第26話 兎たち
兎たちの性格を確認するため、私はみんなと話してみる事にした。
けど、何か基準が無いと分からないので、シルシィたちとも話してみよう。
全員にその趣旨を伝えると、不思議なこと考えたなぁ、という雰囲気はあったけど、従ってくれると。
一応、一人ずつ私の部屋に入って貰う形になる。軽く面接っぽいな。そういうわけじゃないんだけど。
じゃ、まずシルシィから。
「おはよう、シルシィ」
「おはようございます、マスター」
「今日は外、晴れてるね」
「気持ち良さそうですよ。寒くなければ、狩りもやりやすいです」
「そうだね。シルシィは魔法得意だもんね」
「ですが、勇者物語の中の勇者は、一発でドラゴンを吹き飛ばせます」
「え?! あ、そう、だね・・・」
とまあ、こんな感じで話は進む・・・。
シルシィ、勇者物語が実話だと思ってるようだ。まさか・・・。
あとは戦いの事しか考えてないんじゃ?
次は颯也。
「おはよう、颯也」
「おはよ、朱璃姉ちゃん」
「今日は外、晴れてるね」
「ああ。クローリクたちを日向ぼっこさせてやりたいな・・・」
「え? 確かに、気持ちよさそうだよね」
「クローリクは結構好きなんだ。ほかの兎はどうだろな。この天気なら、心花はガーデニングか」
まだまだ颯也の話は続く・・・。
すごい良く家の子たちの事を把握してる。颯也は家の子たちを、自分の妹として見ているからだ。
面倒見がよくて、いいお兄ちゃんだ。
では、心花。
「おはよう、心花」
「朱璃様、おはようございます」
「今日は外、暖かそうだね」
「ええ。こういう日には、植物も喜ぶんですよ」
「植物が喜ぶ?」
「ええ。ちょっと楽しそうです。何となく、ですが」
心花は楽しそうに植物の良さを語っていく・・・。
心花は、本当に植物の事が好きだ。話をしていて、何を言ってもそっちに持っていこうとする。
家の庭も、心花のおかげですごく綺麗になっている。やっぱり『好きこそものの上手なれ』。
次はエリー。
「おはよう、エリー」
「ごしゅじんさま、おはよー」
「今日は外、暖かそうだね」
「うん。でも、エリヴェラは暗いほうが好きかな」
「そうなの?」
「うん。悪魔はあんまり日が得意じゃないから。でも平気ー。魔物も寝てるしね、倒しやすいのー」
エリーによる魔物のお話は続く・・・。
エリーは、やたらと魔物についての知識が多い。倒し方や種類、どこに居るのかなど。
戦いが好きなのはよくわかる。それと、倒し方にもこだわる。まあ・・・・・・。想像にお任せしよう。
次はクローリクだ。
「おはよう、クローリク」
「おはよう、ご主人」
「今日は晴れてるけど、予定は?」
「特に。私の生徒の指導くらい」
「あの子たち、生徒なの?」
「うん。私、先生。あの子たち、完璧にする」
クローリクは細かな兎たちの情報を良く見ている。性格、仕草、得意な事、好きな事、嫌いなこと・・・。任せてくれと言っただけあるな。素晴らしい。
メインはここからだ。兎たちは無口だから、一方的な質問になりそうだし、質問は多めに考えてある。
あと、性格をはっきりさせるためにだいたい同じ質問をする事にする。
まずはサラ。
「おはよう、サラちゃん」
「おはよう、ご主人」
「今日は晴れてるけど、何か予定でも?」
「外走りたい」
「そう。好きなんだ?」
「うん。動くの、好き」
「そっかぁ。クローリクの事、どう思う?」
「いい先生。色々知ってる」
「じゃあ、私は?」
「先生の先生で、私のご主人。私たちが守るもの」
次はディーネちゃん。
「おはよう、ディーネちゃん」
「おはよお・・・」
「今日天気いいけど、予定とかは?」
「わかんない」
「そっか。クローリクの事、どう思ってる?」
「働き者。動くの速い」
「じゃあ、私は?」
「みんなのお母さん」
次はルーシーちゃん。
「おはよう、ルーシーちゃん」
「おはよう、ご主人」
「今日は天気いいね。予定とかは?」
「サラに付き合おうかなって」
「外行くの?」
「でも、植物見に行くの」
「へぇ。クローリクのことどう思ってる?」
「面倒見のいいお姉さん」
「じゃあ、私の事は?」
「クローリクさんのお姉ちゃん」
次はフロスちゃんか。
