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第30話  エリーと盗賊2

「よくもエリーをいじめてくれたなぁ!」

「ひぃ?! エリー?」

「私の悪魔が泣いて帰って来たよ。どうしてかなぁー?」

「あ、悪魔?」


 二人はキョトンとしたような顔をする。あれ? ほんとに知らない? 拍子抜けだよ。

 でも、そんなはずはない。わざわざ武器屋に寄る前にギルドに立ち寄って調べて貰ったんだ。間違ってるはずないよね? ある程度の場所も調べて貰ったし。


「最近は、悪魔なんて・・・、なぁ?」

「滅多に見ないよなぁ?」


 え・・・・・・? そんなはずは・・・。いやでも、知らない?

「ちょっと、これ、どういう事?」

<おっかしいなぁ? 嘘はついてないはずだぞ?>

 む・・・。使い魔が嘘つく事はないと思う。って、え? じゃあ、どういう事?


 今、自分と相手の状況をひっくり返すという魔法をかけてある。それは、使い魔まで移動する魔法だったのだ。

 だから、私にかかった魔法をあいつらに移し、使い魔も移した。あいつは宿主の心を読める。そして、嘘をついたら縛るという決まりは、そこにも引き継がれるのだ。だからこそ、ただ跳ね返すだけじゃなくて、この魔法にしたのに。


「そんなはずないよ。綺麗な紫色の髪で、白黒のメイド服着た悪魔。ほんとに見てないの?」

「な?! あいつ、生きてたって言うのか?!」

「消滅したんじゃ・・・?!」


 は・・・? あ、死んだと思ってたわけ? 道理で話がかみ合わなかったわけだ。

 つまり、エリーの事を殺したと思っていたから、泣きながら帰って来たっていう言葉で、違うと判断したわけか。


「と、とにかく、見たってことでしょ?」

「! あ!」


 よし、うらは取れたな。私は録音魔法の電源を落とす。いつまでもとっておく必要はないよね。

 ということで、連行するか。私は反転魔法を解除する。


「ちょっと待て、ほんとに生きてたのか?!」

「生きてたも何も、無傷だったけど」

「そんなバカな?!」


 面倒! まだこれやるか。でも、死んだと思ってたのに生きてたら不思議か。それに、エリーは話してくれないよなぁ。よし、話を聞いてやらんでもない。


「俺等の撃てる最強の魔法を使ったんだぞ?!」

「でも、無傷だったよ?」

「そんな馬鹿な?! 今まで、仕留められなかった奴はいないぞ?!」

「それが100+を超えた悪魔でも?」


 二人の顔が見る見るうちに青ざめていく。私のレベルを想像したんだろう。だって、私はエリーの主人だから。主人よりも使い魔が強いというのはあり得ないから。

 でも、残念だけど、あの子は奴隷だし、奴隷なら私の方が弱くても平気だしね。


「じゃあ、あの時消えたのは・・・?」

「移動魔法じゃないの?」

「だが、その対策に縛ったし、その上移動禁止魔法をかけてあった・・・」


 まあ、ワープ魔法は悪魔魔法や空間魔法の比にならないほど強い。悪魔魔法や空間魔法は防げても、ワープ魔法が防げるとは限らない。でしょ?

 とにかく、反対魔法を解除してるわけだし、うっかりすると、逃げられてしまうからな。今はそれどころじゃないらしいけど。


「とにかく。牢屋で後悔しなさい!」

「ま、待ってくれ! 許してくれ!」


 許すもんか! あの子の大切な武器を壊した罪は重いぞ。

 さてさて。そろそろこの人たちを縛るとしようか。私はタロットカードを1枚引き抜く。


「うぐっ!」

「はい、ちょっと大人しくしててね」

 私は催眠魔法で眠らせて、魔法空間に放り込んだ。人だって問題ないからね。



「よく捕まえていただきました」

「へぇ・・・。そんなに極悪人だったんだ?」


 どうやら、この人は今までに何人もの人を捕まえて売り捌いていたらしい。

 一応、法律ってものが無いので問題はないけど、まあ、ギルドで指名手配が掛かってたらしいし。知らなかったけどね!


