますわ」


 じゃあ、そうしようか。私たちは休む暇もなく、二人によって・・・船に乗せられた?!

「ちょっと?! 聞いてないし! 船に乗るの?!」

「え? ああ、言ってなかったっけ? 島に行くの。この、ええと、シアンちゃん? は船酔い平気?」

「分かんないよ。セレスとテオは馬車平気だったし・・・」

「問題ないよー」

「大丈夫ですよぉ」


 あ、そっか。最悪セレスは飛んでりゃ問題ない。テオはなんだかんだでいろんなパーティに入ってたみたいだし、問題なさそうだよね。じゃあ、問題はシアンちゃんだけ。

 心花でも慣れたし、時間掛かっても慣れない事はない。ダメだったら頑張って貰うしかないだろう。


「ご、ごめんなさいっ、船どころか、馬車も乗った事なくてっ・・・。分からない、です。シュリ様」

「そう。気にしなくて良いよ。で、どんな島?」

「今、何かの手違いで魔物が溢れ返った超危険な島」


 ・・・。何かの手違いって、誰の? 魔物が溢れ返るような手違いって何さ。

 良く聞いてみれば、魔物のボスを放置してしまっていた、ということらしい。気が付いたら魔物の巣と化していた・・・。阿呆かっ!


「まぁまぁ。経験値入るから、そう怒らないでさ。シアンちゃんのレベル上げなきゃいけないんでしょ?」

「まぁ、そうだけどね。でも、やっぱり、関係ない人が、そんな危険な目には遭って欲しくない」

「・・・。そう、だね。あ、先に言っておくけど、花凛はさっきまで別の場所で夜通し魔物退治してて今寝てるから、絶対に起こさないでね。異常なまでに怒られるよ」

「そりゃ怖い。花凛の怒ったのって・・・。あ、そうだ」


 私は、ふと、優人と麗華の事を思い出した。咲耶にも言わないと。

 二人の事を話していると、咲耶は苦笑いして私の頭を撫でた。


「そっか。まだ目の敵にされて。なんか、ごめんね。守ってあげられなくて」

「咲耶は気にしないで。みんな、変わったよ。もう、いじめられないと、・・・。思いたいよ」

「・・・。学級委員長、やってたのに。知ってたのに。でも、見て見ぬふりしてた。いけないって、分かってた。本当に、ごめんね」

「あぁ、もう、泣かないで。気にしてないよ。もう、ね。咲耶の気持ち、十分伝わってるよ」


 咲耶は涙を拭って、花凛の部屋の隣に行く、と言って部屋を出て言った。

 ちなみに、この船は私たちの貸し切り。何処に居ても問題はない。が、広くて探せないから困る。


「ねえ、みんな、疲れてる?」

 私が訊いてみると、兎たち、猫たち、それから心花はお疲れの様子。セレスはもう矢が残り少なく、魔力も少ないとのことだ。シルシィも魔力が怪しいそうだ。


「早く回復する方法とかないの?」

「寝た方が早いって、本に書いてありました」

「じゃあ、まだ三時間位あるし、少し寝ようか」

『はい』

 疲れてるんなら素直に休んだ方がいい。私たちは適当に部屋に入り、ベッドの中にもぐりこんだ。



「朱璃! 朱璃!」

「はっ!」

「もう、みんな起きたよ。ほら、すぐ着くから起きて」

「ご、ごめん!」

「大丈夫よ」


 咲耶と花凛が私を起こしてくれた。咲耶はポケットからハンカチを出すと、口をくいっと拭う。

「・・・っ!」

「ほら、私たちしかいないからさ。気にしないの」

「あ、うん」


 船は間もなく港に着いた。何処となく、雰囲気が暗く、人が居ない。魔物のせいか。

