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第22話  ボスラッシュ

「颯也お兄ちゃん、もう着きますかぁ・・・」

「まだまだだよ・・・。まったく」


 船に乗ってわずか三十分。心花は完全に酔ってしまった。

 颯也がずっと面倒を見ている。なんだかんだで、妹みたいに思っているのかもしれない。


「ねえ、エリヴェラ、あとどれくらい?」

「多分ねー、三時間くらいー」

「だそうですから、頑張って下さい」


 私はみんなのことを呼び捨てで呼ぶくらいは仲良くなった。もともと奴隷だから、ちゃん付けで呼ぶのもおかしいと思うけど。

 シルシィ、颯也、心花、エリヴェラ。私のことはみんな呼び方違うし、みんなもそれぞれ勝手に呼んでるみたいだ。


「エリヴェラ、悪いが、確かビュッフェにミントティーがあったと思うから、持って来れないか交渉してきてくれないか?」

「分かったよー。出来たら、お兄ちゃんのところに持ってくればいいのー?」

「そうだ。頼んだよ」


 エリヴェラはふわりと飛んで出て行った。飛んでりゃ酔わないだろうよ・・・。

 にしても、颯也はずいぶん面倒見が良くなったものだ。



「持ってこれたよ。それから、ごしゅじんさまのお友達だって」

「久しぶりね、朱璃。あなたもやっぱり行くのね」

「花凛! 咲耶!」


 エリヴェラの持ってきたミントティーを、颯也は心花に飲ませている。ちょっと落ち着いたようなので、安心して私はそこから目を離して花凛に向ける。


「この子が頑張って持っていこうとしてるからさ。船酔い?」

「心花が。エリヴェラ、ありがとう」

 エリヴェラちゃんの頭を撫でてやる。楽しそうに跳ねながらどこかに行ってしまった。


「ってことは、酔い止め効かなかったのかしら?」

「え? 酔い止めとかあるの?」

「あるわよ。高いけれど」


 どうやら、二人は五人程度の親衛隊を連れて来たらしい。ついでに言うけど、酔い止めは飲んだそうだ。

 ってか、酔い止め高いって・・・。だって、金貨五十枚とかって・・・。


「ん? そういえば、飲まないで、朱璃たちは平気なの?」

「馬車で特訓したよ。ずっと揺られてたら、平気になった」

「これが、ほら。援助を受けていない勇者の涙ぐましい努力よ」

「・・・、花凛、ふざけてないでよ」

「あら、ごめんなさい?」


 シルシィはあまりいい顔をしない。国からお金をもらって行動しているのが気に入らないのかもしれない。まあ、何も口出ししてこないけどね。

 心花はダウンしてるし、颯也は介抱に忙しい。エリヴェラは興味なさそうだし、シルシィが口出ししなければ静かなものだ。このまま会話を続けるか。


「この船、すごいよね。豪華客船じゃん。それを、ギルドに入ってて、レベルが+を超えた人のいるパーティーなら無料で使えるって・・・」

「まあ、咲耶の言っている事はよくわかるわ。でも、意外と人は少なそうで驚いたわ」


 そう言ってから、花凛は何か考え込むように視線を巡らせる。

 それから、ふと何かに気が付いたような表情をして、首を傾けて訊いてきた。


「ねぇ、悪いんだけど、ずっと敬語で喋ってたから、これ、やりづらい。敬語でも良い?」

「別にかまわないよ」

「私も良いよ」


 花凛は一回目を閉じると、女神か、女王のような、堂々としているけれど、どこか神々しい雰囲気を作る。

「ありがとうございますわ。わたくし、人の上に立つものですから、言葉づかいは大切ですのよ」

「あっれー? 私も考えるべき―?」

「え? 別にいいと思うよ。花凛の考えだから」


 花凛のそれ、私には理解できないわけで。咲耶も好きでいいと思う。

 まあ、人それそれの観点は違うんだしね。どうだっていいさ。


「では、降りてからまた会いましょう。心花ちゃん、お大事に。また後で」

「じゃあねー。私も帰らないと怒られちゃいそだよ」

「うん、また後で」

 会わなくても良いのにな。



「やっと着きましたか・・・。これ、慣れるんでしょうかね」

「さぁ・・・。でもまあ頑張ったね」


 なんて話しながら降りると、花凛と咲耶に捕まってしまった。

 確かに後で、って言ったけど、本当に会うとは思わないじゃん。


「で? 一週間ですけれど、どこに泊まるんですの?」

「安めの所のつもりだけど」

「そうなんですの? 私たちはあれに」


 花凛が指したのは、城みたいな建物だ。

 どうやら、この島の中で一番高い宿だとか。一泊金貨・・・

「百枚?! それって、百万円だよね?」

「多分それくらいですわ。五人部屋なら四百五十枚でしたわよ」


 いやいや。そこに泊まる予定はない。そんなお金がどこから出てくるって?一週間ここにいるんだよ? 四百五十枚だとしたら、三千百五十枚になっちゃうじゃないか! おそらく金貨一枚一万円、三千百五十万円だぞ?!


