第44話 テオフィール
テスト終わったのでまた投稿開始します! ペースは落ちるかもですが。
「なあ、朱璃姉ちゃん! お願いがあるんだけど!」
「ん? なあに?」
「男の子の奴隷増やして欲しいんだけど!」
夏のある日。急に颯也が言いだした。
ああ・・・。そういえば、この中では颯也だけだね、男の子。なんで今なのかは分からないけれど。
うーん、じゃあ、奴隷商見に行くか・・・。あんまり好きじゃないんだよな、あの人。
「隣街でも良い?」
「え? いいけど」
「そう。じゃあ、チェリーちゃんの準備しないと。颯也、みんなを呼んで来て」
ガタゴトと馬車を走らせて隣街へ。本当は来たくなかった立華家のある街。
まあ、シルシィはバイオレッドで買ったけど。そりゃあ、立華家とあろうものが奴隷商に?! なんてなると困るし。隣の街なら、そこまで気づかれない。ちょっと噂になったらしいけど、権力あるし『人違い』で押し切った。
「おや、お新規さんですか? ・・・いや、みんな奴隷のようですね」
「いつもは隣の街だったもので」
「ああ。それで。どのような人をお望みで?」
「男の子なら何でも良いけど・・・、そうだなぁ、レベル高めでお願いできる?」
「分かりました」
連れてきた中の、一人の男性が目に入った。私より大きいだろう。
種族はおそらく人間。目立った特徴が無いから。この亜人の国で・・・。大変な目にあってきたんだろうな。
「あなた、名前は?」
「ん、俺? テオフィール。テオでいいよ」
「・・・。奴隷っぽくない」
「そうかな?」
何となく、気に入った。私は彼を選んだ。何となくだ。
今まで、何かの都合で助けなくちゃいけないような子ばっかりだったから、選ぶのは慣れてないんだよなぁ。
「名前は、なんていうの?」
「朱璃だよ。よろしくね。で、テオ」
「何だい、シュリちゃん」
「・・・・・・」
いや、蒼泉くんしか興味なかった私は、こういう風に呼ばれたことなんてないんだよ。だって、明らかに自分に興味のないような相手にこんなことするのは、相当の物好きだもの。
「ええと、使う武器は?」
「槍かなー。でも、なんかちょっと強くなった気がするけど、気のせい?」
「ううん。私の使役スキル。年は幾つ? なんで奴隷に?」
「十九。色々あってねー。ま、追々話すよ」
うん、やっぱり奴隷っぽくない。何というか、自分の境遇を楽しんでるような、売られていたのを何とも思っていないような・・・。そんな感じだ。
えぇと、もっと颯也くらいの子のほうが良かったかな?
「ま、何でも良いよ。よろしく、テオフィールさん。僕は颯也だよ」
「ソウヤね。よろしくー」
「馬車も狭くなってきちゃったなぁ。チェリーちゃん、もうちょい大きくても平気かな?」
「平気だと思いますが、一応馬車屋さんにでも行った方がいいかもしれないですね」
シルシィの言う通りだろう。あとで行こうかな・・・。
って! これ、その内花凛の馬車みたいにならない?! ちょっとぉ・・・。
まあ何でもいいや。人数が多いんだし仕方がない。華美にしなければいい話。あと、最悪兎たちは動物の姿でいて貰えば場所取らないし。
「ねぇ、シュリちゃんって、今幾つ?」
「十六、かな」
「じゃあ、もうお酒イケるんだ」
「あんまり好きじゃないし、滅多に飲まないけどね」
うん、あれ以来。だってさぁ、もう、これ以上は・・・。もうみんなも懲りたみたいで、お酒を飲ませよう、という気はないらしい。
