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ありふれた職業で世界最強 作者:厨二好き/白米良

ありふれたアフターストーリーⅡ

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ありふれたアフターⅡ ありふれた学生生活③

ただいま戻りました。
これからいつも通り土曜の18時を基本に、ぼちぼちとありふれたお話を投稿させていただきます。
白米が楽しむためにやっているような物語ですが、また一緒に楽しんでもらえると嬉しいです。

前話の修学旅行のお話、意外にも続きを求めてくださる声が多かったので、ちょいと書いてみました。
とはいえ、それほど続ける話でもないので、(というか、時系列とかも全然考えてない話)割と適当感あります(汗
またどこかでちゃんと書ければなぁと。
なお、出てくるクトゥルフ用語やルールは実際のものと違います。ノリ重視です。ごめんなさい。

長くなったので分割しました。
この後、19時にもう一話、投稿します。

 つい昨日、聞かされたばかりの修学旅行。

 行き先は京都だ。数時間続いたバスの旅も、もう間もなく終わり。

 用意しておいた道中の暇つぶし企画を出し尽くし、引き攣り笑いのし過ぎで頬の筋肉が痙攣し始めていた新人バスガイドさんは、心の底からホッとしていた。

 生徒達のノリが良かったのは助かった。割と、最近の学生は冷めているというか、カラオケやらクイズやら用意しても応えてくれなかったりするのだが、生徒達(特に中野と斎藤)は実に盛り上がってくれた。

 ちょくちょく常識からかけ離れた言動が見られたものの、見ざる聞かざるを貫けば割と耐えられる。同じく、見ざる聞かざるな運転手さんが、さりげなくフォロー(精神分析)してくれたのも大きい。

 なので、少し前から始まった生徒達の宴会芸(?)を見ても、また、今現在、面倒そうにしながらも〝世界衝撃映像〟に投稿されそうなレベルで無数のナイフをジャグリングしている女子生徒が直ぐ横にいても、新人バスガイドさんは耐えられるのだ!

――新人バスガイドさんのSAN値 50

「園部~。十本で終わりか? もっといけるんじゃねぇの?」

 玉井淳史が、拍子抜けしたような様子でそんなことを言う。ナイフ十本のジャグリングでは満足できないらしい。

 新人バスガイドさんは思った。

 そもそもナイフ持ってる時点でアウトですから! 先生! あの子、ナイフ持ってますよ! それも大量に! どうして当たり前みたいな顔してるんですか!?

「まぁ、やろうと思えば三十本くらいいけるけど、天井低いから今は無理よ」
「園部さん、凄いですねぇ~」

 先生! 「凄いですねぇ~」じゃないですよ!? なんですか、そののほほ~んとした表情は! 可愛いなぁもうっ。けどね! 貴女の可愛い生徒さんが切れ味鋭い人生送ってるっぽいですよ! 指導をお願いします!

 新人バスガイドさんは心とツッコミを込めて、愛子を見つめる。届け、この言いしれぬ想い!

「??」

 愛子はこてんっと小首を傾げた。一拍おいて、何故かにへっと笑う。

 新人バスガイドさんは「くっそぉっ」と呟いた。伝わらない、でも可愛い――このままならぬ想い、どうしてくれようか……

 と、そこでぼそっとした小声が、新人バスガイドさんの耳を突いた。

「あと十分……」
「あ、はい」

 どうやって前方を確認しているのか、不安しか感じられない目深い帽子の被り方をしている運転手さん曰く、あと十分ほどで本日最初の観光地に到着するらしい。

 新人バスガイドさんはこほんっと小さく咳払いして気を取り直すと、いつの間にかトランプカードジャグリングに移行していた優花へ、席に戻るよう促した。

 上に飛ばすだけでなく、水平に飛ばして、かつブーメランのように戻ってくるトランプカード数十枚の、芸術的なジャグリング技に酔いしれていたいところではあったが、お仕事はきっちり果たさなければならない。

 拍手喝采が送られ、ちょっと照れているのか頬をうっすら染めながら席に戻る優花。

「園部さん、ありがとうございました。他の皆さんもすごい特技をお持ちですね。私、初めてですよ。こんなに凄い生徒さん達を見るのは」

 にっこりスマイル。内心では戦々恐々、吃驚(きっきょう)仰天、発狂寸前であっても、バスガイドたる者、笑顔を忘れてはいけない。表情筋の筋肉痛? どんとこいだ!