「おはよう、フロスちゃん」
「ふぇっ! お、おはよぅ・・・」
「今日天気いいけど、予定とかあるの?」
「えっ? 特に・・・」
「そっか。クローリクのことどう思う?」
「守ってくれるお姉さん・・・?」
「じゃあ、私の事は?」
「みんなで守る女王様・・・?」
次、ライちゃん。
「おはよう、ライちゃん」
「おはよう、ご主人!」
「今日外晴れてるね。予定とかは?」
「このあたりの魔物の確認」
「そっか。前より強くなった?」
「多分。少し奥行っても平気だと」
「そうだね。クローリクの事、どう思ってるの?」
「かっこいい姉さん」
「じゃあ、私は?」
「目標。守れるようにする」
次、シルちゃん。
「おはよう、シルちゃん」
「お、おはよう・・・」
「今日天気いいよね。予定は?」
「特に・・・」
「そっか。クローリクの事、どう思うかな」
「よくわからない」
私の事を聞いても同じだろうから、ここで終わりにするか。
じゃあ、ノームちゃん。
「おはよう、ノームちゃん」
「おはよう」
「天気いいけど、今日の予定はあるの?」
「勉強でも」
「そっか。外は行かない?」
「あまり好きでは」
「そう。クローリクの事はどう思う?」
「とても賢いお姉さん」
「じゃあ、私の事は?」
「みんなに慕われてるお姉さん」
次はルナちゃん。
「おはよう、ルナちゃん」
「おはよう、ご主人様」
「今日は天気いいけど、予定とかあるの?」
「今のうちに力ためておかないと」
「力? どういうこと?」
「私、光だから。光の力を集めておかないと、夜動けないの」
「そうなんだ。ところで、クローリクの事、どう思う?」
「可愛いお姉さん。仕事速くて、素敵」
「じゃあ、私は?」
「私たちに守られるべきお方」
最後に、ラートちゃん。
「おはよう、ラートちゃん」
「おはよう、主人」
「今日天気いいけど、予定は?」
「昼は得意じゃない」
「じゃあ、夜の方が良いのかな?」
「そう」
「へぇ。ところで、クローリクのことどう思う?」
「しっかりしてる」
「じゃあ、私はどうかな?」
「頑張り屋」
「さて、これで終わりかな」
「そうですね。分かりました?」
「だいたいねー」
みんな感情があまり見えないけど、色々考えてるし、感情が無いわけじゃない。表に出さないだけだ。
とはいっても、全員がまるで無表情ってわけじゃない。何か『1つの』顔を崩さない、って感じの子も。
サラはちょっとつり上がった赤目が綺麗。キュッと結んだ口の、かっこいい系。
ディーネはジト目。常に眠そう。余計何考えてるか分からないよ。
ルーシーはパチっとした目がかわいい子。なんだけど、ちょっと微笑んだ顔がまるで崩れない。
フロスは常に怯えたような感じ。でも、訊けばちゃんと応えてくれるね。
ライちゃんは釣り目の子。パッと見男の子に見える。軽く笑顔、っぽい。
シルちゃんは極度の人見知り・・・? 目を合わせてくれない。からよくわからない。
ノームちゃんは超静か。そこに座ってるだけだったら、等身大の人形だと思うかも。
ルナちゃんは、結構フレンドリーな感じがする。けど、ずっと笑ってる方が不気味な時もある。
ラートちゃんは、結構冷たい目をしてる。心の中を見てるような・・・。ちょっと怖い。
「なんか、お人形さん、みたい?」
「ああ、確かに、それは分かります」
「なんか、表情が無いっていうか・・・」
「うぅ、ちょっと怖い気もします」
ああ、そうか。人形、か。自分で言ってから気が付いたよ。すごい似てる。
無表情なだけならいいけど、ずっと笑ってるとか、もっと読みづらいね。何考えてるのかわかんないよ。
特に、ルナちゃんは、パッと見温かくて優しい笑顔に見えるけど、なんだか、冷たくて、心の奥に突き刺さるような、暗い笑顔。
あと、ラートちゃんは、無表情なように見えるのに、真っ黒な目のせいか、焦点が定まってないような目のせいか、目を合わせるのを躊躇わせるような感じがある。
「クローリクの事、先生だと思ってる子も結構いるね」
「そう、私、先生。みんなは生徒」
そうか・・・。じゃあ、今はみんなワンピース来てるけど、制服とかにしたらもっと雰囲気出るかな。
と思って訊いてみたら、制服が分からないそうで、学校から説明する事になった。
