第3話 初めての戦闘は
「な、なんか光ってる・・・」
私は部屋で髪を拭きながら、胸元で光るペンダントを眺めていた。
白っぽかった光はだんだん赤くなり、やがて真っ赤になった。
<さて、こんにちは、朱璃さん>
「うわあ?!」
いきなりペンダントが喋った?! っていうか、なんなの、これ?!
<私はあなたを召喚したものです。いきなりすみませんね>
「は、はあ・・・」
召喚って・・・。やっぱり、あの光のせいだろうか?
っていうか、どうして私が連れて来られたの?
<タイムリミットは十年。それまでに防げなければ、この世界は滅亡します>
「・・・えぇ? いきなり何を・・・」
<あなたたちには、それを防いでもらいます。そのために召喚しました。些細なチートも用意してあります>
「は、はあ」
<防げた人には、絶対的な権力か、元の世界に返すという特典を与えます。できなければ・・・わかりますよね?>
へえ・・・。って、・・・はぁ?! それ、本当? じゃあ、世界滅亡を防ぐためにここに連れてこられたの?! しかも、できなかったら殺されるってぇ? いくらなんでも馬鹿げてるって。
<にしても、兎って・・・。ふふっ。知ってます? 獣人って、頭悪いけれど、力だけは強いんですよ>
「へぇ?」
<でも、兎って、力も弱いし、別に頭が良いわけでもないし、魔力が強いわけでもない>
一番聞きたくない情報だったな。世界を救ってくれとか言いつつ、あんたには無理、だって?
「ちょっと、じゃあ、あんた、私に世界救わせる気ないでしょ?!」
<まあ、頑張ってくださいね。とはいえ、ほとんど死んでしまったようですが>
「え? あの猪か・・・」
<では、ほかの人のところにもいかなくてはなりませんので。また今度>
すると、赤い光はすうっと消えてしまった。もう、この状態では話せないだろう。
「絶対・・・。私をいじめてた人なんかに、権力なんて渡すものか!」
次の日。
凄く広い庭に居る。此処で何かやるって言うから・・・。
にしても、此処は城か?! こんなに広い庭って・・・。噴水あるし・・・。薔薇咲いてるし・・・。
「じゃあ、まずは、適正ね。そうね・・・。私の剣、持ってみる?」
「み、雅姉さん! それは・・・」
雅さんが楽しそうに言うと、麗さんが慌てたような声を出す。
え? なんだろう、やだな・・・。
そう思いつつ、雅さんが芝生の上に置いた剣を持ってみる。
・・・え?
「お、重い・・・!」
持ち上がるようなものじゃない。何で出来てるんだ、ってくらい重い。
「だからっ! 最初からそんなものを持たせてどうするんですか?! でも、朱璃さんには向かないかもしれないです」
「じゃあ、タロット?」
優さんが言うと、雅さんはにっこり笑って頷いた。最初からそのつもり、という事か。
タロットって・・・。タロットカード? 占いとかに使うんじゃ・・・?
「タロットカードに魔法を封じ込めて、使うときに召喚するんだ。それなら朱璃さんにも使えるんじゃ?」
私の様子を見てか、麗さんが説明してくれた。
「そうなんだ。タロット・・・」
うまくイメージできないけど、雅さんがポイっと一枚こちらにカードを投げてきた。
真ん中に絵が書いてあって、何か文字が書いてある。
絵は、白狐。それから、説明が書いてある。
白狐 レベル1 ダメージ100 マジックパワー20 スタミナ10 力100 魔法100 守備50 速さ150
「こうやって使うのよ。『いでよ、白狐』!」
そう雅さんが言うと、真っ白の狐が出てきた。ほ、本当に召喚出来てる。
「え、えっと、『いでよ、白狐』・・・」
戸惑いつつもやってみる。と、ポンっと白い煙とともに、真っ白の狐が現れた。か、可愛い。
「えっ?! 一発?!」
琳ちゃんが目を見開いて叫ぶように言った。
「あら、すごい才能ね」
雅さんも驚いたようだった。
白い狐は、しばらくすると勝手に消えた。
召喚は楽しそうだな。このカードって、どうするんだろう?
<バニーガールはマジックがお似合いだからね->
などと声がする。見れば、またもやペンダントが光っている。けど、そんな事はどうでもよくて、それ以上にあいつは阿呆か?
「じゃあ、カードを取りに行こう」
「カードを、取りに行く?」
私が聞くと、優さんが笑いながら教えてくれた。
「敵と倒すと、たまに手に入るの。どうなってるのかわからないけど、ふわっと手元に落ちてくるよ」
ふわっと・・・? よく言うドロップとか、そんな感じ? よくわからないけど。
「とにかく、一度ギルドに行くわよ」
「わかりました」
ん? ギルドって、なんだろう。そう言うのもよく分かんない。
・・・。もっとライトノベルでも漫画でも読んどくべきだった?