 斎藤と中野が反応する。

「今の〝私、初めてです〟のところもう一回!」
「心を込めて! ちょっと恥ずかしそうにお願いします!」

 なんてストレートなセクハラか。新人バスガイドさんの表情筋が悲鳴を上げる。

 取り敢えず、二人の額にはトランプカードがサクッと突き刺さった。「頭がっ、頭がぁっっ」と自席でのたうち回る阿呆二人。

「チッ、汚いわね」

 トランプカードに付着した血を、言葉通り、汚いものを扱うように斎藤の服の裾で拭き取る優花。その目は、気の弱い者なら腰が抜けそうなほど冷え切ってる。他の全女子生徒もだが。

「ガイドさん、すみません。この馬鹿二人は、クラスの女子できっちり締めておきますから」
「そ、その前に、ぴゅ~って、ぴゅ~~って血が噴き出してますけどっ。病院にっ」

 突然の流血沙汰。新人バスガイドさんオロオロ。

 そこで香織が溜息を吐きながらやって来た。彼女にしては珍しく冷えた眼差しで、大きな絆創膏をバチコンッと二人の額に叩き付ける。「ひぎぃ!?」と、はもり悲鳴を上げる斎藤と中野。ビックンビックン。

「もうっ、バスを血で汚しちゃだめでしょう! 中野君も斎藤君もはしゃぎすぎ!」

 メッと叱る香織に、新人バスガイドさんは思った。「違う、そうじゃない」と。

――新人バスガイドさんのSAN値 46

「う、うちの生徒がすみません! よく言っておきますので。本当にすみません!」

 小動物先生がペコペコと頭を下げる。おふざけの過ぎた生徒に代わって謝罪する姿は先生らしいと言えばらしいが、やはり流血沙汰そのものは気にしていないらしい。

――新人バスガイドさんのSAN値 43

 一瞬、大声で叫びながら窓をぶち破って逃げ出したい気持ちに襲われたが、そんなことをしては死んでしまうので辛うじて思い止まる。なにより、バスガイドとして、お客様を放り出していくわけにはいかない!

「え、え~と、皆さん、元気いっぱいですね! この後、もう十分ほどで本日最初の観光地、伏見稲荷大社に到着します。その後、しおりにあります通り、いくつかの観光地を巡って、本日のお宿の方へ向かうことになります」

 は~~い! と、これまた最近の学生には珍しいほど元気に返事をしてくれる生徒達に、新人バスガイドさんの傾きかけた精神が少し回復した。さりげなく見せる超常的な何かを除けば、むしろバスガイドとしては実にありがたいお客様だ。

 私、頑張れる! と意気込みながら、新人バスガイドさんは生徒達との距離を少し縮めるべく、個人情報の開示に踏み切ってみた。

「実を言いますと、私は京都の出身です。皆さんも耳にしたことがある名所としては、ここより北にあるくらま温泉や鞍馬寺などが近くにある場所なんですよ。そんなわけで、隠れた名所なども色々と知っていますので、遠慮なく聞いてくださいね」

 おぉ~と、取り敢えずノリで驚いてみる生徒達。なんというか、このクラスは一体感がすごいというか、本当に仲が良いように見える。

 〝帰還者〟ということで身構えていたし、実際、言動が常識から外れていることも多いのだが、決して忌避すべき対象とは思えなかった。

 慣れもあってか、新人バスガイドさんは少し肩の力が抜けた。精神力が回復していくような気がする。

「くらま温泉に鞍馬寺? 有名な場所なんですか~?」

 シアがぴょんっと手を上げて早速質問を投げかけた。

 他の生徒が疑問顔をしていないことから、確かに知名度はそれなり高いようではあるが、シアにとっては初ウサミミな名称だ。それはユエも同じようで、「んん?」と首を傾げている。

 見るからに外国人と分かる二人の容貌から、新人バスガイドさんは「知らないのも無理はない」と、にっこり微笑みつつ説明を加えた。

「自然に囲まれたとても素敵なお宿ですよ。特に、冬化粧をした木々に囲まれた冬の温泉がオススメです。鞍馬寺は京都でも有数のパワースポットとして知られています。天狗の総本山などと紹介されたりもしますね。細かい由来などは、ご興味があれば別の機会にさせていただきますが……」

 外国の子にも分かりやすく、それでいて興味がそそられるような言葉をチョイス。新人バスガイドさんは茶目っ気たっぷりに言った。

「遙か昔、〝魔王が降臨した〟なんて言い伝えもある、素敵な場所ですよ」

 生徒達の目が、一人残らず一斉に後部座席へと流れた。

「あ、あれ? 皆さん? ど、どうしたんですか?」

 思っていた反応と違う。というか、むしろ反応しすぎ! それも意味不明な反応を!

 新人バスガイドさんは混乱した!