「では、こちらが報酬です」

「あ・・・。ありがとうございます」

「また、宜しくお願い致します」


 時間が余ったなぁ。どうしよう。とりあえず、私は草原に向かって歩きだす。

 草原につき、野生の兎が多くいる辺り。この辺りで兎と遊ぼうかな、なんて考えていた時の事だ。


「っ!」

「よお、お譲ちゃん。俺の仲間を捕らえてくれたようじゃねぇか」


 口を押さえられ、捕まえられた。バタバタ藻掻いたけれど、足が付かない。

 ああ、これは多分巨人だろう。手も異常に大きいし。

 まあ、このままやられっぱなしの私じゃないので、手は打つよ。


「偉大なる能力の精よ。我の命に従いたまえ。汝の力で我らの能力を上げるのだ。『ヤールキィ・パドニマーチ』」

「偉大なる能力の精よ。我の命に従いたまえ。汝の力で我らの能力を下げるのだ。『ヤールキィ・スニーズィチ』」


 補助魔法と弱体化魔法をかけ、私は手を振りほどいて地面に飛び降りる。

 思っていたより高かったのだけど、まあ大丈夫そうだ。くるっと前転してから立ち上がる。


 そこに居たのは、まさに巨人だね。身長は2mを優に超えているだろう。でも、そこまで大きくはないよ? 多分、3mはないんじゃないかな?

 それと、スケ番、って感じの巨人にしてはちょっと小柄な女性。でも、大きいけどね!


「まさか逃げるとは。なぁ、ベリル」

「カルヴィンを抜けたのなんてこいつが初めてじゃねえの?」

「褒め言葉として受け取っておくよ?」


 私が言うと、イラッとしたように私を見た。そうそう、それでいいよ。冷静さを失った時、人は異常なまでにおかしな行動をする。

 とはいえ、ちょっと部が悪い。私1人で対処できるかな?


 そのカルヴィンとかいう男の巨人の振り降ろした手は跳ね返し魔法で跳ね返す。自分の顔を殴る事になった模様。

 で、ベリルとかいう女の巨人の放った火の魔法を無詠唱の『バリショーイ・ヴァダー』で相殺。


「ほお、思ってたより殺りがいがあるって感じだな」

「それも褒め言葉でいいのかな?」

「どっちにしろ、殺すだけさ!」


 それなら、殺されなければ私の勝ちだね。負けないよ?

 なんて張り合っても仕方ないか。大体、私は明らかに不利だしね。誰か呼んでも良いけど、それもなぁ。


「偉大なる炎の精よ。我の命に従いたまえ。世界を焼き尽くす赤い炎を、我とともに呼び起こせ『ヤールキィ・アゴーニ』!」

 ヤールキィを広範囲に。でも、この2人は炎の属性かもなぁ。赤い髪をしている。まあ、大して人には関係ない。うん、どの属性だって問題ない。


「へぇ、あんた、エルフ魔法使うんだ?」

「何か問題でも? 私にとっては普通だよ」

「あぁそう。まあいいか。じゃ、次は私の番」

「炎の精よ、真紅の炎を呼び起こすのだ『バリショーイ・アゴーニ』」

 短縮か。ならば私も。

「海の精よ。我に力を貸したまえ『ヤールキィ・ヴァダー』」

「なんですって?!」


 短縮魔法は散々練習したよ。力は落ちるけど、バリショーイには勝てると思う。

 案の定、火は消えて、それでもおさまらずに女の人を巻き込んだ。


「ベリル! おまえ・・・!」

「偉大なる大樹の精よ。我の命に従いたまえ。誰もが見上げる緑の草を、我とともに呼び起こせ『ヤールキィ・ラスチェーニヤ』」


 どーん、と吹き飛ばして、カルヴィンはそのまま吹き飛んで行ってしまった。どこまで行っちゃったかな?

 なんか、もっと強いかと思ったよ。そういえば、ギルドの人が、この辺の盗賊は弱いし、平和だって言ってたっけなぁ。

 あ、そろそろ武器できてるかも。帰ろうかなぁ?


