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第19話  この世界の勉強です

「へぇ・・・。なるほど・・・」

「わかった? まったく、何で今さらそんな事を・・・」

「う・・・。ごめんね、花凛」


 今日は、図書館でお勉強中。何も知らないで冒険すると大変なので、冒険を一時中断したのだ。

 そうしたら、花凛がやってきたので、説明を受けていたわけだ。

 にしても、花凛はまだこの辺にいたんだ。てっきりどっかに遠くにいるのかと思ってた。


 まず、この世界のこと。

 大陸は全部で五つあって、大きな大陸を中心として、中央大陸、東大陸、西大陸、南大陸、北大陸とある。ここは東大陸だ。

 で、東大陸と南大陸に亜人が住んでいて、中央大陸と西大陸に人間が住んでいるらしい。北大陸は、基本的に精霊、まあ、エルフたちの住みかだ。


 亜人の大陸では人間が、人間の大陸では亜人が差別されている。

 まあ、もともと一緒に住んでたのに、人間がいきなり亜人を差別し出したからこうなっちゃったんだけど。だからか、このあたりの奴隷は人間が多い。とはいっても、亜人の国だから、亜人も多いけれど。つまりは、住人に比べて人間が多いってこと。


 で、次からはここ、東大陸のことだ。

 ここにはもともと、日本語を喋る人がいたらしい。

 が、日本語を学ぼうと南大陸から人が入り込み、入りこみ、挙句の果てに日本語を喋る人たちを端に追いやってしまう。

 だからか、日本語を喋るのに名前は外国語、というのはよくある話で。

 っていうか、日本の名前は、このあたり、ごく少数らしい。このあたりの子なら、日本語の名前らしいけれど。


 ちなみに、花凛の見た感じだと、エルフはロシア語、悪魔と天使はフランス語、人間はドイツ語やイギリス語を喋る人が多いとか。って、そんなに多くの言語を知っている花凛に驚きだよ。


「差別は、まぁ、酷いわよ」

「そう、なんだ・・・。心花ちゃんも・・・」

「そういえば、その子、人間なのに、名前、日本のよね? 不思議」


 そういえば。ハーフとかだったりして? いや、差別が始まってもここから離れなかった人の一族なのかもしれない。

 そういえば、心花ちゃんの親はどうしたんだっけ?


「なんか、いろいろごめんね。ありがとう」

「何も知らないと、私だって困るじゃない。結局は一緒に敵と戦うんでしょうし」

「そうだろうね・・・。でも、殺し合いになるかも・・・」

「そしたら私が勝つわよ」

「そうだろうね」


 花凛はどうやら来てすぐ、女神とうたわれ、馬車に乗せられ、国王にもてなされ、姫として迎えられ、軍をプレゼントされたらしい。行かなくて良かった。紙貰った時、潤さんが注意してくれて良かった。


「まぁ、朱璃はそれは向かないわよね」

「うん、絶対。行かなくて良かったよ」

「じゃあ、その紙自体は朱璃も貰ったんだ?」


 私が頷くと、花凛は割と興味なさげに「ふぅん」と呟いた。

 結構私のことを考えてくれていたらしく、色々な事を教えてくれる花凛。前とはホント別人みたい・・・。


「ねえ、気になる事があるんだけど・・・」

「何? まだ何か?」

「ちょっとこれ見てよ」


 私は見ていた種族図鑑を指さす。

 おかしいのだ。種族を見て行くと、人間、獣人、兎、って。


「はぁ?! なにこれ」

「兎は獣人じゃないらしい」

「ある種差別じゃない!」


 まあ、兎獣人には獣人の特性、当てはまらないけどさ。一つも。

 でもまあ、一応獣人なんだけどなぁ。



「あ、マスター、お客さんです」

「やっほー、朱璃ちゃーん、久しぶり。覚えてる?」

「え・・・? あっ・・・。咲耶さやさん?!」


 黒髪ロングで、背の高いこの少女。頭に猫の耳が生えている。

 間違いない、大人しくて、頑張りやな学級委員長、咲耶さんだ。


「覚えててくれたんだ。ありがと。でも、一応サマンサで通ってるから」

「そ、そうなんだ・・・」


 なんだか、印象が違う。大人しくて、優雅だったイメージがあるんだけど・・・。

 まあ、花凛もだいぶ違うしなぁ。もしかしたら、人種が変わったからかもしれない。

 って、じゃあ、私も何か違ってる?


