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第17話  ハッピーバースデー

「お誕生日おめでとうです、マスター!」

「あ、シルシィ姉ちゃん! 先に言うなよー」

「え? 言って良いって言ったじゃないですか!」


 朝、リビングに行くと、いきなりクラッカーを鳴らされた。

 そして、何が起こっているのかわからないけれど、言い合いが始まった。

 テーブルの上には、綺麗にラッピングされた箱が幾つか。


「え・・・? 誕生日・・・」

「え?! 今日ですよね?」

「・・・あ! そうだった」


 すっかり忘れてた。今日は七月の二十日、私の誕生日だ。

 もうすぐ冒険に行こう、ということで、慌ただしくて忘れてた。

 道理で最近、家に誰も居なかった訳だ。


「今日は絶対マスターが主役ですよ!」

「朱璃様、おめでとうございます」

「ごしゅじんさまー、おめでとう」

「朱璃姉ちゃん、十五歳おめでとう!」


 何かいいなぁ、こういうの。仲間っていうより、自分の子供みたいな感じだね。

 そういえば、誕生日・・・。シルシィは一月の十五日。颯也は九月の二十五日。心花ちゃんは四月の二十七日、エリヴェラちゃんは十二月三十日だったかな。


「今日は、私が朝ごはん、作りましたよ」

「わぁ・・・。すごいね」


 盛りつけも含め、綺麗。

 器用だし、料理も上手な心花ちゃんは、誕生日とか関係なく家の家事を担当しかけている。

 シルシィは、戦闘用の奴隷だから、家事は全くだ。やる気もなさそう。


「じゃあ、食べましょう! と、その前に。マスターにプレゼントです」

「朱璃姉ちゃんのために買ったんだ。ちゃんと受け取ってくれよ?」


 まず、颯也が大きめの袋を渡してきた。綺麗な袋は、赤とピンク。私を意識してだろう。

 中身は・・・。ピンクの鞄、リュックだ。割と大きめ。


「確か、新しいのが欲しいって、言ってたよな?」

「うん。ありがとう。大切にするね・・・」


 そう。使っている鞄が服と合わないと言ったのは、確かに私だ。

 颯也、よく覚えてたなぁ。随分前の話だったんだけど。


 っと、次に行こう。次は心花ちゃん。これまた大きい。けど、今度は箱みたい。

 中から出てきたのは、綺麗なブーツ。


「朱璃様のブーツ、もう古いでしょう? 冒険に向けて、新しくしましょう?」

「そうだね。ありがとう」


 ブーツも、こっちに来てすぐ買ったもの。もう1年も使ってるし、なにせ、冒険に使っているんだ。傷も付くし、新しいのが欲しかったのだ。

 これなら、新しい服と合うだろう。綺麗な皮のブーツ・・・。ところで、心花ちゃんはどうやってこのお金を・・・? 少ないお小遣い使ってくれたのかな。


 来てすぐだというのに、エリヴェラちゃんも準備してくれたらしい。

 小さな、綺麗な赤色の(ステッキ)だ。


「エルフ魔法使うんでしょー? 威力上がるよ」

「そうなんだ。綺麗だね・・・。ありがとう」


 最後、シルシィなのだけれど、置いてあった箱や袋は、全て受け取ってしまった。

 じゃあ、何なんでしょう? 見当もつかないな。


「私からは・・・。いろいろ考えたんですけれど、よくわからなくて・・・」

 シルシィはそう言うと、部屋を出ていってしまう。な、なんだ・・・?