「じゃあ、ご主人に任せる」
「えぇ・・・。それはちょっと・・・。あ、心花!」
「何ですか?」
「私が今から描く絵を、弄ってこの子たちに合う洋服のデザイン書いて」
「へぇ? お安いご用ですよ!」
心花がこういった仕事が好きなのは、私もよく知っている。任せてみよう。
それから、私はセーラー服、ブレザーはリボンとネクタイ、ついでにカーディガンやセーターの絵も書いてみた。
「これは・・・。編み物ですね? なるほど・・・」
「この子たちの分、デザインできる?」
「出来ますよ。ちょっと時間をくださいね?」
しばらくすると、心花は私に九枚の紙を渡してきた。そこにはデザインが書いてある。
サラは赤いミニスカートに同じ色のネクタイ。ブラウスは淡い赤・・・、桃色、かな。
ディーネは青いショートスカート。白いブラウスで、上に紺のジャケット。
ルーシーは緑のミニスカートに同じ色のリボン。ブラウスは淡い緑色。
フロスはふわっと広がった形の水色ミニスカート。と、リボン。ブラウスは白で、紺のジャケットを。
ライは橙のミニスカート。上のジャケットは茶色だ。白いブラウスで、橙色のネクタイも付けて。
シルはセーラー服。黄緑色の膝丈のスカートとリボンで、衿はちょっと濃い。
ノームもセーラー。茶色のスカートはミディスカート。リボンではなくネクタイ。衿はちょっと薄いように思う。
ルナは白いブラウスに紫のミニスカート。黄色いセーターに、クリーム色のリボンには十字架が付いている。
ラートは白いブラウスに黒いミニスカートに桃色のカーディガン、紫色のリボンにはドクロが付いている。
「あのさぁ、ルナとラートの服はどうかと思うんだけど?」
「そうだよね。やっぱりか。でも目の色は入れたいし・・・」
「そうですか? 私にはわかりませんけど」
え?! 変でしょ。それとも、こっちだといいのか? いやでも、ラートはまだしも、黄色に紫はないと思うが。
じゃあ、いっそのこと『ちょっと紫っぽい?』紺にしようと言う事になった。まあ、まだいいだろう。
ラート? カーディガンを薄紫へ。これならまあいいだろう。
「じゃあ、みんな、これイメージして、服変えてくれるかな?」
『わかりました』
みんなは一斉に目を閉じた。カラフルな煙に包まれる。中でスカートを翻しながらくるっとまわるみんなの姿が見える。
うん、可愛い。色とりどりの服を着た少女たちは、自分の格好を見て様々な感想を言っていた。
「ご主人、私は?」
「クローリクは先生でしょ? 良いんじゃない?」
「で、でも、その、統一感」
「だってほら、クローリクの色は白だから、地味になっちゃうもん」
「でも・・・」
なぁに、分かってるさ。つまりは私たちにデザインして貰いたいわけだ。
私と心花で相談しながら設計図を完成させていく。基調は白で。ラインを入れればいいんだよ。
セーラー服にしよう。目の色は黒だから、ラインは黒で。白だと、ちょっとお嬢様っぽくなるかな。
「わぁ。ありがとう」
「どう? これでいいかな?」
「うん。でも、普段はこっちでも良い」
みんなで戦う時は制服の方がそろってて可愛いかもね。でも、普段からこの服で居る必要はないだろう。クローリクもそのあたりは理解してるね。
もともと可愛かった兎たちはもっと可愛くなっていく。このままだと、私埋もれないか?
「ごしゅじんさま、エリヴェラとラートちゃん、ちょっと似てない―?」
「そうだね。髪の色は一緒だね。雰囲気も似てるかも」
「それは、貶してる?」
「いやいや、そんなわけないじゃん。ラートちゃんとエリーは似てるってだけだよ」
「・・・、ほんとかな」
あらら、いきなりラートちゃんに信用を失われました。仲良し度、忠誠度ともに大ダウン。
・・・という事にならなければいいが。これから気をつけて行くか。それしかないな。
颯也とシルシィが微笑ましげにそれを眺めている。もはや妹、か。
「じゃ、みんな、よろしくね。みんなも分かってるみたいだけど、私の事、守ってくれるよね?」
『もちろん』
「そうだよね。じゃあ、頑張ってレベル上げて早くみんなで戦おうね!」
私の冒険は、人数を増やしながらまだまだ続いて行くようだ。