 本来なら、この港は人が多く、賑わっているそうだ。随分変わるものだ。


「まずはこの辺りの魔物を倒して、それから予約してある宿に向かいますわよ」

「わかった。みんな」

『はい』


 それぞれ武器を取り出す。結構強い魔物もいるようだ。用心しないと、怪我をするかもしれない。

 歩いて行くと、ああ、確かに。大量の魔物で埋め尽くされていた。人が住んでいるところは、バリアが張ってあるらしい。

 とにかく、手当たりしだいに魔物を倒す。ボスを倒さないと、またすぐに増えるんだろうけど。



「良く来て下さいました!」

「それで、ボスは何処に居るの?」

「此処をまっすぐ行った先の、山の中の洞窟です」

「じゃ、行きますわよ。大丈夫、すぐ帰ってきますから」



 驚く総長を置いて歩いて行くと、確かに、こっちの方から魔物が大量に流れ出ているようだ。それを倒しつつ、私たちは山を目指して歩いて行く。

 山まで到達すると、今度は洞窟を探さなくてはいけない。まあ、すぐ見つかった。


「みんな、魔力は平気?」

『はい』

「準備で来てるね?」

『もちろんです!』


 じゃ、大丈夫だ。花凛と咲耶に合図をし、一斉に洞窟に踏み込んだ。

 え・・・? 何これ、何もいない。え、嘘、此処に居るんじゃなかったの?


 すると、急にあたりが暗くなる。バッと振り向くと、其処に居たのは、

「なんて大きなドラゴン・・・」


 どうやら、成長し過ぎてこの洞窟にはおさまらなかったらしい。いや、どう見ても入らない。

 じゃあ、もうずっとここにはいなかったんじゃ? この山全体が『住処』、か。

 とにかく、あれを倒せば、魔物がこれ以上増える事も無くなる筈だ。何も言わなくても、全員がそちらに向かって駆け出す。


「ローリ、魔法の準備をさせて、シルシィ、良いね? セレス、矢の準備を!」

『はい!』

「颯也、エリー、心花、ティーナ、テオ!私たちはこの辺から攻撃する、行って!」

『了解!』


 花凛と咲耶が何をするのか、私は良く知らない。それに合わせて、此方の行動を変えるべきだろう。

 少しそちらに目を向けてみる。花凛は、エルフ魔法だな。咲耶は・・・。剣か。じゃあ問題はない。

 私たちは一斉に魔法を打つ。ヤバい、花凛がワンテンポ遅れた! みんなにぶつかったら・・・!

 その心配はいらなかったようだ。全員きちっと魔法の速度を見分け、当たらないスピードで突撃。咲耶が少し戸惑ったか。まあ、この程度なら、問題はいらないな!


「朱璃、私に合図を出して! 同時に撃つわ!」

「わかった。ローリ、もう平気?」

「・・・。大丈夫」

「じゃあいくよ、はい、撃ってっ!」


 今度はビシッとそろったな。咲耶もずれていない。向こうでも調節してくれたか。

 ドラゴンの反撃もあるが、すべて颯也が守りきり、ダメージは誰も受けていないようだ。

 反撃の隙を与えないよう、私たちは出来るだけ早く魔法を打つ。と、エリーが此方に飛んできた。


「どうしたの?」

「何か、言ってる。あのドラゴン。ごしゅじんさま、ちょっと来て」

「? 何か言ってる?」


 エリーに連れられ、私は前衛の人たちの居る位置へ行った。

 確かに、何か言っているかもしれない。でも、なんだかまでは・・・。

 な、何を伝えたいの? ねえ、教えてよっ!