「じゃあ、私たちが朱璃に合わせるよ」

「それはだめ! ホントに安いところに泊るつもりなんだよ?」

 ボスラッシュのなかでは、エリヴェラのワープ魔法は使えないから、安いところに泊まろう、って話だったのに!


「お金なら出しますわよ。国からですが。でなければ、朱璃に合わせますわよ?」

「し、仕方ないなぁ・・・」



「一人部屋を二部屋と、五人部屋を二部屋お願いしますわ」

「かしこまりました。金貨七千七百枚です」

「これでお願いしますわ」


 花凛が出したのは、虹色に光る硬貨だった。なんだろうと思っていると、咲耶が説明してくれる。

「あれは虹の硬貨。一枚で、金貨一万枚分だよ」

「って、一億円?!」


 どうしてそんなものが出てくるの?! っていうか、何普通に受け取ってるのさ?!」

 ああ、国からの援助って恐ろしい。なんでそんなに出せるのさ・・・。


「実はね、国は、勇者を援助すると、魔王からお金が貰えるの。だから、こうなるのさ」

「ああ・・・。魔王、楽しんでるんだ」

「え・・・? そうなの?」


 まあ、そうでしょ。きっと、自分でも救えるのに、楽しむためにでも私たちを連れて来たんだろう。

 ん・・・? そういえば、どうして世界は滅亡するんだろう。なんで、私たちを呼ぶ必要があったんだろう。


「行きますわよ。朱璃」

「あ、うん、わかったよ」



 立華家のような感じの豪華な部屋だ。みんな、言葉を失っている。

 一応、パーティーで泊まる人も多いから、五人部屋もあるそうだ。ちょうどで良かった。

 私、シルシィ、颯也、心花、エリヴェラの五人で部屋に入る。


 荷物を下ろすと、すぐに外に出る。二人に指示されたんだもん。守らなくても、多分、強引に・・・。

 と言うことで、下に行くと、二人はもう待っていた。


「ギルドに行こう! 早く行かないと、忘れちゃうよ!」

「そうですわよ! 行きますわよー!」

「えええええ?!」



 一応、ボスラッシュで出現する魔物については調べておいた。心花の頭に全て入っているから、問題はない。

 ランクに合った依頼を幾つか受けると、その魔物の出る場所へすぐに移動する。

 また、ホテルで集合という事になっているけど、行かなきゃだめだよね。


「まず、一番近いのはケルピー。もうちょっと先にある、川に棲んでいるはずです」

「じゃあ、行きましょう」


 姿は馬に魚の尾、藻のたてがみを持っていて、性格は臆病で、気が荒いそうだ。

 しばらく歩くと、それらしき馬がいた。普通は、歩き疲れた人を乗せて、川に引きずり込む。近づいて敵意があるって思われたら、逃げられるかもしれないので、ここから攻撃しよう。

 シルシィが魔法を放ち、仕留めることに成功。


 近づくと、私たちは依頼の紙を死体に近づける。

 紙は青く光り、青い『依頼達成』の文字が浮かび上がる。

 紙の一番下にある魔法陣によって、それは出来るらしい。しかも、魔法のインクを入れたコピー機で印刷することで、コピーするだけで魔法が発動するってわけで、便利らしい。よく知らない。


 えっと、ボスラッシュで出る魔物は何だっけ?


