深淵卿の夏休み編 本当にこいつで大丈夫か?
大変お待たせしました。先週末の時点で一万字くらい書けていたんですがキリが悪かったのでもう一週頂きました。なので今話は二万字ちょいです。なのに話自体はあまり進んでいないという……のんびり楽しんでいただけると嬉しいです。
ちょうど深淵卿と大嶽丸達が決闘を始めた頃合いのこと。
「うわぁああああっ、浩にぃの香ばしいセリフがまだ聞こえてくるぅ~~~~っ!!」
だぼっとしたライトグレーのオーバーオールとハンチング帽、リボンがあしらわれた白のシャツを着て黒縁の眼鏡をかけた女の子が、両手で耳を塞ぎながら全力で走っていた。
遠藤浩介の妹、真実だ。深淵卿の香ばしさに耐えきれず、目的地も定めず我武者羅に逃亡しているところである。
少なくとも、兄の共感性羞恥心直撃台詞というパッシブスキルの効果範囲からは脱出したくて。
人間の女の子が何やら一生懸命走っている様子に、周囲の妖怪達がギョッとしているのにも気が付いていない。
「真実さん! 一人は危険です!!」
という併走しているアジズ君の声にも。耳を塞いでイヤッイヤッしているもんだから。
そこまで聞きたくないのか、兄のセリフを。……いや、うん、そうだよね。俺も思い出すの嫌だし、妹ならそうなるよね……ごめんね、こんな兄ちゃんで……
と、この妹の姿を見れば某深淵卿の中の人が透き通った表情で言いそうだが、それはさておき。
(同人誌の即売会に遅れそうになった時もそうだけど……真実さん、意外に速いッ)
普段は、どちらかと言えばポテポテした足取りの真実である。見た目もお手本のような文学少女で、運動が得意そうにはまったく見えない。
だが、実は運動神経はかなり良い方なのだ。特に、趣味が関わると条件付きバフが自動でかかるのか、アジズも驚くくらいの速力を見せる。ついでに、狩人じみた目つきにもなる。
(しかも、無意識に妖怪や障害物を流れるように避けている!! 即売会のように! 即売会のように!)
まるで魔法のようだった。人がひしめき合う場所でスルスルッと歩みを進める真実の歩法は。なんならアジズがついていけなかったほどに。
その動きはまさに流水。達人の動き!
度々即売会に付き合わされるのは全然構わないのだが、人のすし詰め状態みたいな現場で、見かねた真実にはぐれないようにと終始手を繋がれるのは男として思うところが多々あったアジズ君である。
あと、戦場の如き即売会から生還した後、だいたい疲労困憊(なぜか悪魔との戦いより疲弊する)のアジズと異なり、真実が元気いっぱいなのも地味にショックだったりする。
鍛え直さねば!! と心に誓ったくらいには。
そんなわけで、今もスルスルッと小妖怪やまったく整備されていない地面を全速力で、しかも、ろくに地面も見ずに我武者羅に駆けている姿に、もはや尊敬すら感じてしまうアジズ君は思わず言っちゃう。
「流石は深淵卿の妹君っ」
「なんだとぉ!?」
耳を塞いでいたはずなのに本能で感じ取ったのか。妹的に大変よろしくない呼び名を。
ぎゅるんっとアジズの方へ真実の顔が向けられる。意識が別にいったせいか、足下にいた髭たっぷりの小人に気が付かず踏みつけちゃう。「アーーーッ!?」という悲鳴と、「にぃーーさぁーーーんっ」という悲鳴が聞こえた気がしたが、直ぐに「復活! わい、復活!」という声と歓声が上がったので、きっと大丈夫だろう。
と、そこで、
「はいはぁ~い、ちょっと落ち着きましょうねん?」
「むぎゅ!?」
「うっ!?」
シュンッと瞬間移動したとしか思えないタイミングで、進路上に筋肉の壁が出現した。
なんて見事なシックスッパック。キレてる! キレてるぅ! ワッフルかよ! と叫びたくなる腹筋に二人は受け止められた。
絶妙な弛緩による腹筋クッション。優れた筋肉の弾力と技により緩衝材と化したそれは、驚くほど優しい感触だった。
自分達を丸ごと抱き締める大樹の如きたくましい腕。見上げれば、そこにはこゆ~~い劇画タッチの世紀末覇者の如きお顔が。エアーズロックみたいな肩の向こう側には昇る朝日のように輝く美しい羽の先端が覗いている。
思わず硬直する真実とアジズ。
そんな二人に、筋肉の化身――ではなく、天樹の化身たる漢女神ブラウ・ニーベルは、優しさと慈愛に満ちた笑顔を浮べた。
「改めて自己紹介するわねん? あたしはブラウ・ニーベル。女神様から光栄にもこの世界を預かっている代理の女神よん。でも、本来はただの可愛い妖精さん♪ どうぞ遠慮せず、ブラウたん♪って呼んでねん?」
情報量が多い。この代理女神の筋肉密度くらい。
抱き締められたまま困った様子で顔を見合わせる真実とアジズ。
立ち直りは意外にも真実の方が早かった。だって、アジズ君の頬がたくましい筋肉に密着しているから。
ニチャァ~~~ッ。
アジズ君は光の速度でブラウから距離を取った。あくまで、そう、あくまで異世界の女神様に礼を失するわけにはいかないという常識的判断だ。断じて悪寒を感じたからではない! 断じて!!