私も、覚えてないのに・・・。なんていうのはちょっと辛い。
「ああそうなんだ? ・・・この子たち、もっと小さいよね。だったら、やった事もない?」
「えっ?! はっ?!」
「一回位やってみようか?」
「ちょ、誰かっ!」
私が声を上げると、すぐにシルシィが飛んできた。まあ、たいてい呼んで来るはシルシィだけど。ほら、いつだって呼んだら本当にすぐ来る。
テオを突き飛ばして私を守るようにキッと睨む。
「何のつもりですか!」
「いやぁ? 可愛かったからからかってみようかと」
「マスターは本気で嫌がってたようですが」
「そっか。ごめんねー」
この、のらりくらりとした感じ、あんまりシルシィは得意じゃなさそう。逆に、理詰で対抗されたら、超強い。真面目だからね。
さて、どうするか。奴隷魔法陣を発動させるのは好きじゃない。から、シルシィを呼んだわけで。
「ん? 魔法陣は発動させないの?」
「好きじゃないから。発動させたことなんてあったっけ?」
「さぁ? ないんじゃないでしょうか」
「ふぅん。徹底してるね。ところで、何で俺にしたの?」
「後悔してるよ・・・。もうさぁ・・・」
ほんとに、あの時、分かってたら良かったのに。凄く面倒な感じの人だったなんて。
こういう時は・・・。シルシィより、ティーナかな。
「可愛いねー。君ももうオトナでしょ?」
「んにゃっ?! ちょっと、シュリ様、この人何?」
「ごめん、私、もう無理だった」
「あ、そう・・・。じゃ、頑張ってみるにゃ」
私とティーナの内緒話を、特に気にする様子もなくみているテオ。なんだかなぁ・・・。
もうちょっと、大人しくてしっかりしてるような気がしたんだけど、どこからずれてたんだろ?
「あのにゃあ、テオさん。あたしたちはシュリ様の奴隷にゃ。だから・・・」
「シュリちゃんは可愛い子だよ。何で彼氏が居ないのか不思議さ」
「シュリ様は、遠くに、好きな人が居るんにゃ。詳しくは、知らにゃいけど」
「なんで知ってるの?!」
この子たちに言った事があったっけ? 無いはずだ。じゃあ、なんで知ってるの?
あ、さては雅さんだな! もー・・・。なんで言っちゃうかなぁ・・・。
「ふぅん、俺じゃダメ?」
「多分。シュリ様は、一途にゃ・・・。でも、テオが悪いわけじゃにゃいし、かっこいいじゃにゃいか」
「へー。ティーナちゃんは、俺、好み?」
「嫌いじゃにゃいにゃ。でも、好きでもにゃい」
そのまま暫く二人は談笑していた。私やシルシィなんかよりは、ずっと恋愛体質だろうし。
気がつけば、結構仲良くなってた。おっかしいなぁ。颯也の為に買ったんじゃなかったっけ?
「朱璃姉ちゃん! なんとかしてくれよ!」
「ああ、テオね。無理。私じゃ太刀打ちできない・・・」
「お疲れみたいだな。止めておこう。女の子の話が出ればすぐ恋愛方向に持っていこうとする。あれでいいのか?」
良くはないだろ。でもまあ、悪いとは言い切れないっていうか・・・。
人の考えはそれぞれだし・・・。うぅん、どうしよう。上手く馴染めるかなぁ?
「どーしたのー? あ、シュリちゃーん」
「ああ、テオ。颯也と仲良くなれなかったみたいね」
「そーかな? 結構からかい甲斐があって好きだけど」
「うん、そか。仲良くなれなかったんだね!」
バッサリ言っても、結局ヘラっと笑って流される。ああ、なんて面倒!