「花凛の紹介で来ちゃった。元気そうで良かった」

「あ、うん、元気だよ。咲耶・・・、じゃなくて、サマンサさんは?」

「サマンサで良いよ。ってか、咲耶でも良い。私は元気。国王に呼ばれた時から、もう大変だよー」


 どうやら、咲耶も軍を持っているらしい。

 基本的には自由だけれど、たまに国王の命令に従わなくてはいけない事があるらしい。魔物の退治とか、ね・・・。


「朱璃は、行かなかったの? 平気だったの?」

「潤さんに、断って貰ったの。潤さんの方が、権利あるって」

「?! そう、なんだ? まあいいけれど。にしても、良い子ばっかりだね、朱璃の仲間」


 シルシィは困ったように私を見る。さっきから、お茶出しやら、お菓子を出すのやらを無言でやっているわけで。

 その補佐は心花ちゃん。おそらく咲耶から見えているであろう所では、颯也がエリヴェラちゃんを構っているはず。


「まあ、私の仲間、奴隷だけどね・・・」

「ですが、マスターは私達のことを縛った事は一度たりともありません」

「あはは、そうだろうね。仲が良さそうでいいね」


 颯也がこっちに来た。何かと思えば、エリヴェラちゃんが泣いている。

「ん? どうしたの?」

「なあ、朱璃姉ちゃん。もしかして、この姉ちゃんも、か?」


 あー・・・。エリヴェラちゃんのお母さんは転生者と同じ雰囲気持ってるんだったか。

 なんでだろう。だって、エリヴェラちゃん250歳とかでしょ? そうなるとお母さんって・・・。


「あれ? なんか、私のせい?」

「いや、そういうわけじゃ・・・。エリヴェラちゃん、こっちおいで」

「やー。でも、ごしゅじんさまには従うの」


 エリヴェラちゃんは素直にこちらに飛んできた。私は膝に乗せて撫でてやる。

 心花ちゃんがエリヴェラちゃん用にコップを一つ出すと、シルシィがお茶を注ぐ。

 ちょっと落ち着いたエリヴェラちゃんはぴょこっと飛び降りて咲耶を見る。


「ごしゅじんさまと同じ色・・・。真っ赤な、真っ赤な魔力・・・」

「赤・・・。やっぱりね・・・。ねえ、咲耶、ペンダント持ってる?」

「あるよ。ほら」


 私は咲耶のペンダントをエリヴェラちゃんに手渡した。

 しばらくペンダントを眺めていたエリヴェラちゃんは、私のブレスレットを指さす。


「これと、同じ魔力が入ってる!」

「じゃあ、これはやっぱり魔王の魔力かな? エリヴェラちゃん、今の咲耶の魔力は?」

「え? うーん、なんか、ちょっと赤いけど・・・。紫?」

 うーん・・・。私もブレスレットを外してみる。


「あれ? ごしゅじんさまは、赤だよ。でも、ちょっと朱色っぽいの」

「これつけてた時とは色違うんだ?」

「うん、違うの。それはあってると思うよ」


 ってことは、その赤い魔力と言うのは、魔王のものでまちがいないだろう。

 じゃあ、エリヴェラのお母さんも、何らかの形で・・・。


「でも、いま決めたの。気にしないって」

「そっか。エリヴェラちゃんは、強いね」

「そう? でも、エリヴェラは、お母さんのこと、目標にするの」



「じゃあね。また、多分会うことになると思うし、よろしくね」

「うん。わざわざ会いに来てくれて、ありがとう」


 咲耶は手を振りながら走って帰って行った。花凛とはあまりに違いすぎる。走って行くんだ・・・。

 シルシィたちも驚いたようにそれを見ていた。どこまで行くのか知らないけどね。


「あ、それで、マスター、調べられましたか?」

「うん。ついでに花凛に解説ももらったの」

「へえ。このあたりにいるんだ、黒髪エルフの姉ちゃん」


 そうなんだよなぁ。みんなこの辺にいるとは思ってなかった。

 じゃあ、ほかの子にも合うかなぁ。あんまり会いたくないけれど。


「それより、いつまで冒険は中止です? 早く狩りに行きたいです! もうすぐ隣街ですよね?」

「じゃあ、今日は遅いし明日にしようか」

「そうですね。シルシィさん、今日は早く寝ましょう」


 私たちはそんな話をしながら、家に入って行く。

 とりあえず、武器の確認はちゃんとしないとね・・・。



「うわ! 僕だけじゃ手に負えない!」

「エリヴェラちゃん、お願いします」

「わかったー。避けててねー」


 エリヴェラちゃんが鎌を振り回す。いつの間にか鎌のスキルを取っていたらしい。

 ちなみに、その鎌は前にドロップしたもので、エリヴェラちゃんが欲しいと言ったのであげた。


 にしても、本当に炎の鹿(フランメ・レー)しか見ないなぁ。他には何もいないのかな?

