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第13話  颯也くんのレベル上げ

 ガシャン!


「あたっ・・・。やっちゃった・・・」

 手から流れる血を眺めてため息をつく。


 私の部屋は、さながら研究室のようになっていた。

 本棚には薬の類のレシピ、私の研究ノート、魔物図鑑、魔法図鑑で埋め尽くされている。

 机の上は、薬を作る機械でいっぱいだ。


「マスター? どうかしましたか?」

「ううん、大丈夫だよ?」

「あ、怪我・・・。治癒の精よ。我の名に従い、マスターの傷を癒したまえ。『マーリニキィ・リュチーチ』」


 シルシィが私に回復魔法をかけてくれた。

 ちなみに、シルシィは私の部屋で本を読んでいた。音がしたから顔を上げたのかな。

 読んでいた本は『勇者物語』。ありがちな名前だな。勇者が世界を旅する話。作り話だけど。


「ところで、どうしたんです?」

「あ、ナイフでうっかり刺しちゃって。びっくりして落としちゃった」

「そうですか。その調合ナイフも、結構使いましたよね・・・」


 確かに、このナイフは立華家にいた時から使っているし、もっと言えば半年位、丁寧に使っていた。

 そろそろ、新しいのが欲しいな。でも、颯也くんが来たばかりで、まだそんな余裕はなさそうだ。


 三日前にきた颯也くんは、どんどんレベルを上げていき、今は一人でレベル上げに行っているはずだ。

 シルシィが楽しそうに経過を話してくれたので、なんとなくは知っている。

 Tシャツを着て、ズボンを履いて、腰にはベルトが巻かれていて、マントを羽織っている。

 腰には剣が刺さっているし、完全に剣士の格好になった。


「マスター、そろそろ依頼をやりたいです」

「んー、そうだね。明日やってみよっか」

「はい! では、私はソウヤくんを探してきます」


 そういったところで、ただいまーという声が聞こえてきた。

「あ、帰ってきた。マスター、何取ってきたのか見に行きましょう」



「どうだ? 結構狩れたと思うんだけど」

「十分だよ! すごいね。傷も綺麗だし、高く売れるね」

「やった! 朱璃姉ちゃんとシルシィ姉ちゃんが教えてくれたおかげだよ!」


 綺麗な色とりどりの兎。まあ、ほとんどが赤く染まってしまっているけれど。

 颯也くんはなんとなく性格がブレている。どっちに行くんだかなぁ・・・。

 と、それはどうでもよかったね。


「ねえ、明日くらい、ギルドに行って依頼を受けようと思うんだけど」

「マジで! 行きたいな」

「じゃあ、今日はちゃんと休んでね」


 颯也くんは、正式にここに住んでいる。部屋は余っていたし。

 毎日金貨10枚くらいの稼ぎがあるんだ。本当にすごいと思う。

 そうして、私たちに褒めてもらうのを楽しみにしているわけで。



「あら、朱璃ちゃんじゃなぁい?」

「う、紫さん・・・」


 ギルドに入って早々、目に入ったのは、コウモリ獣人の、ちょっと悪戯好きな紫さん。シルシィもわかったようで、ちょっと目を逸らした。

「どうしてこんなところに? 雅たちと一緒じゃないの? って、新しい子がいるわね」

「朱璃姉ちゃん、この人誰だ?」

「・・・。黙秘します」

「なんで?!」


 うう・・・。この人は知らないんだろうなぁ。どうしよう・・・。

「お? 紫、どうしたんだ?」

「慶。朱璃ちゃん、久しぶりに見たから」

「そうだろうな。パーティー抜けたんだろ?」

「なんですって?!」


 紫さんが愕然とした様子で私を見つめている。そりゃ、そうだろうな。

「なあ、朱璃姉ちゃん! この・・・、『サキさん』って、誰なんだ?」

「前のパーティの、グループの人?」

「なんで疑問形なんだよ!」


 ああ、会いたくなかった。どうしてこんなところに?

 超気まずい感じになっちゃったじゃないか。シルシィも逃げ出しそうな勢いだ。

 颯也くんだけが、状況がわからずあたふたしている。


「まあ、いろいろあるって言ってたな。雅のとこの子は、みんなそうだろ?」

「・・・、そう、ね。スターリリィの獣人なのに、名前が一文字じゃないからおかしいとは思ってたけど」


 あぁ、えっと、スターリリィっていうのは、立華家のある街のことだ。

 そう、スターリリィの獣人は、みんな名前が一文字なのだ。

 雅、優、麗、琳、慶、紫、奏、潤、恵・・・。ね?