颯也は嫌いになっちゃったか。まあ無理もない。颯也にとって、此処の女の子たちは可愛い妹だもの。何があっても、手を出されちゃ困るよね。
「とりあえず、テオはもうちょっと自重するか、・・・、いや、自重して」
「えー・・・。まあいいけど。じゃ、また明日ねー」
ああ、さっさと寝て頂戴。
「な・・・・・・」
「シュリちゃーん! どうだい?」
つ、強い。私たちなんかより、ずっと。
大きな槍を振り回して魔物を薙ぎ倒す。エリーよりも速く、颯也よりも鮮やかに。
「戦いはずっとやってたよ。守りたい子が、居たんだ」
「守りたい、子?」
「そ。幼馴染の女の子」
エリーと颯也、心花が戦っている間、休憩中のテオと話していると、そんな事を言い出した。
私が詳しく聞こうと試みると、テオは急に真面目な顔をして、ちょっと困ったように笑った。
「見た目にちょこっとだけ、特徴があって。良くいじめられちゃうから、俺が守ってたんだ。とにかく、何が何でも守り切りたかったから、強さだけを求めた。
でも、所詮は子供だったし、彼女は連れて行かれちゃって、俺は奴隷商に連れていかれた。
何度も暴れたからさ、すぐに奴隷商に戻される。そんな事を続けてた」
奴隷商に戻された子は、大抵、普通の状態ではない。大人しくさせようと主人たちが攻撃をするから、大怪我をしていて、手足は強い鎖なんかで縛られている、もしくは錘が付いている。
あと、これは私の見方のせいかもだけど・・・。暗い顔をしてる。
「強さだけを求めてた。強いパーティーに入れた時は、少しの間、鍛えて貰ったり。ま、すぐに奴隷商行きだけどね。もし、もし、彼女と会えたら。今度は、守り抜く」
「テオ・・・」
「この性格は生まれつきさ。元に戻しとかないと、彼女に会った時、俺だって気付いて貰えないしねー」
「そ、そう」
だから、大人に買われては売られるような生活をしていたのに、こんなに明るいのか。いや、明るく『振舞ってる』のか。
その子・・・。会える、のかな。分からないけれど、会わせてあげたい。
「強くなりたい。そのためだったら、なんだってする」
「・・・。そう、だね。じゃあ、一緒に頑張って強くなろう。私も、テオがその子に会えるように、探してみるから」
「・・・。生きてると、良いんだけどね」
そうか・・・。連れていかれたのは分かっても、その後の事は分からない。じゃあ、死んじゃってても・・・。
なんだか、私と蒼泉くんみたい。だったら、助けてあげたい。
「なんだか、随分優しいんだね、シュリちゃん。よろしく」
「うん。見つかると良いね・・・。あ、みんな! じゃ、進もっか」
「チェリーちゃん、行きましょー」
いつの間にかチェリーちゃんを動かす係になっていたシルシィが指示を出す。
ゴトゴトと音を立てて馬車が進んでいくと、ふとテオが呟いた。
「シュリちゃんとは、初めて会ったんじゃない気がするよ・・・」
「あっつい」
「エリー、それ、さっきも言いましたよ」
「だって、シルシィお姉ちゃん、ほんとにあっついの」
「それは知っていますが。今何度ですか? ・・・、三十八度」
にしたら、ずいぶん暑い気がするなぁ。そういえば、冬もすっごく寒く感じた。
あ。兎って、暑いのも寒いのもダメだったね。だからか。春と秋はとっても楽しいけど、夏と冬は異常なまでに過ごし辛い。心花が服に耐性の類をつけてくれたから、何とか大丈夫だったけど。
馬車に揺られながら外を見れば、太陽がギラギラを照っている。日当になんて出る気も起きない。
というか、さっきからまるで外に出ていない。他の子たちが戦ってくれてる。
「そっかー。シュリちゃんは兎だから、暑いのは苦手?」
「う・・・。もう嫌になる」
「確か、本当の兎の適温は、十八度~二十四度、だっけ? ・・・あれ? ローリちゃん・・・」
「パラメータが高ければ、少しくらいなんてことない」
ああ、体力もスタミナもあるもんね。あと防御か?
そう考えれば、私はダメだろうね・・・。うぅ、暑い。
「ほら、これ飲んで。シュリちゃんは本当に可愛いねぇ」
「ん・・・。ありがと。・・・って、今の流れ、可愛いのは関係なくない?」
「華奢でか弱くて。でも、割としっかりしてる。ほら、可愛い女の子の条件じゃないのー?」
そうかなぁ? でも、蒼泉くんも、そう思ってくれるかな?
なんて考えていたら、テオが私の顔を覗き込んでいた。
「好きな子、居るんだっけ? どんな子?」
「言えないよ。でも、蒼泉くん以外には、興味ないから」
「じゃ、俺と一緒だ。なんだかんだ言っても、あの子の事しか考えてない」
「・・・。ふふ、意外。じゃあ、颯也と仲良くしてあげてよ?」
「わかってる。もうからかわないからさ。っと、そろそろ帰る?」
ああ、もう暗くなるかな。エリーに言うと、こくっと頷いた。
そのままエリーの魔法で家に帰る。と、エリーが急に、本当に急に言い出した。
「ねえ! エリヴェラ、行きたいところがあるの!」