反射的に聖水を取り出しかけた右腕をどうにか止めて、咳払いを一つ。
「大変失礼しました、妖精界の女神様。アジズ・スタインと申します。お目にかかれて光栄です」
胸に手を当て一礼するアジズ。
礼儀正しい挨拶だ。半袖でズボンも足にフィットしたタイプだが、どこか神父服を彷彿とさせる黒を基調としたファッションに、首からは立派な十字架(なぜか二つあるが)を下げているので、いかにも聖職者らしい。
それを見て、真実も慌てて居住まいを正した。ブラウから離れて深くお辞儀する。
「あ、わ、私は遠藤真実です! 初めまして! 兄がいつもお世話になってます!」
「ご挨拶ありがとうねん♪ でも、本当に畏まらないで? むしろ、礼を尽くすべきはあたしの方なのだからん♡」
くねくねとしなを作る筋肉の妖精さん。その視線がねっとりと(気のせい)アジズ君に向けられた。無意識に一歩後退っちゃう。
「わ、分かりました。では、ブラウさんと呼ばせていただきます。連れ戻しにきてくださったのですよね?」
自然と気圧される感覚をどうにか精神力で抑え込み、漢女神が追いかけてきた理由を確認する。
ブラウたん、ちょっと悲しそう。〝さん〟じゃなくて〝たん〟の方がかわいいのに……と言いたげ。
「あ、ブラウたん! ごめんなさい! 私、承諾も取らずに勝手に走り去っちゃって……」
人の家を勝手に歩き回ったような感覚だろうか。反射的な行動ではあったが、女神様にろくな挨拶もせず勝手な行動をしてしまったと自覚して、真実はぺこぺこと頭を下げた。
ブラウたん、ご機嫌顔だ。素直に〝たん〟付けで呼んでもらえて大変嬉しそう。
逆にアジズ君は戦慄半分感嘆半分といった様子で真実を見ている。異世界の女神相手に初手愛称呼びとか……流石は真実さん! 深淵卿の妹君ッ。尊敬します! と。
「気にしないでいいのよん! お兄さんがこわ~~いっ鬼達と戦うんですもの! 心配で見ていられないわよねん?」
違う、そうじゃない。と真実は言いたかった。でも直感が囁いた。たぶん、この微妙な羞恥心の機微は、この漢女神様には伝わらない気がすると。
大正解である。ブラウたんは〝深淵さん〟の大ファンだ。もちろん、〝魔神さん〟と〝勇者さん〟の大ファンでもある。そして、妖精界に厨二的羞恥心の概念はない。なんなら香ばしい存在の方が多い。
「お兄さんの戦いが終わるまで、あたしが案内させてもらうわね? ラナさん達にも了解はとってあるから、どうぞお好きなところを見ていってちょうだい♪」
「わっ、本当ですか! やったぁっ!!」
これでアビスゲートワールドの強制視聴を免れる! と喜ぶ真実ちゃん。
この世界を見て回れるのがよっぽど嬉しいのねん♪ 嬉しい! 案内、頑張っちゃう♪ と喜ぶ漢女神様。
そして、両者のすれ違いを正確に理解して微妙な表情になっちゃうアジズ君。
(確かに、浩介さんの戦闘モードでの言動には理解の及ばないことが多々ありますし、たまに、ちょっとどうなのかなぁと思う言動もありますが……基本的には格好いい……と思うんだけどなぁ……)
沈黙は金なり。アジズ君は賢明だった。
「ほら、みんな! 好奇心を刺激されるのは分かるけれど、大事な大事なお客様よん! そう取り囲まないでちょうだいな!」
「え? !? ひぇ!?」
今更気が付いたのか、いつの間にか大小様々な妖魔に囲まれていた。
四方八方、樹の根や地面の影、上空から人外共の眼が真実とアジズを見つめている。ギラギラと獲物を狙う眼に見えるのは、真実の気のせいだろうか。
深淵卿の妹であっても、別に人外と慣れ親しんでいるわけではない。卿と鬼が戦えば、その余波だけで消し飛んでしまいかねないが故に観戦も避けたような木っ端妖怪ばかりとはいえ、一般人の心胆を寒からしめるには十分。
ゾワッと悪寒が背筋に走り、今更ながら自分が迂闊な行動を取っていたことを自覚する。
ほとんど反射的にアジズの背に隠れた。ぎゅっと指先でアジズの服の裾を掴む。
「大丈夫ですよ、真実さん。女神様も仰られた通り俺達は客人です。虎の威を借るなんたらと日本語にあったと思いますが、深淵卿の身内に手を出す者はいないはずです」
「う、うん。そうだよね。ごめんね、ちょっとぞわわ~っとしちゃって」
「いえ、これだけの人外の気配に囲まれれば誰だってそうなりますから」
理屈では分かっていても、怖いものは怖いのだろう。真実がアジズの背から離れる様子はなかった。
一般人が妖怪化生の類いを見た時の当たり前の反応だ。情けないなんて思わない。むしろ、周囲には強者ばかりなので、アジズ的には当たり前の反応が見られて少しほっこりするくらいだ。自然と優しい表情になる。
「俺が傍にいます。こんな機会、滅多にあるものじゃありませんから楽しみましょう」
「でも……アジズ君は浩にぃの戦い、見たいんじゃない?」
「真実さんが最優先です」
そう言って真実に手を差し出すアジズ。即売会では手を繋がれて右へ左へ翻弄されるばかりだが、人外世界の観光なら立場は逆転する。だからか、むしろちょっと嬉しそうなアジズ君。
差し出された手に目をぱちくりっとした真実だが、直ぐに、そして同じように即売会の時のことを思い出したのだろう。くすっと笑みを零して、アジズの手に自分の手を重ねた。
「あらあらあらあらまぁまぁまぁまぁ~~~♡」
なんだろう。漢女神が普段より多めにくねくねしている。両手で頬を押さえ、まるで甘いお菓子でも頬張ったような表情だ。
「ブ、ブラウさん? どうされました?」
アジズ君は訝しんだ。なんなら、ちょっと引いた。
「んふっ♡ なんでもないのよん♪ そう言えば、アジズくん――アジズきゅんって呼んでも――」
「嫌です」
「え、い、いや?」
「あ、いえ、なんでもありません。どうぞ、お好きなように」
一瞬、真実の方から腐のオーラが伝わって来た気がして、つい反射的に拒否ってしまったが、よく考えると呼び方くらい特に問題ないので訂正する。
「やっぱりアジズくんと呼ばせてもらうわねん?」
「そう、ですか? ブラウさんがそれで良いのなら……」
普通に空気も読めれば心の機微にも聡い出来る妖精さん。それがブラウ・ニーベル。ニーベル一族の心には筋肉密度に等しい優しさが詰まっている。
「それじゃあアジズくん、ちょっと気になったのだけどねん?」
「はい?」
「どうして真実ちゃんを途中で止めなかったのかしらん? あ、責めてるわけじゃないのよん? アジズくんなら強引にでも止められたでしょうに、と思ってねん?」
如何に真実の運動神経が良かろうと、アジズを前にしては無意味だ。その気になれば腕を掴んで引き留めるなり、なんならブラウがそうしたように先回りして受け止めるなりできたはずだ。
なんとなく予想がついているのか、やたらとキラキラした瞳を向けてくるブラウに「なぜ、そんなことを?」と不思議そうにしながらも、「そう言えば……」と真実も不思議そうな表情で見てくるので答えるアジズ。
「女性の体に許可なく触れるわけにはいきません」
真実は耳を塞いでいたので許可も取れない。だから併走して一生懸命呼び掛けていた、ということらしい。
「それに、危険とは言いましたが、実際は先に言った理由から危険の程度は低い。仮に何かあっても真実さんは俺が命に替えても守りますし」
だから、〝紳士たれ〟を優先したらしい。それに真実は目を吊り上げた。
「いやいやいや、あのねぇ! アジズ君! いつも言ってるけど、私相手に気にしすぎ! アジズ君なら肩を叩くとか腕を取るとか、それくらいぜんっぜんいいってば!」
「いえ、しかし……」
「しかしじゃなぁ~~~い!」
はっきり言おう。アジズ君の真実に対する扱いは、完全に〝姫〟に対するそれだった。
元よりアジズは礼儀正しい。遠藤家の人々に接する際の言動は、尊敬する浩介の家族であること、ホームステイさせてもらうという点から特に。
社長の家に居候させてもらっている平社員みたいというか、なんというか。