 ケルピー

 フーア

 ピュトン

 フェンリル

 カトブレパス

 ヒュドラー

 バジリスク

 カムペー

 ジズ

 ベヒモス

 レヴィアタン


 フーアは海、川、淡水、入り江とかに住む様々な水精の事で、皆邪悪なもの。

 ピュトンは巨大な巨大な蛇の怪物だ。

 フェンリルは大きな狼の姿をした怪物。

 カトブレパスは重い頭部を持っているから、頭を地面に垂らしている。で、自由に動けない。けど強い。

 ヒュドラーは沢山の首を持っていて、一本の首を切り落としても、すぐにそこから新しい2本の首が生えてくるというドラゴン。

 バジリスクは、目を見ると石になってしまうドラゴン。

 カムペーは、下半身は蛇の鱗、漆黒の翼、頭部に蠍のような姿を持っている。

 ジズは大きな鳥の怪物で、大地に立った時に、頭が天に届くとかいうけど、実際はそこまでじゃないらしい。

 ベヒモスは大きなカバみたいな大きな怪物。

 レヴィアタンは、固い鱗と巨大な体を持っているから、なんの武器も通らないとか。


 ジズ、ベヒモス、レヴィアタンで、三頭一対とされる事も多いとか。すごく強い魔物だそう。私たちでは倒せない。

 多分、私たちが倒せるのは、ケルピー、フーア、ピュトンくらいまでかな? あとは状況に応じて、か。


 ちなみに、ボスラッシュ中はすごいスピードで魔物が発生するから、冒険者がいないと、魔物で溢れ返ってしまうらしい。島1個崩壊してしまう。

 だからこそ、船が無料だったり、ギルドの依頼が大量に出たりするわけで。

 村の人にとっては困る事でも、冒険者にとっては大喜びになるわけで。


「頑張ろうね。ここに住んでる人もたくさんいるんだから」

「はい。では、次はフーアを探しましょう」



「レベルは上がった?」

「うん。だいぶね。エリヴェラと心花はクラスアップできた」

「一気にやってないよね?」

「まさか。エリヴェラが35+になってからだよ」


 エリヴェラはワープ魔法を、心花は毒見を取った。自分で考えて取ったんだ。私は、何を取っても良いと思う。自分の事は、自分で決めて欲しい。もし、私が殺されると、考えると・・・。


 ワープ魔法は、空間魔法や悪魔魔法で覚えるワープの比にならない。なぜなら、無限に記憶しておくことができるから。

 でも、記憶に大量の魔力を消費する。そんなには使えないだろうなぁ。

 ただし、空間魔法と悪魔魔法を持っていれば、魔力の消費を抑えられるんだ。


 毒見は、植物、食物、薬物等の毒性を判断できる。しかも、なんの毒かも分かるようになるとか。ちなみに、特殊パラメータっぽいけど、レベルがある。分かるように『なる』んだもん。


 まあ、向いてるよね。他のスキルとの相性も良い。よく考えたのが分かる。

 ただ、エリヴェラは私たちの為でもあるから、いいのかわかんないけど。

 そんなこと言っちゃったら、心花だって攻撃を取った方が良いだろうし・・・。ってね?


「すごい。そんなに強くなったの?」

「まあ、朱璃の仲間は、素晴らしい強さを持っていますわよね」

「あはは・・・。褒めて貰って嬉しいよ」

 ただね、私の仲間、だって。私は違うらしいよ。


「いや、朱璃のおかげでしたわよね。朱璃もすごいですわよ」

「そうだよね。戦略は朱璃でしょ?」

「そ、そうでもないかなぁ?」


 どうせ、私なんて使役スキルの為だけに居るんだよ。うん・・・。

 と言っていると、悲しくなってくるから切り上げよう。人それぞれってことで。

 ちなみに、強さ的にはこんな感じかなぁ?


 朱璃 14歳 ランクB パーティ『宝積』 パーティランクC

 レベル70+ ダメージ1800 マジックパワー2000 スタミナ1500 力800

      魔法2500 守備900 速さ4000

 タロットカード入手可能 召喚成功率小UP タロットレベル3 短剣レベル2 ドロップ率UP 魔物使いレベル3 魔力レーダー 鞭レベル3 使役レベル5 エルフ魔法レベル5 使役+レベル4

 奴隷1 シルシィ 颯也 心花 エリヴェラ

 スキルポイント100 振り分ける


 シルシィ 10歳 ランクB パーティ『宝積』 パーティランクC

 レベル90+ ダメージ2900 マジックパワー3500 スタミナ2500 力1800 

      魔法3800 守備1850 速さ2500 

 エルフ魔法レベル5 タロットレベル3 弓レベル2 魔力レーダー 魔法威力UP 魔法コントロールUP エルフ魔法+レベル5

 スキルポイント225 振り分ける


 颯也 9歳 ランクD パーティ―『宝積』 パーティランクC

 レベル60+ ダメージ2300 マジックパワー800 スタミナ800 力2200

      魔法800 守備2000 速さ1800 

 剣レベル5 槍レベル5 巨大剣レベル5 魔力レーダー みきり

 スキルポイント210 振り分ける


 心花 9歳 ランクD パーティ―『宝積』 パーティランクC

 レベル15+ ダメージ500 マジックパワー300 スタミナ500 力300

      魔法200 守備500 速さ300 

 科学者 調合レベル5 毒見レベル1

 スキルポイント300 振り分ける


 エリヴェラ 265歳 ランクD パーティ―『宝積』 パーティランクC

 レベル50+ ダメージ1800 マジックパワー1500 スタミナ1200 力900

      魔法1000 守備1300 速さ1000

 悪魔魔法レベル5 空間魔法レベル4 擬態魔法レベル4 鎌レベル5 ワープ魔法

 スキルポイント65 振り分ける


 あれっ?! 私のパラエータ偏り過ぎてる?! なぜ?!

 まあ、兎の特徴は割と出てるね。速さが異常。でも、スタミナが少ないから持久力は少ない。


「じゃあ、今日はちょこっとお話ししたいな」

「朱璃、あなたにとって、大切な事ですわよ」

「そのために、私をわざわざこのホテルに?」


 だったらそう言ってくれればよかったのに!

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