ギルドについた。なんというか、パッと見、巨大なレストランか何かみたいだ。
木造で、屋根は緑。扉にはガラスが付いてるけど、中が見えるようにはなってない。
その扉を、雅さんは押し開けてから振り向き、私に中に入るよう言った。
一応、ここに来る間に説明は受けた。
パーティを組んで依頼をクリアして、お金を稼ぐ。
・・・、分かるわけあるか! 適当!
「お、雅。おはよう」
「あら、慶。今日はどこへ?」
「森の方に狩りと依頼だ。お、新人か?」
雅さんに声をかけてきたのは、好友的な男性。犬のようだ。
新人って、私のことを言ってるんだろうか。でも・・・。あまり、人は、得意ではない。
「え、ええ・・・。ちょっとワケアリよ。朱璃っていうの。覚えておいて」
「雅んとこの子はみんなそうだろ。朱璃、か。そのうちでいいから、声掛けてくれ」
あっさりした態度で行ってしまった。まあ、そういう人のほうがいいけれど。
それから、女の人が雅さんを見つけて歩いてきた。紫の髪に、背中に黒い羽・・・。
「雅じゃない。会うの久しぶりね。この時間にはいつも来ないでしょ?」
「この子を連れてくるのに、そんな早くは無理よ」
「新人ねぇ。ってことは、養子?」
「あ、朱璃って言います」
雅さんはちょっと意外そうに私を見た。
なんていうか、この人の目が、雅さんに似ている気がしたんだ。多分、平気。
「朱璃ちゃんね。はじめまして。紫よ。よろしくね」
「あの、種族・・・」
「あ、これ? 翼は珍しいかしら? 蝙蝠なのよ」
蝙蝠・・・! ってことは獣人なんだ。悪魔かと思った。
にしても、さっきから名前が漢字一文字の人が多い気がする。
「あ、そう、朱璃。私たちのパーティに入ってもらうけど、いいわね」
「はい」
「ちなみに、家族のパーティだから、私たちだけよ」
へえ。パーティ、ね。なるほど。私たちが一緒に戦うってことでいいのかな? 一応、それでいいらしい。
周りを見渡しながら歩いていると、掲示板のようなものが目に入った。
「あれ? あれは、誰かからの依頼を貼っておくものよ。ここのギルドの人なら、受けられるわ」
雅さんが優しく教えてくれる。何も知らなくてほんとに悪い・・・。
なんだかんだで受付に来ると、雅さんが何やら契約をしてくれたようだ。で、カードを渡される。
「そこに、パラメータが映るわ。見てみれば分かると思うわ」
カードを見ると、私の顔が載っていて、その横に説明が書き込まれている。
立華 朱璃 13歳 ランクF パーティ―
レベル1 ダメージ100 マジックパワー50 スタミナ50 力50 魔法100 守備50 速さ100
と、急にパーティの横が『立華』に変わる。それから、その横にパーティランクというものが出て、Dと書かれている。
さっき言ってたのは・・・。確か、Fが一番弱いんだよね。一番上は・・・。なんだろう。
ちなみに、私は『今年で』14歳。まだ13歳だ。誕生日は七月の終わりだから。
「ん? おかしいわね、うさ・・・、レベル1にしては高いわ」
「そう、なんですか?」
「しかも、兎獣人の特性が少ないねー?」
人間だったからだろうか。まあ、それは知らないけど。
チートをあげる、とか言ってたような・・・。まあ、知らないことにしておこう。
「一応説明するわよ」
「お願いします」
まとめる。ダメージは、まあ、ゲームとかで言うHPのことらしい。マジックパワーはMPだ。スタミナは、走ったりすると使うらしい。力は攻撃力、魔法は撃てる魔法の強さ、守備は守備力、速さはそのままだ。
「こんなかんじね。とりあえず、狩りに行くわよ。何か依頼を受けましょう。パーティーランク下がったわけだし」
「え?!」
「平均になっちゃうから、仕方ないよ。それに、朱璃姉がいるのに高いランクの依頼は受けられないでしょ」
どうやら、パーティーランクが高いと、低いランクの依頼は喜ばれないそうだ。違反ではないが。
まあ、そうだろうな。どうせすぐ上がるから、と言って何個かの紙を受付に持っていった。
ギルドを出て、街を出ると、目の前には草原が広がっていた。猪がいたのは、もっと奥だったかな?
「まず、一番弱い魔物ね。そうね、優、それ抜きなさい」
「ん? ああ、それね」
優さんがなにかの植物を引っこ抜くと、私に渡してきた。
・・・。根っこが人の形をしている。しかも、超美少女の。
「なんですか? これ」
「マンドラゴラの亜種、かしら? とにかく、それを折って」
私が根っこを二つに曲げると、パキッと音を立てて簡単に割れた。
折れたマンドラゴラの亜種(?)は、枯れて、灰のようになって消えてった。
「本当に役に立たないわ。薬草にすら使えないんだもの」
「何なんです? これ」
「マンドラゴラの亜種みたいだけど、希少で扱いが難しいマンドラゴラと違って、あちこちに大量に生えてて、簡単に倒せる、まあ、弱い人のレベル上げる用の生き物ね」
レベル上げ・・・。そんな生き物なんだ。まあ、マンドラゴラではないみたい。
マンドラゴラって・・・。えっと、引き抜くと悲鳴上げる植物で、錬金なんかに使える・・・?