 次に入ってきたシルシィは、手に、何かふわふわなものを抱えていた。

 此方まで歩いてくると、シルシィはそれを私に手渡してきた。


 ふわふわなものの正体は、小さな長毛の兎だった。


「え・・・? 兎・・・?」

「マスター、兎好きでしたよね。良く、タロットから出して、可愛がってました」

「そうだね・・・。小さな生き物は、嫌いじゃない」


 でも、飼えなかった。私は、いつも、『誰かの家』にいたから。

 そんなところで、生き物を飼うこと等、出来るはずがないわけで。


「この子は、ゴミ捨て場に捨てられてました」

「え・・・・・・」

「だから、連れて帰ってきて、綺麗に洗って、ブラシもかけてやりました。可愛いでしょう?」


 真っ白で、目は黒いけれど、ちょっと赤っぽい。耳は垂れている。

 ちょこっと首をかしげたようなポーズが可愛らしいその子は、暴れることも、しなかった。


「ま、それだけじゃプレゼントになりませんから、これも」

「わぁ・・・・・・」

「マスター、綺麗なもの、好きでしょう」


 片手に乗るくらい小さな、宝石で彩られた小物入れ。宝石は赤い色。宝箱の形をしている。

 開けてみると、中には・・・。

 赤い石のついた、指輪。赤い石は魔石なのか、魔力が感じられる。


「まあ、基本的には気休めです。そんなにパラメータに変わりはないでしょう」

「でも、嬉しいよ。ありがとう」

「じゃあ、料理が覚めちゃいますので、いただきましょう。兎は、降ろしても平気でしょうか」



「クローリク、おいで」

「マスター、まだやってましたか」

 クローリク、シルシィの国で、兎の意味だ。真っ白で可愛い。

 さっきから、何分もこの子の前にいる。動きが、可愛いんだ。


「朱璃様、もうすぐ一時間になります」

「あ、ほんと? じゃあ、そろそろ止めようか・・・」


 颯也が即興で小屋を作ってくれた。賢いこの子は、すぐに自分のものだと気づいてくれた。

 って言うか、即興で小屋作るってどういうこと?! 颯也、ここに来る前、家で何をしてたんだろう。


「そろそろ働くか。ほとんど趣味だけど」

「まずは・・・。タロット整理しますか?」

「うん。すごい枚数になっちゃった」


 結構売ったんだけどなぁ。タロットはお店で売買できる。ただ、他人のものは失敗しやすいから、注意が必要だけど。それでも、需要は高い。

 同じ種類のものは少し残して売ってしまう。ドロップ率UPのおかげで、大量に手に入るんだもん。


 一瞬で終わってしまったな。やることといっても、レベル上げばかりしていて、趣味がほとんどない。後は薬作ってる事も多いか。今は必要ないけど。

 私はあれこれ考えてみた。けど、やっぱり何も思い浮かばない。


「そうだ、シルシィ、もうすぐレベル100だよね?」

「はい、そうですが」

「じゃあ、レベル上げに行こう!」

「えっ! あっ、あああ!」


 だってさ、暇になっちゃったんだよ。

 ほら、誕生日だし、付き合ってくれてもいいでしょ?