しかし、半年近く一つ屋根の下で暮らしていれば、それも変わる。より心を開いてくれるようになったというか。ホームステイ当初よりずっと自然体で接することができるようになったというか。
一番の変化は、表情が随分と柔らかくなったことだろう。よく笑うようにもなってくれた。
だが、それに反比例するみたいに、真実への接し方だけは更に丁寧になってしまったのだ。
座ろうとすればサッと椅子を引いて座りやすいようエスコートしてくれたり。
荷物を持っていればササッと取って、代わりに持ったり。
ドアがあれば先に開けるなんて当たり前。
これを学校でもやるのである。それは真実も「やめろぉっ」と訴えるはずだ。普通にはずい。クラスメイトも当初は何事かと驚いていたし。
流石に、そういったことは学校では控えるようになったが、学校の外では今でもナチュラルにやっちゃう。
それどころかアジズ君、せっかくできた新しい友人達に遊びに誘われても、まず真実に許可を取りに行くのだ。そして、真実が真っ直ぐ家に帰らない場合は、真実の用事の方を優先するのである。真実が来なくていいと言っても。
というか、気が付けば真実の斜め後ろに控えている。もはやデフォルトの位置と言わんばかりに。
真実は一つの物事に夢中になると周りが見えなくなるタイプなのだが、それもあってか、特に気にした様子もなくマイペースに行動する真実と、その斜め後ろで微笑ましそうに目を細めながらどこまでもついていくアジズ君の姿は……
まさに、姫とナイト、あるいは執事のようで。
「編入してきた当初は、それで大変だったでしょ! アジズ君、格好いいし運動神経もいいし、というか強いし、勉強もできるし、紳士だし、ちょっとミステリアスだし、なのに流行とか遊びには疎いし、それを教えてあげたら素直に喜ぶし――って、なんじゃこのモテ属性てんこ盛り野郎はっ。そりゃモテるわ!」
「お、落ち着いて、真実さん。俺はそんな大層な人間では……」
「おまけに謙虚っ。いい加減にしろ!」
赤面しながらも困り顔でなだめるアジズ君。珍しく目が泳いでいる。唐突なベタ褒めに照れているのか。
しかし、アジズの内心などなんのその。真実ちゃんは特に気にした様子もなく地団駄を踏んでいる。
もちろん、畏れてくれた真実にニコニコだった木っ端妖怪達が「くっ、もう畏れがなくなったっ」「も、もう眼中にないだとぅ!?」と悲嘆に暮れ、漢女神が「堪らないわぁっ!! なんて美味しいの!? この空気ぃっ」と普段の十倍くねくねしている様子にも気が付かない。
「とにかく! アジズ君が私にばっかり構うから、惚れちゃった女子達がこぞって私のところに来たじゃない」
「あの時はすみませんでした。まさか、こんな俺に好意を寄せてくれる方があんなにいるとは……でも、もう大丈夫です。二度と真実さんの手を煩わせるようなことはしません」
「うん、ある時からぴったり止まったから逆にビビッったよ」
別に問題となるようなことは何もなかった。アジズ君はただ説得し、諭しただけだ。
そう、本物の聖職者がそうするように、恋心で暴走する乙女達一人一人に、丁寧かつ穏やかに言葉を尽くして。
ついでに、真実に恋愛感情があるわけではなく、ただ恩人の妹君であり、世話にもなっていて、だから大事な人なのだとも。
実際、アジズに恋愛感情はなかった。というより、恋愛感情がどういうものなのか分からなかった。その過酷な生い立ちは、それを理解する機会を与えなかったから。
「まぁ、私もアジズ君はそういう対象じゃないって伝えたら、みんな分かってくれたっぽいし、そこまで迷惑は被ってないんだけどさ」
「……はい」
「だって、アジズ君は浩にぃのお嫁さんになるんだもんね!」
「なりませんが!?」
「女の子と恋愛とか解釈違いにも程があるよ! まったく、どうしてそんな簡単なことが分からないのか。ねぇ?」
「本人に同意を求めないで――いえ、待って下さい。もしかして、それを彼女達に伝えて? 突然、告白を撤回したり、妙にねっとりした眼差しで応援していると言ってきた人達は……」
そういうことだろう。真実からグッとサムズアップが返ってきたし。
「なんてことだ」
本当にね。もっとも、それは極一部の素質がある子達だけで、大半はあれだ。
実の兄とホームステイ中の男の子で妄想し腐のオーラを撒き散らす真実にドン引きして手を引いた者が半分、「待って、こいつそういえば……ソウルシスター!?」「遠藤真実……って、幹部じゃない!?」「お姉様至上主義者よ!?」「早く逃げてぇ! 超逃げてぇ!!」「へ、へへっ、自分達ちょっと勘違いしちゃって……悪気はなかったっていうか……だから仲間は呼ばないでっ」「勘弁してくださいっ」と逃げた者が半分だ。
ソウルシスターズには手を出すな!
界隈では大変に有名な教訓である。
なので、アジズ君が何をしなくても真実相手に女の戦いを仕掛ける者は、まぁ、少なかっただろう。それこそアジズ君に本気の子以外は。
「あとね、これもいっつも言ってるけどぉ!」
「は、はい」
「〝命に替えても〟とか、さらっと言うのはやめろとあれほどっ。大げさ! 重い!」
「ですが、真実さんは俺にとってそれほど大事な人なので――」
「いや、あのね? 分かってるよ? アジズ君が私だけじゃなくてお父さんやお母さんのことも凄く大事にしてくれてるのは。私達だって、もうアジズ君のこと家族も同然だと思ってるし。でも、だからこそだよ」
本当に、この目の前のエクソシスト少年は遠藤家のためならあっさりと命を投げ出しかねない危うさがあるのだ。
元より、いつ死んでもおかしくない悪魔との戦いをしてきた少年だ。覚悟の決まり方が違う。命を懸けるという行為が自然とできてしまうくらいに。
「アジズ君に何かあったら、私は、私達は……二度と消えないくらいの深い傷を負うんだからね? アジズ君が! 私達を傷つけるんだよ!」
それでもいいの? と真っ直ぐに見つめられ、アジズは一瞬、呼吸を忘れた。
同じようなことで叱られたことはあるけれど、今ほど深く刺さったことはない。平和な日常の中ではなく、この魑魅魍魎の世界の中だからか。真実の言葉に含まれる熱量と真剣さが段違いだったからだろう。
魅入られたように真実の瞳を見返す。ああ……と思う。確かに兄妹だなぁと。
深く呼吸して、心を整えて、一拍。
「はい。真実さんに誓います。命を懸けても、替えはしません」
「う~~~んっ、まぁ、ひとまず良し!!」
本当は懸けてもほしくはないけれど、戦士として生きていた少年だし、きっと守る側の人でいたいのだろうということは分かる。
なので、真実はニッコリ笑って頷いた。
真実が笑ってくれたので、アジズもホッと一息。綻ぶような微笑を浮かべる。
……果たして、二人の視界には入っているのだろうか。
木っ端妖怪達が「はい、解散解散!」「ケッ、これだから人間はよぉ」とやさぐれた雰囲気で散っていく様子が。
そして、両手で顔を覆い、地面に転がって身悶えている漢女神の有様が。なんて綺麗なブリッジ。びくんっびくんっしていらっしゃる。
なぜ、とは敢えて言うまい。「あまずっぺ~~~っ」と口調が崩れるほど感情のこもった声が漏れ出していることから推して知るべし。
で、その野太い声が聞こえて、アジズ君はハッとした。
「ブ、ブラウさん? 大丈夫ですか!?」
「え? わっ、いったい何が!? なんでいきなりブリッジを!? なんかピクピクしてるし!?」
お前等のせいだよ、という声が解散中の妖怪達から聞こえてきそう。
「だ、大丈夫よん。心配しないで? ただの致命傷だから」
「致命傷!? 何者かの攻撃が!? 真実さん、俺から離れないで!」
「わ、分かった!」
真実の手を取り、自分の方へ引き寄せるアジズ君。戸惑いつつも素直に引き寄せられ、そのまま背にぴっとりとくっつくようにして隠れる真実ちゃん。
「ぐはっ!?」
「「ブラウさん!?」」
せっっかく立ち上がったのに、心臓を押さえて片膝を突いちゃう漢女神。お菓子作りが大好きな妖精さんは、甘酸っぱい空気も大好物。だって、この妖精界の誰よりも乙女だから!