 生徒達の視線を辿れば、そこには後部座席中央――新人バスガイドさんの正面にでんっ! と座す一人の男子生徒。

 新人バスガイドさんと、彼――ハジメの目が合う。

 ここで一つ、ハジメの精神状態について言及すると、本日のハジメさんは割とテンション高めだ。実は、先程までのノリのいい返事にもさりげなく参加していたりする。カラオケでもアニソンを熱唱をしている。

 そんないつになくハイテンションな彼が、いかにも「魔王が降臨したんだって」「つまり、南雲が降臨した?」みたいな視線を向けられれば、どう反応するかというと……

 ニィッと笑って、ちょっぴり〝威圧〟! いかにも、俺が魔王さまだよ!

 生徒達が「おぉ! 南雲がノッた!」「よっ、私等の魔王様!」と盛り上がる!

 けれど、異世界で鍛えられた生徒達にとっては何でもない程度のプレッシャーであっても、真正面にいる新人バスガイドさんは別なわけで……

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

 ちょうど到着した京都伏見稲荷大社の駐車場に、そんな奇怪な絶叫が響き渡ったのだった。

――新人バスガイドさんのSAN値 23





 長時間のバス移動から解放されて、伸び伸びとする生徒達。

 少々時季外れの修学旅行であるせいか、この時季の学生集団が珍しいらしくチラチラと周囲から視線が投げられる。

 そんな中、新人バスガイドさんの周囲には女子生徒が集まっていた。何故か、左右の手をそれぞれ香織と雫に握られ、優花や妙子、奈々など他の女子達が護衛でもするかのように周囲を囲んでいる。ある意味、ちょっとしたハーレム状態だ。

「あ、あの皆さん? 私が先導しますので、できれば後ろに……というか、私、どうして手を握られているんでしょう?」
「大丈夫、大丈夫ですから」
「私達が傍にいますから」
「あの……ガイドさん。飴、食べます? 甘いミルク味ですよ。きっと癒やされると思いますから」

 香織、雫、優花の順で、もの凄く気遣うような表情と声音が新人バスガイドさんに向けられる。他の女子生徒からも次々と優しい言葉が贈られてくる。

 仲良くしてくれるのは、とても嬉しい。特に男子生徒ではなく女子生徒というところが。

 しかし、しかしだ。

 この妙な気遣いと優しさには、流石に困惑を隠せない。むしろ、優しすぎて逆にちょっと恐い。

「あ、あのぅ。皆さん、私、何かしましたか? さっきまでと、皆さんの様子が少し違うような……あれ? そう言えば、いつの間に駐車場に着いたんだろう? あれ? あれれ? 確か地元の話をして……それから……」
「思い出さなくていいですから!」
「ささっ、ガイドさん。早く先に進みましょう。ね? ね?」

 香織がわたわた、雫があせあせと手を引いて観光案内を促す。

 確かに、今はお仕事の時間だ。何故か少し前の記憶が曖昧ではあるが、生徒さん達がガイドを期待してくれているのだ。はりきって応えなければガイド魂が廃る!

 新人バスガイドさんは気持ちを切り替えて歩き出した。群体のように、女子生徒達が一斉に動き出す。その後を男子生徒がぞろぞろと着いていく。

「なぁ、ユエ。あの人、本当に大丈夫か? 記憶まで消すことないと思うんだが」

 一行の最後尾で、ハジメが何ともバツの悪そうな表情でユエに尋ねた。

 まさか、あの程度の威圧で発狂するとは思いもしなかった魔王様。それまでのクラス全体での言動が新人バスガイドさんのSAN値を著しく下げていたことも原因ではあるが、止めを刺したのは自分なので、流石にはしゃぎすぎたと珍しくも反省中だ。

 ユエに「メッ!」されたのが一番の原因だが。

「……ん。魂魄魔法で癒やしたから大丈夫なはず。もともと、一般人にしてはもの凄く強い精神力を持ってるみたいだし……何か、すごい経験でもしてるのかも?」

 まるで、恐怖耐性の技能でも持っているかのような強靭さだったと、ユエは不思議なものを見るような目で新人バスガイドさんを見る。

「新人のバスガイドが恐怖耐性を得るような凄い経験ってなんなんだ……バスガイドの仕事、ハード過ぎるだろう」
「……ちなみに、記憶操作はしてない。耐性はあるけど、普通に記憶が飛んだっぽい」
「……後で、何か差し入れでもしておくか。詫び代わりに」

 魔王から、詫びの品を贈られる新人バスガイド。トータス世界の人達が知れば遠い目をすること間違いなしだ。

 一見すると学生達から大人気のバスガイドさん、みたいな様子で、一行は伏見稲荷大社を巡っていく。

 有名な〝千本鳥居〟など、歴史と神秘を感じさせる場所ではユエやシアをして思わず感嘆の声が漏らした。

 とある場所で新人バスガイドさんは立ち止まった。

「皆さん、こちらにあるのは〝おもかる石〟と言います。石灯籠の頭の部分の石を持ち上げて、自分の想像より軽ければ願いが叶い、重ければ叶わない、と言われています。どなたか試してみませんか~」