 因みに、全員付いてきた。



「レベルアップ。これで、100です!」

「わぁ、すごい!」

 私はシルシィの頭を撫でる。嬉しそうな顔をして、パラメータのカードを取り出し、首を傾げる。


「ランクアップ・・・? なんでしょう・・・?」

「んー? クラスアップ? 100になったらね、もう一度1レベルにするのー」

「エリヴェラちゃん・・・? なんですか、それ」


 最初のレベルは、100がマックスだ。

 そこから、クラスアップをすると、レベルが1に戻る。

 その変わり、1でも前より強いし、幾つかの選択肢の中から、どういったふうに成長したいか選ぶこともできるのだ。


「クラスアップ、してもいいですか?」

「いいよ。私たちもある程度戦えるから」

「では・・・。そうですね・・・。『エルフ魔法+』を取ります」


 シルシィ 10歳 ランクC パーティ『宝積』 パーティランクD

 レベル1+ ダメージ500 マジックパワー700 スタミナ550 力150 

      魔法800 守備300 速さ250 

 エルフ魔法レベル5 タロットレベル3 弓レベル2 魔力レーダー 魔法威力UP 魔法コントロールUP エルフ魔法+レベル1

 スキルポイント155 振り分ける


「出来ました」

「うん。一回クラスアップってことは、今度のレベルマックスは150だよ」

「上がるんですね」


 これくらいは、ちゃんと図書室で調べておいたんだ。

 ま、まさかシルシィが一番にクラスアップするとは思ってなかったけど。


「エルフ魔法+は、スキルポイントを多く使うようです」

「そうなんだ。上げるかどうかは、任せるよ」


 シルシィはスキルポイント75を使ってレベル3まで上げたようだ。

 明らかに、強くなったのが感じられる。でも、まだレベル1。


「じゃあ、シルシィ姉ちゃんのレベル上げに行こうぜ!」

「冒険できなくなっちゃいますからね」

「シルシィさん、もっと強くなるんですか・・・」



「つ、疲れました。スタミナが少ないと、大変ですね」

「そうだね。でも、すごい上がったよ」

「レベルは30になりました」


 シルシィはすごい強くなった。そりゃあもう、ドラゴンも驚くくらい。いや、例えだからね?

 とは言っても、このあたりのドラゴンは、ドラゴンの中でも弱いらしいけれど。


 それに、雅さんたちも+だろう。強さや歳から考えると、そんな感じだと思う。

 潤さんは例外だな。もう幾つ+がついているのかわからない。


「でも、マスターももうすぐですよね。私が強くならないと、倒せないでしょうし・・・」

「もう十分強いし、大丈夫だと思うけど・・・。頑張ろうね」

「はい!」



「朱璃様、召し上がれ」

「すごい・・・」


 さすが誕生日パーティー、といったかんじだ。

 なんというか、私の好きなものばかりある、というべき? いや、違う。私がよく作るもの。つまり、私が作るのが好きなものばかりだ。


 大きな鍋に入ったブラウンシチュー、綺麗な焼き色のオムレツ、野菜たっぷりのコンソメスープ、飾り切りの野菜が入ったサラダ・・・。

 まあ、器用な心花ちゃんらしい料理でもある。っていうか、私が料理教えたんだし、私が作るものばかりでも仕方ないんだけどさ。


「うん、美味しい。うまくなったね」

「でも、マスターの料理の方が美味しいんじゃないです?」

「私もそう思います。練習が足らないです」

「そ、そうか? 心花ちゃんのも美味しいぞ?」

 シルシィと心花ちゃんの言葉に、慌てて颯也がフォローを入れる。いつものことで。


「人参可愛い。スープの野菜も飾り切りなんだ」

「時間かかるんですけれどね。特別です」

「エリヴェラはなんでもいいー」


 と、まあ、性格の違う私たちで話しながら料理を食べ進めていくと、案外あっという間になくなるものだ。

 まあ、颯也は剣持って動き回ってるしなぁ。心花ちゃんも、シルシィも、エリヴェラちゃんも、すごい良く食べるわけで。


「じゃあ、最後です。持ってきますから、ちょっと待っていてください」

「手伝わなくて平気ですか?」

「大丈夫ですよ、シルシィさん」


 心花ちゃんは、綺麗な、ピンクのクリームを使ったケーキを持ってきた。

 上には、苺かラズベリーに似た木の実が乗っている。このクリームにも、それを使っているんだろう。


「どう、ですかね?」

「可愛い。すごいね、心花ちゃん」


 心花ちゃんはケーキに注意深く包丁を入れる。綺麗に切り分けてお皿に乗せると、ちょっと心配そうに私を見ている。

「お口に合いますか・・・?」


 一口食べてみる。

 最初は甘いけれど・・・。ちょっと酸っぱいかな。

 あまり甘いものが好きなわけじゃないから、甘いのって、飽きるんだよね・・・。これくらいのほうがいいな。


「美味しいよ」

「よかったです! 図書館でレシピ探してきたんです」

「そうなんだ。よくできたね」


 みんなもそれぞれ感想を言っている。心花ちゃんは嬉しそうにそれに応えている。

 今日は楽しいなぁ。こんなに楽しいなら、本当に、召喚されて良かったよ。


「マスター、一緒に、世界を救いましょうね」

「私たちは、必ず一緒に戦いますから」

「僕も、朱璃姉ちゃんは必ず守る!」

「エリヴェラもごしゅじんさま守るのー!」


 可愛い私の仲間は、此処ぞとばかりに気持ちを伝えてくれる。

 そう。この子たちの笑顔を守りたい。みんなで協力して、世界を救いたいな。


 雅さんたちの事、忘れるつもりはないけれど・・・。

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