第21話 レベルアップの情報
「ちょっと会うくらいなら、問題ないでしょ?」
<あ? ないな。そしたら、友人家に招くなって言ってるようなもんじゃねぇか。流石に不便すぎる>
「じゃ、よろしく」
「むぅ・・・。仕方ないの。開門」
「へぇ、綺麗ね」
「マスターのために、毎日掃除はしてますよ」
いや、私はやってなんて一言も言ってないからね? 勝手にやってるんだ。
シルシィは丁寧にスリッパを並べると、一番最初に部屋に上がって、お茶の準備をし始める。
すぐに追いついた心花ちゃんがお茶菓子の準備を始める。
「紅茶でも?」
「ええ。ありがとう」
颯也がエリヴェラちゃんの面倒を甲斐甲斐しく見ている。なにせ、急の来客にちょっと気が立っているんだ。エリヴェラちゃんの縄張りだからね・・・。
とりあえず、おもちゃで釣った。まあ、おもちゃと言っても、エリヴェラちゃんの、だからね。ほら、後で、遊びに行こう、って・・・。
「わっ?! なぁに?」
「あ、こら、やめなさい、クローリク」
クローリクが急に雅さんに襲い掛かった。私が言うと、しゅんとしてこっちまで来る。
悉く家の子に嫌われてるなぁ。心花ちゃんも、紫さんの友人だと気が付いて嫌そうな顔をしているし、エリヴェラちゃんはもはや怒っているし、クローリクまで・・・。
「お茶、出来ましたよ。エリヴェラちゃん、ソウヤ君、こっち来て下さい」
「あ、分かった。エリヴェラちゃん、行こう?」
「むぅー・・・。でも、ごしゅじんさまがいるし、シルシィお姉ちゃんも・・・」
みんなが座ると、心花ちゃんがクッキーを出してくれた。この前買ったやつだけど。
エリヴェラちゃんもそれを見て、少しは機嫌が良くなった。
「なんか、いつの間にかずいぶん増えたのね」
「あれ? 紫さん通じて知ってるんでしょう?」
「分かってたのね。ま、そういうことよ」
心花ちゃんがふいっとそっぽを向いてしまった。まあ、気持ちはわかるね。超敵対してるし。
颯也もそれを見て気が付いたようで。ちなみに、どうして心花ちゃんと敵対しているか、颯也はちゃんと知っている。だからこそ、颯也も紫さんのことが好きではない。
「ちなみに、みんなのレベルはいくつなのかしら?」
「私が、えっと、50+」
「私は75+です」
「僕は98」
「わ、私は70です」
「エリヴェラは85-」
颯也、本当にあとちょっとなんだなぁ。もうちょっと頑張ってさっさとクラスアップするか。
っていうか、シルシィが強い! あと、何気にエリヴェラちゃんのレベルも高いね。
「うわぁ、高いのね・・・。スキルは?」
「全部読めばいいですか? タロットカード入手可能 召喚成功率小UP タロットレベル3 短剣レベル2 ドロップ率UP 魔物使いレベル3 魔力レーダー 鞭レベル3 使役レベル5 エルフ魔法レベル5 使役+レベル4ですかね」
「エルフ魔法?!」
「色々ありまして」
そうか。私、『なんでエルフ魔法もってんだよ?!』って言われるんだった。エルフ魔法持ってるなんて言った事ないから忘れてたよ。
ふつう、兎獣人にしたらおかしいもんね。うん、本当におかしい。
「私はエルフ魔法レベル5 タロットレベル3 弓レベル2 魔力レーダー 魔法威力UP 魔法コントロールUP エルフ魔法+レベル5です」
「僕は剣レベル5 槍レベル3 巨大剣レベル3 魔力レーダー」
「私は科学者 調合レベル5」
「エリヴェラは悪魔魔法レベル5 空間魔法レベル3 擬態魔法レベル3 鎌レベル2」
雅さんが困った顔をする。そりゃ、みんな違う方向で伸ばさせたしね。ちょっとびっくりするくらい違う。
だいたい、+にしてレベル1にすれば、レベルが上がりやすくて、すごい量のスキルポイントが手に入るんだし、私やシルシィはこれいくらいの量になっちゃうよ。
「みんなで掛かったら、私より強そう・・・。ずいぶん頑張ってたのね」
「雅さんのレベルは?」
「今クラスアップしたところ。15++よ」
やっぱり、+が付いていたのか。++って、ある意味250だよね。265レベル・・・。あ、エリヴェラちゃんの年と一緒だ。関係ないけれど。
「265-。エリヴェラの年と一緒ー」
「そうだね。すごいね」
「?! ああ、悪魔だったわね。えぇと、エリヴェラちゃん?」
それから雅さんは心花ちゃんを見てちょっと困ったような顔をする。それを颯也が見つける。
「僕が颯也。この子は心花っていうんだ」
「颯也くんに、心花ちゃんね。よろしく。雅よ」
「本当に今更だけどな」
雅さんは何か考えたような仕草をしてから、私たちの顔を見る。
「ねえ、良い情報があるんだけど、聞きたい?」
「どんなことです?」
「レベルアップに大きく関係する事よ」
へぇ・・・。どこかで経験値をたくさんくれる魔物でも? 良い情報じゃない。
「聞きたいなら、手伝ってほしい事があるの。やってくれない?」
「良いですよ。ね、みんな」
「朱璃姉ちゃんが良いって言うなら、良いぜ」
「もちろんじゃないですか、マスター」
「みんなが良いって言うなら」
「エリヴェラも行くー!」
「あぁ、疲れた。てっぺんどこなの?」
私たちは山登り中。このてっぺんに住むドラゴンが、あちこちで悪さをしているらしいので、退治に向かっているところ。これが、雅さん言うの条件だ。
「仕方ないでしょ、このドラゴン倒せなかったら、私の情報は生かせない。テストでもあるのよ」
「はぁい。でも、本当に飛べるドラゴンは楽でいいなぁ」
「朱璃様の魔物使い、鍛えれば行けるんじゃないですか?」
あ・・・。今度やってみようかな?