「まてや、てめぇ」

「・・・? はい?」


 あらら、さらにボスみたいのが来ちゃったよ。これは明らかに劣るんだけどなぁ。

 どうしよう、あんまり魔力使いたくないんだけど・・・。

 と思っていたら、その人は吹き飛ばされた。何が起こったのか分からないまま、私はその場に立ち尽くす。


「大丈夫かい? お嬢さん」

「ぶ、武器屋のお姉さん! ありがとうございます!」

「ちょっと心配だったからさ。でも、彼は違うんじゃないかい?」

「あの方の手下みたいで。どんどん上の人が出てきちゃって」


 武器屋のお姉さんは納得したように頷いた。知ってるんだろうか?

 どうやら、お姉さんの知り合いがギルドで働いていて、よく愚痴を聞くんだとか。


「手下1人捕まえると、上がどんどん出てくるってさ。面倒なんだけど、どうしようもないっていうか」

「はあ・・・。何とかならないのかなぁ・・・」

「仕方ないよな。じゃ、帰ろっか」



「出来てるぞ」

「あ、ありがとうございます!」


 師匠さんが珍しくカウンターに立っている、という事で人が集まっていた武器屋。

 どうやら、お姉さんに『あの娘を探しに行け』といってここに来たとか。なんだかんだいって面倒見のいい人じゃないか。


「そうなんだよ・・・。私の事を養ってくれたしな」

「・・・? 養う・・・?」

「ああ、そうなんだよ。私は山に捨てられててさ」


 どうやら、お姉さんは5歳くらいの時、山に捨てられたらしい。

 人間差別の厳しい中、師匠さんはお姉さんを連れて家に帰った。

 そのまま、娘のように育ててくれたとか。口は少ないけれど、よく面倒を見てくれたと言う。


「まあ、滅多に私みたいに接してくれる人はいないさ」

「お姉さんみたい、というと、どんな感じでしょう?」

「とりあえずは、声を聞く事だな。それから、武器を作ってくれる事、直してくれる事なんて言うのは滅多にない。極一部のお得意さんか、相当気に入った人だ」


 なんか、それは嬉しいな。私の周りの人は、なんだかんだ言ってみんないい人だ。

 雅さんや恵さん達。紫さんや、慶さん。シルシィ、颯也、心花にエリー、クローリクと兎たちも、悪い子はいない。そう考えると、私ってとっても恵まれてる?


「じゃあ、これだな。今度は割れないと思うぞ。師匠が直したんだしな」

「あ、ありがとうございました!」

「じゃあ、また来てな!」



「ただいま」

「ご主人! 勝手に出ていかないで!」

「それよりエリー!」


 私が呼ぶと、ローリは嫌そうな顔をしながらもエリーが来ると端に避けた。

 エリーは、私の手に持っているものを見て目を丸くした。


「そ、それ・・・」

「直してもらえたよ。今度は割れないと良いね」

「ありがとう!」


 ローリは気が付かなかったようで、驚いたようだった。

 エリーはとっても嬉しそうな顔をする。それを見て、私もとても嬉しくなる。


「あ・・・」

「だから言ったのに! エリヴェラ、シルシィ呼んで」

「え? うん・・・」



「熱が三十八度以上! 動くなと私は言った!」

「ご、ごめんなさい・・・」

「ローリちゃん、許してあげてよ・・・」

「今日は大人しくする事!」

「はい・・・」


 無表情のまま言われても怖くないよ・・・? でも、ローリは本当に心配してるんだろう。悪かったなぁ。もうこんなことはないと良いんだけど。


「コノハ、雑炊を作って。シルシィ、加湿を」

「わ、わかりました!」

「ローリちゃん・・・。わかったよ」


 ローリ・・・。なんだかんだ言っても、私のために動いてくれるんだね。

 ちょっと怒りながら部屋を出ていったローリだけど、すぐに桶とタオルを持ってくる。


「心配させないで」

「ご、ごめん・・・!」

「分かったなら良い。ゆっくり休んで」


 やっぱり、いい子ばっかりだなぁ。幸せだね、私。

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