まして、妖精界にはとんとない空気だ。この初々しい感じは! ほら、だいたい力で奪いに行く脳筋族ばかりだし。
「ち、違うのよん! ごめんなさいね、びっくりさせて! ちょっとした発作みたいなものだから! 今、落ち着くからねん?」
緊迫した様子の二人に誤魔化し笑いをしつつ、どうにか立ち上がって深呼吸代わりのダブルバイセップス! か~ら~の~~~~! モストマスキュラー!!
可愛い妖精さんたるニーベル一族が編み出した、最も心を落ち着かせる最高の手法だ。
「発作って、ブラウたん、何かの病気なんですか?」
真実が心配そうに尋ねる。
人の恋路に恋しているのよん♡ これもまた恋の病♪ と答えたいブラウさん。しかし、その冴え渡る直感と心の妖精さんが「まだよ。まだその段階ではないわ……」と囁くので言葉を呑み込む。
「いいえ、本当に心配しないで? あたしって、ほら、ちょっぴりぽっちゃりさんでしょう?」
「……ぽっちゃり?」
「アジズ君! シッ」
「だから時折、無性に運動したくなっちゃうのよん♪」
なんて苦しい言い訳。とても運動という感じではなかった。だって痙攣してたし。と思ったが空気を読める二人は何も言わなかった。
「それより二人に少し聞きたいのだけど……好きな人はいたりするのかしらん?」
見守れ~、この甘酸っぱい二人の関係を見守れ~~っ、余計な口を出すな~~っと己の乙女心へ言い聞かせていたのに、どうしても我慢できなくてちょっぴり探りを入れちゃう。
戸惑うか、苦笑でもして否定するか。でも、ほんのり脳裏に隣にいる人が浮かんで、あれ? となったりすれば……
なんなら無意識にお互いへ視線を向けちゃったりなんかしてもいいのよん!!
と、内心で興奮しまくりの漢女神様だったが。
「雫お姉様ですけど?」
「もちろん、オムニブスの皆や遠藤家の皆さんが好きですよ」
あまりにあっさりと、かつ平然と答えは返された。まったくもって至極当然といった様子だ。
どうやら、この二人、本当に自覚はないらしい。いや、真実の方は末っ子なのもあって本当に「弟分ができた! 大事にしなくちゃ!」的な、あくまで家族愛なのかもしれないが……
少なくとも、アジズ君の真実を見る目は他者に向けるそれとは明らかに違う。
それくらいホームステイを始めて学校にも通うようになったこの半年は、アジズにとって素敵な日々だったのだろう。
そして、その日々の中心にいたのは間違いなく真実だったに違いなく、アジズの生い立ちを知って真実なりに心を砕いてきたからこそ、アジズの気持ちも変わってきたに違いない。
その点は、遠藤家の皆さんは当然、ラナ達も気が付いているし、なんなら最近は同級生達ですら察し始めている。
なお、〝魂の義妹達〟の仲間、特に会長の天之河美月や例の後輩ちゃんなんかは、かなり早い段階でブラウと同じような反応をしていて、その結論も同じだったりする。
すなわち、この薄幸の美少年(生い立ちを知らない者も、アジズの雰囲気や言動の端々に苦労人の気配を感じ取っている)の無自覚な気持ち……守護らねば! である。
ちょっとだけ、相手が真実というのは、なんかちょっと納得し難いところがあるけれど、というかこの腐のオーラとお姉様至上主義を知っていて、なぜ真実なんだと思わなくもないけれど! と思っていたりもするが。
何はともあれ、せっかく仲間に訪れたアオハルよ! 余計なことはせず、少しずつ育んでいく様を見守るのよ! ああっ、尊い! めちゃきゅんきゅんするぅ!! という感じなのである。
「くっふぅっ。芽吹き始めの尊さよっ。たまんねぇなぁっ」
「ブ、ブラウさん、口調が……」
「ほ、本当に大丈夫ですか? 筋肉が脈打ってますけどっ」
ついつい力が入ってやっちゃうサイドチェスト! ぶわっと汗が噴き出し、一瞬で白い蒸気となって発散する。熱気で蜃気楼のように歪む周囲の景色も相まって、なんか言い知れぬ迫力がある。
少年少女は思わずビクッとなり後退りした。
「ふぅ~~、ありがとねん? 少し落ち着いたわん♪」
「そ、それは何よりです」
「女神業も大変なんだね……」
わけが分からないが、きっとストレス的なあれこれなんだろうと無理やり納得する二人。
気を取り直して、ブラウはピッと指をさした。アジズと真実が走ってきた方、つまり天樹の方を。
釣られるようにして振り返り、そこでようやく二人は気が付いた。自分達が転移してきた〝ゲート〟は、目の前の巨大な壁と見紛う、天辺も見えないほど勇壮な大樹の根元にあったのだと。
少し離れたこの場所から、これまた人間一人ならすっぽり包めそうな大きな葉を白銀に輝かせる天樹を見上げ、息を呑む。
その美しさに、雄大さに、世界の中心という相応しい威容に、圧倒される。
「なんだろう、なんていうか……凄いね」
「はい、凄いです」
語彙力を失って、魅入られたように天を仰ぐ二人。一応、〝世界樹の枝葉〟を見たことはあるのだ。二人共。
真実は〝箱庭〟の〝宝樹〟を。アジズは地球の〝王樹〟も。真実はファンタジーな世界を見たいと兄におねだりし、浩介がハジメから招待された際に同行する形で。アジズはクラウディアに同行する形で。
だが、なぜだろうか。感動はわずかにも薄れていなかった。まるで初めて見たかのように心が感嘆で満ち満ちている。
「ふふ、見惚れてくれて嬉しいわ。どうかしらん? せっかくだし、天樹の中の都を案内するというのは」
「天樹の中の都?」
真実が好奇心に瞳を輝かせつつも首を傾げる。
「そうよん。世界の中心にある都、最古にして最初の妖精郷――マグメル。妖魔みたいに怖い気配を発する子はいないから、この世界に慣れるのにもちょうど良いと思うわよん? ほら、あたしを見れば分かるでしょう?」
どこから見ても怖くない、可愛い妖精さんしかいないから! というブラウたんは、後ろで手を組み、少し腰を落とすポーズを取った。ボディビルで言うところのサイドトライセップス!!