それより、もうちょっとでてっぺんらしい。ああ、さっさと倒したい。雅さんは見てるだけらしいけど、まあ大丈夫だろう。この子たちの強さは相当だ。
着いた。真っ赤な大きなドラゴン。今まで会ったどのドラゴンよりも強そうだ。
ちょっと怖いなぁ・・・。でも、何とかなるだろう。
「颯也、先お願い」
「分かったぜ。シルシィ姉ちゃんはすぐ頼んだ。エリヴェラちゃん、付いてこいよ」
「分かってます。巻き込まれないで下さいよ」
「エリヴェラはお兄ちゃんに付いてけばいいの?」
颯也が巨大剣を構え、エリヴェラちゃんは鎌を持つ。
心花ちゃんが隠蔽用の薬を二人にふりまいて、スタートだ。
「偉大なる暴風の精よ。我の命に従いたまえ。『ヤールキィ・ヴィエーチェル』」
シルシィが詠唱を短縮した。エルフ魔法+レベル5を持っていれば、短縮してもさほど威力は下がらない。そりゃ、多少は下がるけど。
ちょうど剣を振り終わった颯也が下がってからドラゴンに直撃。すぐにエリヴェラちゃんの鎌の攻撃が炸裂する。
三人の攻撃を一度に受けたドラゴンは、怒り狂って戦闘態勢に入る。が、颯也達を見つけられない。隠蔽薬のおかげだ。
「偉大なる海の精よ。我の命に従いたまえ。全てを飲み込む青い水を、我とともに呼び起こせ。『ヤールキィ・ヴァダー』!」
私が放った魔法は、見事にドラゴンの顔に直撃した。
「よし、エリヴェラちゃん、本気で行っていいぜ!」
「やった! トルナード!」
エリヴェラちゃんが鎌をぐるぐる振り回す。赤い液がすごく飛び散るけど、まあ、気にしないことだ。これは、悪魔を仲間にしたからには避けられない。
「シルシィ姉ちゃん、とどめさして良いか?」
「もちろんです。行っちゃって下さい」
「お兄ちゃん、お願ーい」
跳び上がった颯也がざっくり首を落とす。エリヴェラちゃんが嬉しそうな顔をするけど・・・。気にしないことだ。
心花ちゃんはもう見てすらいない。シルシィは問題ないようで。
「まあ、合格ね。すごいじゃない、ちゃんと倒せるのね」
「お、レベルアップ。朱璃姉ちゃん、クラスアップしていいか?」
「うん。じゃあ、歩いて帰ろうか」
颯也は特殊パラメータ『みきり』を選んだ。ふわっと光ってクラスアップは完了する。
で、歩いて帰れば、いくらかレベルは上がるだろう。このあたりの魔物は結構強い。
心花ちゃんは弱気な声出すけど、まあ、知った事ではない。
「情報だったわね。みんなは、船に乗った事はある?」
「ないです。まだ、このあたりしか」
「そう。この街の船着き場から出る船で行ける島で、近々ボスラッシュが出るらしいの」
ボスラッシュ? 名前から大体想像できるけれど・・・。詳しくはわからないなぁ。
多分、強い魔物が出るとか、そういうことなんだろう。
「強くて、大量に経験値が手に入る魔物ばかりになるの。行ってみて」
「なるほど。もうすぐ二人もクラスアップだったよね」
「そうです」
「エリヴェラあとちょっと―」
ボスラッシュね・・・。じゃ、船、乗ってみよっか。
「あと、馬車持ってないの?」
「今のところは、必要なかったもので」
「馬車でも、エリヴェラ、飛ばせるの」
へぇ。馬車ごと移動できるんだ。でも、ほら、花凛みたいのはごめんだ。普通のなら、良いかもなぁ。
って、この世界の馬って、地球と一緒だろうか?