そんな知識しかないけど、いいんだろうか?
「じゃあ、朱璃ちゃん・・・いえ、朱璃はそれをひたすら折るのよ!」
「えぇ?!」
そのあとは、優さんに見つけ方を教わってひたすら折りまくった。
二十本くらい折ると、私の体がふわりと光った。
「え・・・?」
「レベルアップね。パラメータを確認して」
私はさっきもらったカードを確認してみる。
立華 朱璃 13歳 ランクF パーティ『立華』 パーティランクD
レベル2 ダメージ120 マジックパワー80 スタミナ60 力55 魔法130 守備55 速さ110
スキルポイント 5 振り分ける
「スキルポイント、手に入った?」
「はい」
「そしたら、振り分けるとタッチして」
・・・カードの? ただのプラスチックの板じゃ・・・?
と思っていたが、触ったら光の画面みたいな、なんだかそんなような、地球ではありえないようなものが飛び出した。たくさんの文字が書かれている。
「まずは、タロットに振り分けて」
私は文字の中から『タロット』を探し出してタッチしてみる。
今度は『- 0 +』が大きく表示された。
「じゃあ、全て振り分けて、ああ、+に触ればいいわ」
言われた通りにすると、真ん中の数字が1に変わった。さらにタッチして、5にする。
下の決定を押すと、<スキルポイントがありません>と表示されて光のような画面が引っ込んだ。
これでいいのだろうか・・・?
もう一度パラメータを見てみる。
立華 朱璃 13歳 ランクF パーティ『立華』 パーティランクD
レベル2 ダメージ120 マジックパワー80 スタミナ60 力55 魔法130 守備55 速さ110
タロットカード入手可能
「よし、これでいいわね。さあ、慣れてきたし、もっと折るわよ!」
「え、あ、はい!」
また二十本位折ると、私の手が光っている事に気がついた。手を開くと、一枚のカードが載っていた。
「タロットカード・・・」
小回復 レベル1 体力を少し回復できる。
「うん、いいわね。ちゃんとなくさない様に仕舞っておくのよ」
「じゃあ、依頼、行くの?」
優が少し楽しそうに聞くと、雅はこくりと頷いた。依頼って、なんだろう?
「まずは、小ゴブリン狩りに行くわよ。朱璃はこのナイフを持って」
「ゴブリン、ですか?」
「ええ。いたずらが多くて。依頼達成のためには、頭を持っていけばいいわ」
小ゴブリン。その名のとおり、とても小さくて弱いゴブリンだ。剣も盾も何もふにゃふにゃだ。
しかも、私が刺したらそれだけで倒せた。まあ、大きさは膝の高さくらいまでしかないのだけれど。
でも、生き物だ。刺せば血が出る。最初のほうはクラクラしたし、軽い吐き気もあったけど、すぐに慣れてしまったのは、兎になったからだろうか?
そんな感じで何度か倒したら、タロットが降ってきた。
小ゴブリン レベル1 ダメージ10 マジックパワー5 スタミナ10 力20 魔法5 守備20 速さ50
「小ゴブリンね。一応使い方を説明しておこうかしら」
「お願いします」
タロットは、主に二種類あって、魔物のものと、魔法のものがあるらしい。ちなみに、この世界で魔法と言ったら、タロットのことらしい。だから、魔法使いもタロット使い。
レベルは、使っていくうちに上がるのだそうだ。そうすると性能も良くなるそう。
他人のタロットは壊れやすいので、自分のものを使うほうがいいらしい。
「じゃあ、そろそろもうちょっと強いのを。そうね、猫かしら」
「あ、猫の方が小ゴブリンより強いんですね」
「そりゃそうよ」
呆れたような声でそう言うと、雅さんはどんどん進んでいった。私も急いでついて行く。
ある木の下で、雅さんはこちらを振り向いた。そこには、猫・・・まあ、猫だな。大型犬くらいの猫が寝ていた。
「今なら寝てるから大丈夫。小ゴブリンを召喚して」
「はい。『いでよ、ゴブリン』」
白い煙とともに小ゴブリンが出てきた。
やっぱり剣も盾も弱そうだ。こんなんで大丈夫なんだろうか。
小ゴブリンはトコトコと歩いていき(小ゴブリンは本気なんだろうけど、私たちから見るとそうしか見えない)、胸のあたりに剣を突き刺した。
猫が暴れだしたので、私は慌ててナイフで猫を刺すせっかくの私の子、殺されたらたまったもんじゃない。
「うん、今のはいいフォロー。で。この猫の毛皮が狙いなのよ。麗」
雅が言う前に、麗はナイフで皮を剥いでいた。流石に目を背ける。
「じゃ、暗くなる前に帰るわよ」
「はい!」
なんだか、急に生活が変わりすぎて、着いてけないや。
でも、言われたことやってるだけだったのに、楽しいかも。
今日はよく寝れるかなぁ・・・。