なぜ筋肉を強調するポーズを取ったのかは分からない。異世界でも乙女の〝かわいい〟は千差万別なのかもしれない。
「せっかくだし見に行こっか? 外だといつ、浩にぃの分身が飛んでくるか分からないし」
「あはは……」
苦笑しつつもアジズ君にも異論はないらしい。
「うふふ、ちょうど歓迎の特製クッキーを焼いていたところなの! さぁ、こっちよん♪ ついてきてねん?」
モデル歩きで、ガッチガチに引き締まったケツをふりふりしつつ先導してくれるブラウたん。
アジズは如何にも周囲に気を配ってます的な雰囲気で見ないように、真実は「ほぅ……」と研究者のような目つきで凝視しながら後をついていった。
そうして。
ブラウのファンシーなお家でお菓子をご馳走になったり、可愛らしい妖精さん(本当にお伽噺の中の妖精さん!)を紹介してもらったり、都の名所を案内してもらったりしながら観光を楽しむことしばし。
「やだぁ♪ マナちゃんったら見識深すぎぃ~♪ もはや先生ぇ~」
「ブラウたんこそ乙女心わかりすぎぃ~♪ もはや女神ぃ~!」
すっかり意気投合して愛称で呼び合うどころか、謎にギャルみたいな口調になってしまうほど仲良くなったブラウと真実、そして、そんな二人の姿を微笑ましそうに定位置(真実の斜め後ろ)から眺めているアジズ君が、
「さて、すっかり話し込んじゃったけれど、外ではとっくに決闘も終わって宴会状態よん? そろそろ合流してはどうかしらん?」
「ああ、だからさっきから妖精さん達が慌ただしく料理を作っては運び出してたんだね!」
「ブラウさん、結果は……いえ、聞くまでもありませんね」
「ぬふんっ♡ もちろん、深淵さんの大勝利よん♪」
なんて会話をしつつ、ブラウの先導に従って都の出入り口付近へ戻ってきた、その時だった。
「あらん?」
ブラウが急に足を止めた。何やら目を丸くしている。その理由は、出入り口付近の壁に背を預けている一人の青年だった。
「ブラウたん? どうし――え? 人? アジズ君! 私達以外にも人がいるよ!」
「……いえ、真実さん。彼も妖魔だと思います。確かに勘違いするのも分かりますが」
その青年は酷く浮いていた。このファンタジーな都に不似合いだった。
何せ、スーツ姿なのである。銀縁の眼鏡もつけている。
一見するとインテリ系のイケメンエリートサラリーマン……みたいな感じだが、その身に纏う空気は凄まじく暴力的。眼鏡の奥の眼光も実に鋭い。
中分の黒髪を酷く不機嫌そうに掻き上げながら、くわえタバコを吹かしている姿も相まって、一見するとヤ○ザの若頭といった様子。
どう見ても堅気じゃない。下手に近づけば問答無用にぶん殴られる……そんな危険な雰囲気を感じる青年だった。
「チッ、さっさと殺せばいいものを」
独り言も物騒だった! 人は見かけによらないよ? 人を見かけで判断しちゃいけません! なんて言葉に真っ向から砂をかけるような見た目まんまの物騒さだった!
アジズ君、ススッと真実の前に出る。その背に隠すように。
アジズ君、あの人……シッ、真実さんは見ちゃいけません! みたいな感じで背に隠す。
「お頭が認めた男ともあろう者がなんと甘っちょろい。期待外れもいいところです」
盛大な溜息と一緒に紫煙を吐き出す青年。
「ちょっとちょっと! ここをどこだと思ってるのん! 物騒な気配を出さないでちょうだい! 妖精さん達が恐がっちゃうじゃない!」
「あぁ?」
メッと叱るように口を開いたブラウ。青年が目を眇めながら、ようやくこちらに意識を向ける。
漢女神を見て露骨に嫌なそうな顔をし、次いで、その傍らのアジズに目を向けたかと思えば路傍の石でも見たような様子で直ぐに興味を失い……
そして、その肩越しにひょこっと顔を覗かせた真実と目が合って――
その瞬間、誰もが幻視した。
「はぅあっっ!!?」
青年に落雷が落ちたのを。ピシャッ~~ッと。なんならギャグ漫画みたいに目玉が飛び出すような姿も幻視できた。
少女漫画の登場人物みたいなイケメン青年が、唐突にギャグ時空に飛ばされたようなギャップが凄まじい。
「ちょ、ちょっと? 大丈夫かしらん?」
胸元を押さえ、よろける青年。タバコもぽとりっと。
一瞬前までの物騒な気配が瞬く間に霧散した。不機嫌な顔は奇跡でも目の当たりにしたかのような驚愕に彩られ、かと思えば直ぐに赤く染まっていく。
しんっとした空気が漂った。
何事かと顔を見合わせる真実とアジズ。そして、自分の胸元を見下ろして目を見開くブラウ・ニーベル。
「え、待ってちょうだい? あたしの乙女センサーがビンビンッに反応している?」
脈打つ大胸筋が、端的に事実を示していた。何を言ってるのか分からないと思うが、筋肉の妖精とはそういうものだとご理解いただきたい。
時に人の心を読み、未来すら予知する筋肉センサーの感度は今日もすこぶる付きで良好だということは、直ぐに証明された。
青年の硬直が解ける。深呼吸を一回。姿勢を正し、緩めていたネクタイをキュキュッと締め直し、眼鏡をクイッ。無造作に垂らしていた髪を両手で掻き上げるようにして整え、タバコに青白い炎を放って消し炭に。
準備万端。そんな雰囲気のまま、ズンズンッとこちらへ、否、真実を真っ直ぐに見つめながら歩み寄ってきた!
「え、え? なに? なんかあの人、私のこと見てない!?」
「……真実さん、俺の後ろから出ないでくださいね」
動揺する真実と、先程までの物騒な雰囲気はないが故に過剰な警戒は敵意を煽るだけかとも思い、少し困惑気味で身構えるアジズ。
そして、なぜか瞳をキラキラ輝かせながら、スッと脇に退くブラウさん。
やがて、二人の前にやって来た青年は、やっぱり真実だけをジッと見つめながら、緊張の面持ちの真実に驚くほど優しい声音で口を開いた。
「愛らしいお嬢さん。どうか私に、貴女の名をお聞かせ願えませんか?」
口調も実に丁寧かつ紳士的。今は表情も柔らかい。完璧な眼鏡イケメンぶりだった。
「遠藤真実です、けど……?」
「えんどう……? もしや、お嬢さんは遠藤浩介のお身内で?」
「あ、はい。妹です」
「なんということだ。これはもはや天の配剤。運命です」
青年は天を仰いだ。片手で額を押さえ、感慨深そうに深い呼吸をする。何をしても絵になるイケメンだった。
「自己紹介させてください。私の名は……いえ、真名は返事を頂いてからにしましょう。それにこちらの名の方が、私が何者か分かりやすいでしょうから」
困惑している真実を再び見やった青年は胸元に手を添え、恭しく一礼し、その名を、伝承に語られるあまりにも有名な名を口にした。
「私は〝茨木童子〟。貴女の兄君を見初めた酒呑童子の右腕を務めさせていただいている〝鬼〟です」
明らかになった青年の正体に、そのビッグネームに、真実は目を丸くした。サブカルチャーにどっぷりな真実である。知らないはずもない。
もちろん、酒呑童子の伝承をしっかり調べていたアジズも例外ではなく、だからこそ目を丸くしてしまう。
当然だろう。深淵卿VS鬼軍団の決闘が始まる前の名乗りで、他の四天王の姿は認知した。実に鬼らしい姿だった。茨木童子が名乗っていた覚えは確かにないが、伝承の副官も同じだと思い込むのも無理はない。
だが、こんなスーツ姿の青年があの中にいれば見逃すはずもなく、つまり、彼は決闘に参加していなかったということ。
酒呑童子の副官が。
酒呑童子を巡る戦いに、だ。
宴会にすら参加せず、こんなところで何をしている? 何が目的で真実さんに近づいた?