「移動にはないと不便よ。今度見ておきなさい。そろそろ私は帰るわ」
<あんまり頻繁に会ったら殺すぜ>
「怖いわね。具体的に、どの位ならいいかしら?」
<ま、ふた月に1回なら良いぜ>
雅さんは時計を確認すると、慌てた様子ではワープを使う。悪魔魔法以外でも、ワープ魔法はあるんだ。たしか・・・。空間魔法とか、そんなんだったかな。
「もうこんな時間ですか・・・。なんで歩いて帰って来ちゃったんでしょう」
「えー、だめなのー? それより、夜ご飯ー」
「そうだね。じゃあ、作ってくるから、準備しておいてね」
「ここが馬車屋さんですか?」
「ええ、そうですよ。いらっしゃいませ」
馬車屋は牧場のようなところだった。たくさんの馬が走りまわっているけど・・・。
ペガサス・ユニコーン・ヒッポグリフ・・・。馬、だけどさぁ。
「馬車が欲しいんですか? どの子がお好みで?」
「初めてなんですけれど、説明してもらえますか?」
シルシィがきくと、店員さんは細かく説明してくれた。
ペガサスは飛ぶこともできるので、行動範囲は広い。まあ、安定しないから、多分危険。
ユニコーンは、戦闘能力が高いから、何かあっても大丈夫。気性が荒いのが問題だけれど。
ヒッポグリフは、割と時間がかかる。信用してくれないと、ちゃんと引いてくれないんだ。ただ、結構強い。
あとは、キメラなんかも居るけれど、それはその子によって特性が変わってくる。キメラって、混合獣だし。
「最初はペガサスでしょうか。飛ばさなければ、一番安全で扱いやすいです」
「じゃあ、ペガサスが良いです」
「馬車は、木製で良ければお付けします。それ以外なら、買って下さい」
とりあえず何が良いのか分からないので、木製のものを貰う。
で、ペガサスを選ぶ事になるのだけれど。
「どの子が良いんでしょう?」
「それは、好みですけれど・・・」
全然わかんない。特徴と言っても、色が違うくらいしかわかんないし・・・。
とりあえず、桃色の子を買った。金貨五枚。おそらく五万円くらい。だと思う。
「よろしくね。チェリーちゃん。安全に運んで頂戴」
「私たち、初めてですけれど、よろしくお願いしますね」
チェリーちゃんと名付けられたその子は、一度応えるように嘶いた。
そのまま、ゴトゴトと進んでいく。整備されていない道を走るのって、正直・・・。
あ、もしかして、雅さん。急に船に乗らせないため? もしかして・・・。
凄い酔うってこと?!
「な、なんでシルシィさんは平気なんですか?」
「颯也もなんで元気なの?」
「ったく、それじゃ船乗れないぞ?」
私と心花ちゃんはそれぞれ颯也、シルシィに介抱される羽目になる。なんでこんなに元気なのか不思議だよ。
エリヴェラちゃんはまともに乗ってない。隣を楽しそうに飛んでいる。羽は小さいから、魔法で飛ぶらしい。
「っていうか、奴隷って嫌でも馬車乗るじゃないですか。心花ちゃんはどうしてたんですか?」
「毎回酔った。全然慣れないんですよ、これ」
「私は乗った事ない」
「んー? 楽しいよー?」
颯也が苦笑いして私の背中をなでている。元気なんだけど、この2人。なんで?
シルシィは慣れたと考えていいけど、颯也は元々奴隷ってわけじゃない。そんなに乗らないと思うけど。
「僕は平気だな。なんでだろ?」
「知らない。いっつも元気すぎるんじゃん?」
「じゃあ自慢していいのかな」
わかんないけど・・・。そのうち慣れるのかなぁ・・・。
結局、その日はあっという間に酔ったので、すぐに帰る事になった。
「マスター、ハーブティーですよ」
「あ、ありがとう」
「心花ちゃんも、ほら」
「ありがとうございます」
帰ってから、シルシィが心花ちゃんの育てているハーブでハーブティーを作ってくれた。一応、心花ちゃんに指示で。
ちなみに、心花ちゃんは庭の管理を全部行っている。強制したわけじゃない。勝手にやってる。
でも、そのおかげかすごい綺麗になっている。才能って・・・。
「美味しい。心花ちゃん、このハーブすごいね」
「私、特別なことした覚えないんですけれど。普通に育てたんですが」
「もはやスキルだね。そんなスキルあったっけ?」
多分ない。あるのかな。少なくとも、知らない。
「とりあえず、二人にはこれに慣れて貰わないといけません」
「分かったよ。頑張るよ。早く慣れないとね」
「うぅ・・・。仕方ないですよね・・・」
しばらくは大変そうだな・・・。