(あの子に、手は、出させない・・・)

「っ?! あの、子・・・?」

「朱璃、姉ちゃん?」


 私はある事に気がついた。急いでさっきの洞窟まで引き返す。

「そうか・・・。そういう事だったのね」

 其処には、小さな子供のドラゴンが居た。

 私はしゃがんで話しかけてみる。


「ねえ、あれ、あなたのお母さん?」

(ん・・・? そうだよ)

「ねえ、私、悪い人じゃない。あのお母さんが、魔物を呼び寄せているせいで、村が大変な事になっちゃってるの。それで、退治しに来ちゃったんだけど、もし、あなたを守る為なら、そっとしておく。伝えてくれない? 魔物をこれ以上増やさないなら、あなた達に手を加えないって」

(・・・。わかった、やってみるね)


 子供のドラゴンは、飛んで行ってしまった。

 って、あれっ?! 何で私、ドラゴンと喋れたの?!

 そこで気がついた。ブレスレットが、青く光っている。そういう事か。

 私は立ち上がり、さっきの場所まで走っていった。


「マスター、何があったんですか? 急にドラゴンが動きを止めて・・・」

「とりあえず、少し見守ろう。それから」

「・・・・・・?」


 ドラゴンは此方を少し見てから、山の方へ歩き出した。私はドラゴンに叫んでみる。

「ねえ、私たち、あなたを攻撃したし、せめて、治癒だけさせて!」

 ドラゴンは迷ったようなそぶりを見せたけれど、また歩きだしてしまった。

 そこで気がついた。あんな攻撃、ダメージになっていなかったんだ。傷がほとんどない。


「なんだか分からないけれど、これでいいのかしら?」

「あのドラゴンは説得した。あとは、この辺りの大量の魔物を掃除して、帰ろう」

「・・・。わかったわ」



「ドラゴンを説得してくれたのですね、ありがとうございました」

「ええ。それで、村長さん、引き取って欲しいという少女は?」

「ああ、そのことなのですが、其処の兎のお嬢様、一人で来て欲しいのです」

「・・・へっ? なんで?」

「大勢ですと、怖がってしまうかもしれませんので」


 と言う事でみんなと分かれて、私一人でその子の居るという建物を訪れた。ドアノブに手を掛けると、

「・・・いえ、本当は、さっきのは嘘で。逆で、他の方が、驚いてしまうのではないかと思って」

「ああ、そういえば、見た目に特徴があるのでしたっけ? どんな子なのでしょう?」

「・・・『単眼モノアイ』です」


 ああ。そりゃあ、まあ。普通は怖がったりするかもしれないな。

 まあ、あの子たちの事だから、それはほとんどないと思うが。シアン辺りは怖がるかも。


 扉を開けると、其処には、後ろを向いて座る、綺麗な黒髪の少女が居た。

 村長が声を掛けると、くるりと振り向き、私を見て首を傾げた。


「彼女が、あなたを引き取ってくれるかもしれないパーティのリーダーですよ」

「朱璃です。よろしくね。えぇと」

「マイシカと言います。彼女は喋れないのと、これで、なかなか引き取っていただけなくて」

「・・・。そう、ですか・・・。あ、いや、マイシカちゃんか。良い名前だね」


 彼女は、変わった魔法を使うらしい。パラメータを下げたり、上げたり。それも、特定のパラメータを。それだけだったら驚かないけど、相手を行動不能にさせる魔法とか、時間を一瞬止めるような魔法まで使うとか。


「じゃあ、是非、お願いします」

「だそうですよ、マイシカ。嬉しいですか? ・・・、では、今日はもう暗いので、明日でいいですか?」

「ええ。明日になったら、みんな連れてもう一度来ますね」



 そして次の日。一番そういった不安のないテオを私のすぐ後ろに配置して、その部屋に入った。

 名前も、特徴も、一切伝えていない。少しくらいは、驚くかな?

 そんな事を考えていたのだけれど、テオはマイシカちゃんを見た途端、動きをピタッと止めた。


「マイ・・・? マイ、だよね・・・?」

「?!」


 な、なんで、テオが、マイシカちゃんの事を・・・。

 その時、テオの言っていた言葉を思い出した。

『見た目にちょこっとだけ、特徴があって。良くいじめられちゃうから、俺が守ってたんだ』

 そうか、この子が・・・。


 テオの探していた子。

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