アジズの警戒心が一気に膨れ上がる。
だが、そんなアジズの様子など一顧だにせず、それどころか目の前にいるのに認識しているかどうかも怪しい様子で、茨木童子はその背後の真実だけを一心に見つめながら問うた。
「まなみ……とお呼びしても?」
「は、はい。緋月お姉様の副官さんなら好きに呼んでもらって構わないですけど」
なお、〝お姉様〟呼びは緋月のリクエストである。
「ふふ、ありがとうございます。これはお頭に感謝しないといけませんね。それはそれとして、素敵な響きの名です。どういった字を?」
「〝しんじつ〟と書いて〝まなみ〟です、けど……?」
「なんと! 名まで美しいとは……魅力に溢れた貴女に相応しい名ですね」
本気で感動したような笑みを浮べる茨木童子に、真実はドキドキするよりも普通に困惑した。いったいどういう状況なのかさっぱり分からん! なんでこんなにお世辞を言われまくってるの? みたいな雰囲気。
一方、アジズ君の表情は実に複雑化した。その感想には心から賛同する。けど、なんか気にくわない……なぜだろう? みたいな様子だ。
もちろん、ブラウたんは「あ~~んっ♪」と野太い声を上げて身悶えている。
その間にも茨木童子は蕩けるような笑みを浮べて、片膝を突いた。
その瞳は熱に潤み、多くの女性が腰砕けになりそうな甘さが滲み出ている。
ここまでくれば流石に真実も察した。「え? うそ……まさか、そういうこと!? え? なんで私!? だって私だよ!? このお兄さん、目が腐ってない!?」と自虐気味に目を白黒。
一瞬、「あ、でも、この状況……客観的に見ると私じゃなくてアジズ君に傅くインテリイケメンの図じゃ……ぐへっ、じゅるりっ……」となるも、「って違う違う! もし勘違いじゃなかったら流石に失礼! しっかりしろ私!」と己に喝を入れる。
茨木童子の眼中にアジズ君がいないが故の悲劇……を悲劇にしない良識と常識は、まだ真実にもあった。いや、腐道を極めんとする求道者を自認するからこそ、〝想い〟をないがしろにはしないと心掛けているが故か。
ともあれ、アジズの背に隠れることをやめて横に立った真実。茨木童子も、真実の心遣いを察したようで嬉しそうに破顔する。
アジズ君、高速で真実と茨木童子を交互に見やる。え、なんだ? いったい何が起きている? 無性にざわざわするんだが! みたいな表情で。
「回りくどいのは好みではありません。なので、突然のことに驚かれるでしょうが、端的にお伝えします。――一目見て、貴女が欲しくなった。どうか、私のものになっていただきたい」
「お、おう……めちゃストレート……」
言葉遣いは紳士的なのに、やっぱり滲み出るアウトローの気配。
イケメン青年の愛の告白だ。普通なら赤面の一つもしそうなものだが、真実は少し引いてしまった様子だ。
未だかつて異性から告白なんてされたことのない真実である。まして、ここは異世界で、相手は人外。突然のことすぎて、未だに現実感がないというのが正直なところ。時間が経って冷静になれば浮き足立つのかもしれないが、今は困惑が勝る。
あるいは別の理由からときめかなったか……?
「アジズ君……?」
アジズがスッと二人の間に割り込んだ。茨木童子の視界から真実が消える。代わりに、アジズと目が合う。己を見下ろす冷たい目と。
まるで初めてアジズの存在に気が付いたように目を眇める茨木童子。
「なんのつもりです? 小僧」
「真実さんはお前のものにはならない。手を引け、妖魔」
バチバチッと火花が散った気がした。お互いに、お互いが〝敵〟であると認識したみたいに。
茨木童子が立ち上がる。アジズより背が高いので、自然と立場が逆転する。冷たい目がアジズを見下ろした。濃密な妖気が溢れ出る。凄まじい威圧感だ。
だが、アジズは怯まない。命懸けの修羅場なら何度も潜ってきたのだ。この程度、歴戦のエクソシストにとってはそよ風に等しい。
茨木童子の目の色が少し変わる。「ほぅ?」と感心するような、アジズ自身に少しばかり興味が湧いたような声音が漏れ出る。
「小僧、貴様はいったい真実のなんなのですか?」
「護衛だ」
「護衛……? フッ、なるほど。では、敢えて言いましょう。分不相応という言葉をご存じで?」
「問答する気はない。手を引けと言った。妖魔」
一歩詰め寄るアジズ。普段にない強い口調は悪魔に対するそれ。しかし、相手に悪意がないと分かっている現状では、大変に珍しい強硬な態度だ。
それが、どういう心情から発露したものか、アジズ自身も分かっていない。
ただ今は、人外が真実に手を出そうとしているのだから守るのは当然と、そう己に言い聞かせて心を定める。
ほとんど真下から睨め上げるような形になった。アジズと青年が至近距離で睨み合う。まるで格闘技の試合前の会見で選手達がするように。
分かっている。分かっているのだ。
ちゃんと向き合うべきだ。〝想い〟をないがしろにしてはいけない。少なくとも、なんらかの答えを返すべきだ。
分かっている。
けれど、ああ、けれど! こんなの我慢ならんよね!! 誰だってね!