 っていうか、炎っていうくらいだし、他の色がいても良いんじゃないの? どこに行っちゃったんだろう。


「ソウヤ君、それ頼みます!」

「分かった、それ!」

「エリヴェラは退散―」


 声に出して何をしようとしているのか伝えながら、うまく連携を取っている。

 本当に戦いがうまい。しかも、楽しんでいるようにしか見えない。


「朱璃様、私、何すれば良いんでしょう?」

 暇そうな心花ちゃんが私に聞く。まあ、やる事なさそうだもんね。


「何かあった時のために、魔物の特性でも覚えておきな」

「ああ、そうですね」

「それと、連携の仕方を見て、補助の仕方も考えて。うまく薬が使えるように」

「なるほど。では、しっかり見ておきます」


 私も、ここにだったら、この魔法をかけるなぁ、なんて考えながら見ている。

 とはいっても、完璧で、あまりそういったところは見当たらないけれど。



「ついたぁ! ごしゅじんさま、ここだよね」

「そうだよ。じゃ、門番のところにいこっか」

 門番は、私たちを見て怪訝そうな顔をした。なんでかわからないけれど。


「何者だ?」

「冒険者です。中に入れて貰いたいのですが・・・」

「もしかしてだが、バイオレッドから来たのか?」


 バイオレット、菫のことだけど、一応、私たちの家がある街の名前だ。

 ってことは、それでいいんだよね。


「はい。そうですが、問題でも?」

「な?! 鹿レーに会わなかったのか?!」

「会いましたけれど?」


 炎の鹿(フランメ・レー)しか見なかったけれど。そう付け加えると、もっと慌てたようだった。

 何か問題があったんだろうか? あいつは結構弱かったけれど、もしかしたら、殺しちゃいけなかった?


「倒したのか?」

「はい。もちろんじゃないですか」

「・・・見せてみろ」


 なんで?! おかしいじゃん! なんで実演しなきゃ?

 とはいっても、入れて貰えないのは困るので、みんなに了承を貰って、外を歩く。


「あ、来ましたね。シルシィさん、颯也さん、エリヴェラちゃん」

「了解です。エリヴェラちゃん、先制お願いします」

「まっかせてー」


 エリヴェラちゃんが鎌を振り回しながら鹿に向かって走っていく。まあ・・・。例の大出血は必須だが。門番も顔をしかめる。


「偉大なる水の精よ。我の命に従いたまえ。全てを飲み込む青い水を、我とともに呼び起こせ。『ヤールキィ・ヴァダー』!」

「颯也さん! 今ですよ!」

「わかってるぜ!」


 シルシィが魔法を撃つと、すぐに颯也が剣を持って走る。生き残りはすべて颯也が片付けたよう。

 まあ、弱いよね。本当なら一人でも倒せるレベルだろう。


「な・・・。これは・・・。なんということだ・・・」

「えっと、何でしょうか?」


 実は、鹿レーはすごく強い魔物で、冒険者に恐れられていたらしい。

 その中でも、炎の鹿(フランメ・レー)は特別強いとか。


 炎の鹿(フランメ・レー)は怖いものを知らない。なぜなら、このあたりに自分より強い魔物が存在しないからだ。

 故に、私たちの強さに気が付かない。おかげで、炎の鹿(フランメ・レー)としか戦えなかったわけだ。

 一応この区間は警戒区域。普通の冒険者は通らないらしい。そういうことは早く言って欲しかったな。

 まあ、調べなかった私たちが悪いんだけど。でも、何にも書いてなかったし。


「だから、バイオレッドからは、滅多に冒険者は通らないのだ。この門はほとんど使わん」

「って、あなたは倒せるんですか? 危ないですよね?」

「街の近くは、魔物は来ない。強力な結界が張ってあるんだ。魔物だけは入れない」


 ふぅん・・・。どうでもいいけれど、この子たちの強さはどうなっている。使役スキルって、そんなに強いのか?

 ただ、この結界、エリヴェラちゃんにはあまりよろしく無いようで、ちょっと嫌そうだった。

 悪魔じゃ、魔物に近いしね・・・。


「とにかく、入っても良いが、戦いなんてするなよ?」

「しませんよ?! では」

「ありがとうございました」


 と言うことで、次の街に入る事は出来たのだった。

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