「まあいいわ。でもどうりで雅が泣いてたわけだわ」

「えっ・・・」

 シルシィは悲しそうな顔をしていた。私も、おそらくは。


「じゃあね。ところで、あなたは?」

「え? あ、颯也です」

「そう。またね」

 紫さんは、私のことを悲しそうに見て行ってしまった。


「おい・・・。どういう事なんだ? すごい、冷たいオーラがあったけど」

「そうかも、蝙蝠だから・・・。悲しいけどね、仕方ないよ」

 颯也くんはちょっと首をかしげた。


 で、ちょっと色々あったけど、いくつかの依頼を受けることにした。討伐依頼と調達依頼だ。

「えっと、巨大貝の撃破と、足長蟹三匹の調達、かな」

「マスター、これ、近くの海のですよね?」

「そうだね、まあ、このあたりが無難でしょ?」


 颯也くんも頷いていた。そこなら平気、ということでいいんだろう。

 私たちはすぐに出かける準備を整えて出発した。



「あれが巨大貝? 随分大きいですね」

「この前遠目から見たんだけど、近くで見るともっと大きいね」

「あれ、倒すのか?」


 反応は様々だったけど、倒すのは決まっている。

 まず一番最初に動いたのは颯也くん。それに合わせてシルシィが魔法を出す。


「『マーリニキィ・ラスチェーニヤ』!」

 無詠唱だ。前に言っていた。無詠唱の方が形や威力などを変えやすいと。

 走っていった颯也くんの足場を作るように大きな切り株のようなものが次々に出現する。


「たあああ!」

 上まで上がり終えた颯也くんが剣を振りかざすのと同時に、私は攻撃力の上がるタロットを使う。

 貝は真っ二つになって、何故か中身が溶け、後に貝殻だけが残った。

 貝殻に依頼の紙にを近づけると、紙はぽうっと光って青い『任務完了』の文字を浮かび上がらせた。


「タイミングはバッチリだったよ、朱璃姉ちゃん、シルシィ姉ちゃん」

「うん、ソウヤくんもすごいね。真っ二つになったよ」

「マスター、私もー!」


 颯也くんの頭を撫でると、シルシィがぴょんぴょんと飛び跳ねてアピールしてきた。

 ちなみに、シルシィは喜ぶけど、颯也くんはすごく嫌がってしまう。


「っていうか、いつまで君付けなの?! もう良くない?!」

「え? あ、そう。うーん、そういうものだと思ってたんだけど。颯也」

「は?! 随分あっさりだな。まあいいや」


 ちなみに、戦いに参加すれば、えっと、一応一回でも攻撃すれば? 経験値がもらえることは分かっている。

 ただ、分けられてしまうみたいで、一人の時の方が効率よくレベルは上がる。

 っていうか、いまのだと颯也にしか経験値いかないけど。


 そのあと、足長蟹を五匹倒して、ギルドに行ってから家に帰った。

「そういえば、マスター、マスターの使役のスキルって、何なんですか?」

「そういえば、そうだね。ペンダントが相性いいって言うからとったけど・・・」


 なので、スキル図鑑(私の部屋にある)で調べてみる。

「えっとね、奴隷とか、魔物を使役すると、その子が普通より強くなれるんだって」

「へえ。使役は、奴隷か魔物みたいですね」


 なるほど、人を使うと強く使える・・・、じゃあ、私には戦うなと?