「ち、ちかっ。ちょっ、そんなえっちすぎでしょ!? こんな往来で人目もはばからずなんて! 何を考えてるのありがとうございます!!」
感情は、時に理性を超えるものだけれど、本当に何を考えているんだろうね? この状況で、感謝の涙を流しながら地面に正座して、神でも目撃したみたいに拝み出したこの子は……
と、身悶えまくっていたブラウさんは、ちょっとだけスンッとなったのだった。
「で、肝心のマナちゃんは光る板に絵を描き始めたかと思えば、こちらの呼び掛けに一切反応しなくなって、二人もどんどん剣呑な雰囲気になっていくものだからね?」
「俺達を呼んだと……」
「いえ? 喧嘩になっても今のあたしなら止められるからそこは問題ではないのだけど、単純に深淵さん達に見てほしくて!! こんな熱々展開そうないじゃない! あたし、もうテンション上がっちゃって♪」
「さいですか」
ブラウの回想&事情説明があらかた終わり、少し呆れ気味に改めて前方を見やる浩介。ラナ達もブラウと同じく瞳をキラキラさせて視線を向ける。
「ハッハッハッハッ、中々どうして悪くないじゃありませんか、小僧!」
「チッ、余裕の表情で何を!!」
青年とアジズ君が戦っていた。ブラウが展開したドーム状の結界の中で。
浩介達が来たことにも気が付いていない様子で睨み合っていた二人は、ブラウが事情説明を始める直前あたりで戦い始めたのだ。
先に手を出したのは青年の方だった。浩介達が「あっ」と思う間もなく、ハエを払うような自然さで腕を薙いだのだ。にもかかわらず、その勢いはまるで棍棒のフルスイングの如く。
常人ならアメフト選手の全力タックルを受けたような勢いで吹き飛ばされたことだろう。
だが、アジズもまた歴戦の戦士だった。最低限の動きで剛腕をかわし、更には一瞬で取り出した神器――ヴァイオリンケースくらいの大きさで、中心部に持ち手がある十字架の長い方の先端を青年の顔面に突きつけた。
一瞬、交差する両者の視線。
青年はニィッと愉しそうに嗤い、アジズの目はスゥッと冷徹に細められ――ファイッ!! 真実を巡る男同士の決闘は、そうして暗黙の了解のうちに始まったのである。
本来なら直ぐに止めるべきなのだろうが……
「お、お~~い! アジズく~~ん! 茨木童子さ~~ん!! ちょっと激しすぎというか、そろそろ争うのやめませんか~~?」
「いいえ! こいつは危険です! 真実さんは浩介さん達のもとへ!」
「ハーハッハッ!! 愛しのお嬢さん、それは無粋というものですよ!」
「そもそも私は雫お姉様一筋なので茨木童子さんの気持ちには応えられないですしぃ~~っ」
「主よ! 敬虔なる信徒に力を!! 悪しきを挫く光をお与えくださいッ!!」
「異国の祓い師でしたか!? 私の妖気にも十分に……いえ、驚くほど効いているっ。滾らせてくれますね!」
「ダメだこいつら聞いてねぇ……」
正気に(?)戻った真実が一生懸命呼び掛けているが、二人に止まる気配はなく。
それどころか、アジズは容赦なく急所を狙い、茨木童子は人体を容易くミンチに出来るだろう威力の拳を繰り出すという、ただでさえ殺意高めの戦いが刻一刻と激しさを増していく。
これには真実の目元もピクピクしちゃう。
そして、
「ブラウたん! 浩にぃ! 止めてよぉ~」
と、お願いしてみるも、
「あらあら、真実ちゃん、ダメよ! これは男同士の戦いなんだから!」
「まぁまぁいいじゃない、マナちゃん。まだ大丈夫よん♪」
なんてニコニコ顔のラナとブラウを皮切りに、
「ふふ、やはりここは例のセリフを言うところでは? 私のために争わないでっと!」
「良いではありんせんか? わっちの右腕が、そうとは知らず愛しの君の妹君に心奪われる……むしろ運命的で素敵だとは思いんせんか? 同じ女を想い合う者同士、存分にやらせてやっておくんなまし♪」
「流石はこうすけの妹ね。真実もモテモテだわ!」
ヴァネッサも、そして緋月とエミリーもニコニコ顔で断る始末。
浩介も苦笑しつつ手を出す気配はなし。アジズの心情が分かるからだろう。
両親共々、妹の行く末を案じている兄であるから、アジズの無自覚な想いを察した時にはラナ達と手を叩いて喜んだくらいだ。むしろアジズが義弟になってくれるのは望むところだと。
とはいえ、相手は真実なのである。腐道の探求者にしてお姉様至上主義者である。ある意味で恋愛的には難攻不落の女の子だ。
アジズの想いが無自覚なままでは少々分が悪いと言わざるを得ない。二人が一歩先に進んだ関係に至るには、きっとアジズの自覚が絶対的に必要なのだ。
なので、不意に現れたライバルは、ある意味で絶好の機会。これで自分の気持ちに気が付いてくれれば……と、瞳を輝かせて止めないよう目配せしてくるクラウディアにも賛同しちゃうわけだ。
「もぉ! そんなんじゃないってば! そもそもアジズ君は浩にぃ一筋だと何度言えばっ!!」
「アジズが泣くぞ、愚妹」
兄の苦言だけは都合良くスルーしちゃう真実ちゃん。いずれにしろ、アジズ君の心情に配慮するからこそお姉様方は、まだ止めに入らない。
「クラウディア・バレンバーグ。遠藤真実はこう言ってるが、実際、お前の弟はどうなんだ?」
ラナ達と違って遠藤家の真実とアジズの関係まで特に気にしていなかったが故に大して知らなかった朱さんが、興味深そうにクラウディアの耳元に寄って小声で尋ねる。
「さぁ? どうでしょうね? 私はお姉さんですから、弟の気持ちを勝手に暴露したりはしないのですよ。本人ですら気が付いていないことなのですから」
と言いつつも、クラウディアはニッコニコの笑顔で補足した。
「ただ、アジズがホームステイ中の話をしてくれる時は、だいたい決まって一人の女の子の話ばかりになるのですよ。それも、本当に楽しそうに」
「ふん。それは答えているようなものではないか」
しかし、そうするとエクソシスト側から二人も帰還者側への身内が……くっ、また本国からの圧力が強くなるなっ。おのれ、アビスゲートめっ。
なぜかキッと浩介を睨む朱さんはさておき。
「くそっ、なんて頑丈な奴だっ」
「くくくっ、大変結構。良い動きです。歳不相応に随分と修羅場を潜ってきたようで感心しますよ。ですが、私を負かすには絶対的に火力が足りない」
アジズの神器は一級品だ。ある意味中途半端な大きさの十字架は取り回しこそ悪いが、言わばクラウディアの〝聖十字架〟の下位互換のような性能を持っている。
〝聖十字架〟のような絶対的な力はないが、地に立てて結界を張ることも、十字架の先端から魔力弾を放つこともできるのだ。
威力は詠唱の長さに比例し、単音でも下級の悪魔程度なら一撃で木っ端微塵にできる威力がある。今はとある理由から魔力がある限り念じるだけで最大威力でも放てるので、たとえ上級悪魔でも無視し得ない力を発揮できるのだが……
茨木童子は意に介した様子すらなかった。流石は伝説の鬼。どんなに細身に見えても、素の肉体強度が常軌を逸している。
そして、逆に茨木童子の剛腕は一撃一撃が必殺クラスだった。それでもまだ明らかに手を抜いている。アジズがどこまで出来るか、楽しんでいるようだ。
「さぁ、どうします! 守り手よ! 悪い鬼に姫をさらわれますよ!」
眼鏡をクイッ、牙を剥き出しにして嗤う茨木童子。絶望を誘うようにギアを上げる。ついに妖気が噴き上がった。それだけで地面に亀裂が入る。
もはや最低限の回避では間に合わないだろう。余波だけで肉を抉り骨を砕くに違いない。
「ね、ねぇ、こうすけ。流石にちょっとヤバいんじゃない? そろそろ止めた方が……」
鬼気に肌が粟立ったのか。エミリーが腕をさすりながら浩介を見やる。
一人、冷徹とさえ言える目でジッと戦いを見つめていた陽晴も同意見なのだろう。「もはや喧嘩の域ではありませんね。危険すぎます」と、浩介が何か言う前に刀印を作った。
浩介も同意見だ。鬼は興が乗れば簡単に一線を越えるものだと、先の決闘からも嫌というほど理解している。
が、浩介や陽晴が、あるいはブラウが何かする前に、
「妖魔にとって妖気は武器だ。抜いたからには恨むなよ、鬼」
アジズ君の目がガン決まっている! 喧嘩の領域に収めていたのは自分も同じだと言わんばかりに。対抗心バリバリだ!
胸元に下げたもう一つの十字架を握り締め、「主よ、我に力を」と祈りを捧げる。
直後だった。握り締めた十字架がチェーンから外れ、一気に巨大化したのは。
一瞬でヴァイオリンケース程もある十字架が出現した絡繰りはこういうことだったのだ。胸元に下げていた二つの十字架こそがアジズ君の新たな神器だったのである。
そして、このかつて大悪魔と戦い殉教した偉大なエクソシストの相棒であり、その戦いで半壊してしまったことでずっと保管されていた二つの十字架は、修復の過程で神器であって神器ではない別物に魔改造されたが故に。
「起動しろ――ツインクロー」
「ふぁ!?」
声を上げたのはヴァネッサだった。
だって知っていたから!
両手に持たれた十字架が変形する。縦に分割され、間にトリガーのついたグリップ部分が出現。割れた十字架の間に腕を入れてグリップを掴むような形になる。
そして、十字架の両端には前後方向に向いた銃身が顔を覗かせた。
二つをクロスさせるように構えるアジズ君。前後左右同時射撃が可能な構えだ。
「ナンデ!? ナンデここに〝ダブルフ○ング〟が!? かっこいいっ」
そう、それは某砂漠の星でドンパチする漫画にて牧師兄貴の弟分が使っていた銃火器である。もちろん、魔改造者が誰かは言うまでもない。
神器に興味があって、かつオムニブス側からも神器の修復や改良の依頼を受けていたこともあって保管庫を見せてもらった時の、この神器のデザインと魔弾機能を知ったハジメのテンションの上がりぶりは推して知るべしである。
何せ、某漫画はハジメさんのバイブルでもあるからして。
それはもう嬉々として魔改造した。ついでに、使用者にはアジズを指名したりもした。遠藤家の護衛も担っている少年であり、浩介の弟分であり、元々短剣使いなのもあって器用さは抜群だったから。
力が欲しいか? 大切な者を守れる力が……欲しいか!
いつもの手口である。
もちろん、アジズ君は嬉々として受け取った。果たして、アジズ君が口にした「主よ、我に力を」とは、いったい誰のことを指していたのか……
「鬼の愛は〝食らうこと〟と聞いている。真実さんに手は出させない!!」
「ハッ、己の心も分からない未熟者が。止められるものならやってみなさい!!」
直後、凄まじい炸裂音が轟いた。火薬マシマシの徹甲弾だろうか。ガードした茨木童子の腕の肉がスーツの袖と一緒に弾け飛ぶ。とはいえ、まだ表面の皮と肉程度らしい。
「これではまだ温い!!」
凄惨に嗤う鬼が、そこにいた。と、その次の瞬間、爆音と衝撃波が迸った。茨木童子の足が地面を削るようにして後退している。
「炸裂弾でもこの程度か。なら、本来の機能と併用して威力を上げるまでだ」
魔力弾を物理弾の炸薬の威力に合わせて放つことで、弾丸の威力を加速度的に上げていくアジズ。聖句による妖気の削ぎ落としも実行。
対して、茨木童子も更に妖気を練り上げ防御力を上げ、更に円錐状に圧し固めた妖気をお返しとばかりに撃ち返す。
激しさを増す戦いの中、クラウディアが指をさしながら浩介を見やった。
「浩介様……私、あれ知らないのですけど。確かにマスケット銃のような神器もありますが、あんなフルオートライフルみたいな神器、いえ、既に現代兵器ですけれど、どこから……ああ、いえ、言うまでもないですね……」
「うん。お察しの通りだよ」
うちの弟、戦場を離れて平和に学生をしていたはずでは? いつの間に物理兵器で武装していたのです? と、クラウディアお姉ちゃんはなんとも言えない眼差しを弟に送っちゃう。
そんなクラウディアに、ラナは小首を傾げて衝撃的な事実を口にした。
「あら、クレアちゃん。知らなかった? 貴女のところの長官さん、ボスと兵器取引してたわよ?」
「え!?」
「ライフルやピストルはもちろん携行ミサイルにロケット、あとは強化外骨格? 兵器の見本市みたいな有様で壮観だったわよ?」
「魔神様が武器商人に!?」
「取引場所が教会の地下だから凄くシュールというか、闇取引みたいな感じでちょっとワクワクしたわね! 長官さんも顔を隠してたし」
「それ絶対に猊下や枢機卿の許可取ってないやつですよね!? そもそも聖女である私が知らないのがおかしいですし!」
「しかもボスったら、その運搬を悪魔にやらせていてね……」
「自分達を殺す兵器を、自分達を絶対殺すマンのもとに!? あの人、鬼畜すぎでは!?」
「流石はボスよね! 取引される兵器を見つめる悪魔達の表情と言ったら! 真顔でガタガタ震えてるのよ! あははっ」
「今のどこに笑うところがあったのです!?」
バッと浩介を見やるクラウディア。浩介はバッと視線を逸らした。どうやら知っていたらしい。なんらかの任務の流れから、きっとたまたま同席することになったのだろう。
「まぁまぁ、落ちついてください。こういう時代です。保安局の強襲課にも、対人外用の兵器や弾薬の類いは卸していただいていますので」
「……話には聞いていますよ。対応課にも支給されているそうです。氣力だけを霧散させるような無力化兵器の類いが中心だと伺っていますけれど」
ヴァネッサと陽晴も苦笑気味に頷く。余計に引き攣るクラウディア。なぜ、自分だけ知らなかったのか。
保安局や対応課など超自然的な力を持たない組織では対人外武器が必要なのも分かるが、オムニブスには神器がある。しかも、ハジメに修復や改良された強力なものが。
にもかかわらず、兵器取引をしているということは……やっぱりあれだ。ダイム長官、たぶん上に兵器取引を打診して断られ、でも諦められず独断で取引したに違いない。
だって、悪魔絶対殺すマンだし。殺す手段なんてなんぼあってもいいですからね、くらいのノリで。
世界的宗教の総本山の地下に、日夜平和を訴える教皇猊下の足下に、大量の兵器が保管されているなんて万が一にでも外に知られたら……
「ラナさん、いえ、皆さん! 他言無用でお願いするのですよ!!」
言うまでもない。と、必死な様子の聖女様に浩介達は苦笑しつつも頷いたのだった。
そうして、
「ね、ねぇ! のんびり話してないでそろそろ本当に止めてよぉ! 茨木童子さん、なんか角が生えて目も白黒反転してるし……アジズ君もでっかい十字架出してきたんだけど!? あれ巨大十字架型重火器じゃない!? あ、ロケット弾撃った!?」
なんて真実の声に、おっとこれは流石に……と、慌てて止めに入ったのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
感想・意見・誤字脱字報告もありがとうございます。
ジークアクス見ました。感想欄の忠告の意味が分かった。情報量半端ねぇ。白米、いったい何度宇宙猫になったことか。あとジークアクスさんの手の動きに何度「お、おぅ…」となったことか。
ともあれ、見終わった後も色々考えるのが楽しい作品でした! ファーストから見直したい欲求がめちゃ高まってる。
※ネタ紹介
・復活! わい復活!
『刃牙』の烈海王より。
・ダブルファング/パニッシャー
『トライガン・マキシマム』のリヴィオの武器と、ニコラス・D・ウルフウッドの武器。十字架形の兵器で、変形して銃火器になる。これほどのロマンがあるだろうか? 否、ないッ。トライガンは白米のバイブル。ニコ兄こそ真の兄貴。アジズ君の気質はリヴィオだが、是非ともパニッシャーも使いこなしてもらいたい。と魔神が言っている。