「レベル上げれば、経験値も共有できるみたいです」

「そうなんだ。今3だから、120必要だよね・・・」


 今のスキルポイントは、45。ってことは、あと15レベル上げないとか・・・。

 レベル1で、使役が楽になる。

 レベル2で、使役が必ず成功する。

 レベル3で、使役したものの強化ができる。

 レベル4で、使役したものの経験値がもらえる。

 レベル5で、使役したものに経験値があげられる。


 やっぱりレベル5まで欲しいところだ。私は自分で戦っても強くないし。

 でも、その分奴隷が多いほうがいいんだろうなぁ・・・。

 となると、このままじゃ厳しいな。でも、たくさん奴隷っていうのも、ちょっと・・・。

 まあ、シルシィは楽しそうだけど。これでいいのか? 奴隷。


「ん? どうしたの?」

「いや、マスターのスキルの話です。うーん、マスターのレベル、徹底的に上げますか?」

「それもいいかもな。朱璃姉ちゃんは勇者だから、強いほうがいいよな」

「う、弱くてごめんね・・・」


 颯也とシルシィが顔を逸らした。やっぱ、弱いのはダメかな・・・。

 どっちにしろ、このままではダメだろう。レベル、上げるか。


「じゃあ、ドラゴン狩りに行きましょう。ソウヤくんも行きますか?」

「い、行く! ってか、シルシィ姉ちゃん、ドラゴン倒せるのか?」

「はい。ちょっと大変ですが、ソウヤくんがいればなんとかなると」


 ドラゴン狩り・・・。ちゃんと準備しておこう。シルシィには負けないよ・・・。

 あ、シルシィは私のスキルで強化されてるんだった。



 ここは最初にドラゴンと会った、スターリリィの草原を進んだところにある山の麓。

 森とはちょっと方角が違う。だから、出る魔物も全然違う。


「あれがドラゴン・・・。ってか、こんな簡単に倒していいのか? 生態系とか・・・」

「知らないですか? 魔物は、基本は魔力から生まれます。だから、またすぐに生まれますよ」

「そういうもんなのか・・・? まあいいや。シルシィ姉ちゃんが言うならそうなんだろ?」


 ドラゴンの色は、緑か。ちょっと竜っぽい。胴は細長くて、短めの手足がある。

「じゃあ、ソウヤくん、先にお願いします。私は後ろから攻撃するので」

「わ、わかった!」


 とは言いつつ怖がっている。あれ見ていきなり先制は厳しいかな。

 じゃあ、私が行こう。シルシィに目で合図すると、こくりと頷いてくれた。


「あ! 朱璃姉ちゃん!」

 私は鞭を持ってドラゴンに向かう。走りながら、タロットの隠蔽魔法を使う。私たち三人の姿は、ドラゴンに認識されないだろう。


 ヒュッと音がして、ドラゴンの肉が削ぎ落とされる。颯也がちょっと顔を顰めた。

 さすがに、攻撃したら気づかれる。でも、颯也とシルシィはまだ平気だ。私は急いで後ろに下がる。


「偉大なる炎の精よ。われの命に従いたまえ。世界を焼き尽くす赤い火を、我とともに呼び起こせ。『ヤールキィ・アゴーニ』!」

 シルシィが後ろから援護射撃をしてくれる。ドラゴンの意識は少しそちらに向いた。


 そこに颯也が大きな剣を持って走っていく。狙うは、首!

「チッ、貫通しなかった」

 ドラゴンの頭はまだ胴についている。しかも、すごい勢いで修復されている。


 私は一枚のタロットカードを取り出した。初期から使っている『弱火』が進化した最終形、『強火』!

 付ききっていなかった部分の傷口は焼いてしまった。これ以上は修復できない。


「颯也! 行って!」

「わかってるよ、朱璃姉ちゃん!」


 私は笛を吹いて大きな鳥を呼び出した。颯也を引っ掛けてドラゴンに向かって飛んでいく。

 ドラゴンの首の真上で、鳥は颯也を離した。

「火の精よ。我に力を貸したまえ。『スクロームヌィ・アゴーニ』!」

 シルシィが注意を逸らすように魔法を撃った。スクロームヌィでも、レベルの高いシルシィの魔法は強力だ。


 次の瞬間、ドラゴンの首は跳ね、大量の血を流して崩れ落ちた。

「うわ! 真っ赤だよ・・・」

「颯也! よくやってくれたね!」

 私は落下してくる、赤く染まった颯也を受け止めた。


「マスター! ソウヤくん! 大丈夫ですか?」

「ああ。強い魔物と戦うのは初めて見たけど、二人は強いな・・・」

「連携が上手いだけ。私はあんまり強くない」


 朱璃 14歳 ランクC パーティ『宝積』 パーティランクD

 レベル55 ダメージ930 マジックパワー870 スタミナ825 力630 魔法1100 守備610 速さ1350

 タロットカード入手可能 召喚成功率小UP タロットレベル3 短剣レベル2 ドロップ率UP 魔物使いレベル2 魔力レーダー 鞭レベル3 使役レベル4

 奴隷1 シルシィ

 スキルポイント30 振り分ける


 シルシィ 10歳 ランクC パーティ『宝積』 パーティランクD

 レベル67 ダメージ1550 マジックパワー1780 スタミナ1530 力990 

      魔法1880 守備940 速さ980 

 エルフ魔法レベル5 タロットレベル3 弓レベル2 魔力レーダー

 スキルポイント90 振り分ける


 颯也 9歳 ランクF パーティ―『宝積』 パーティランクD

 レベル35 ダメージ1000 マジックパワー500 スタミナ1200 力1000

      魔法300 守備1200 速さ500 

 剣レベル3

 スキルポイント135 振り分ける


「なんか、颯也強いね」

「そーか? 普通じゃねぇの?」


 レベルが上がるとパラメータの伸びの悪くなってくるようで、シルシィも割と差が出なくなってきてしまった。

 っていうか、パラメータだけ見れば私、颯也に抜かれているじゃない!


「朱璃姉ちゃん、随分低い・・・?」

「そう、兎獣人は弱いんだ。だから、手伝って欲しいんだ」

「そっか。仕方ないよね。手伝うよ!」


 いい子で助かった。それより、颯也のスキルを振らないと。

「スキル何とかしよっか。何上げたい?」

「そうだな・・・。獣人だし、武器がいいよね。姉ちゃん達とも相性いいし」


 そう言って、颯也は武器の欄を見始めた。武器も多いなぁ・・・。

「槍か、剣、だな。剣を上げて、槍か他の種類の剣を取るか」


 颯也 9歳 ランクF パーティ―『宝積』 パーティランクD

 レベル35 ダメージ1000 マジックパワー500 スタミナ1200 力1000

      魔法300 守備1200 速さ500 

 剣レベル4 槍レベル3 巨大剣レベル1

 スキルポイント50 振り分ける


「颯也のスキルは随分男の子らしい感じだね」

「姉ちゃんたちは魔法が多いもんな。それこそ、守ってくれるやつが欲しいよな」

「タンク職・・・。しばらくはこのまま何とかするよ」


 そんな話をしながら、ドラゴンを討伐したとギルドに連絡を取った。

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