 その言葉に視線を向ければ、二つの石灯籠があった。生徒達がキャッキャッと騒ぎながら次々に試していく。

「今日中に彼女ができますように!」

 中野が無謀極まりない願い事を恥ずかしげもなく叫びながら、チラッと視線を新人バスガイドさんに向けて石を手に取る。

「っ!? ……か、かっるぅ! めっちゃ軽いわぁ!」

 想像していたより凄く重かったらしい。異世界チートのくせに、なお重く感じたのは何故か……。それだけ〝あり得な~い〟ということなのかもしれない。

 同情混じりの視線が中野に集中する。それを見て斎藤は挑戦を断念し、そっと中野から距離を取った。

 次に手を伸ばしたのは行きのバスでファインプレーを見せた野村健太郎と、同じパーティーメンバーの回復役だった辻綾子だ。二人して互いにチラ見しながら手を伸ばし、そっと石を持ち上げる。

「辻、どんな感じだ?」
「う、うん。普通に軽いって思ったけど……野村くんは?」
「俺も、軽いと思ったよ。……辻の願いって……」
「それは内緒!」

 互いにほんのり赤くなりながら、石を持ったままチラ見し合う二人。

「信じられるか? あの二人、あれで付き合ってないんだぜ?」
「どうでもいいから早く石をおけよ、野村。石ごと頭をかち割るぞ」

 淳史と昇がやさぐれた。帰還前から互いに意識しているのに、未だ正式に付き合っていない二人に、淳史達だけでなく他の者達も微妙な表情だ。

 そんな感じで騒ぎつつ、最後に挑戦したのは雫と香織の二人。シアが楽しげに声を弾ませて尋ねる。

「お二人の、叶えばいいなぁってお願いはなんですか? 持つ前に教えてくださいです」
「私は……やっぱり、この先もずっとハジメくんと一緒にいられますように、かな?」
「そうねぇ……私は、家族がもう少し大人しくなりますように、かしら」

 香織がちょっぴり恥ずかしそうに、雫が遠い目をしながら、それぞれそんなことを口にした。雫に同情の視線が集まる。

 そうして、香織と雫が〝おもかる石〟に手を伸ばし……

「あら、軽いわね。そう感じるということは、もう少し自重してくれるのかしらね」

 かなり嬉しそうに〝おもかる石〟をひょいひょいと上下させる雫。更に同情する視線が集まる。

 が、その横で異常事態が発生。香織が石灯籠の上から〝おもかる石〟を持ち上げようとしないのだ。

 否、ぷるぷると震えている様子からすると、持ち上げないのではなく、〝持ち上がらない〟ように見える。

「んぅううううううっ!? なにこれ!? なんでこんなに重いの!? ビクともしないんだけど!?」

 もしや、接着されているのでは? と、先程まで普通に皆持ち上げていた事実も忘れて混乱する香織さん。

「はまり込んじゃったんでしょうか……」

 にこにこと生徒達を見守っていた新人バスガイドさんが、困惑したような表情で〝おもかる石〟を手に取る。

 ひょいっと、実に軽く持ち上がった。

「……」
「……」

 なんとも言えない空気が流れる。先に、香織が願いを口にしてしまった事実があるだけに、なおさら。

「こ、今度はきっと大丈夫ですよ!」
「そ、そうですよね!」

 新人バスガイドさん、必死のフォロー。香織は涙目になりながら、再度、〝おもかる石〟に手を伸ばした。

 ビクともしなかった。

「なんでぇえええっ!? 私の願いって、そんなに難しいの!? 重いなんてレベルじゃないくらい、あり得ない願いなの!? うわぁああああんっ」

 既に、石灯籠にしがみつくような体勢で、頭部分にある〝おもかる石〟をどうにか持ち上げようとする香織。当然、同情の視線も集まった。これでもかというほど。

 そんな中、トコトコと進み出てくるユエ様。

 べそを掻きながら〝おもかる石〟を持ち上げようと奮闘する香織に、生温かい眼差しを向けると、

「……香織。分相応って言葉、知ってる?」
「どういう意味!?」

 ハジメの傍にいたいなんて分不相応な願いなんだよ、と言外に伝わる言葉。

 どうあっても持ち上がらない〝おもかる石〟という異常事態に、なんだなんだと観光に来ている周囲の人達まで注目し始める。

「あの、ハジメさん。もしかして……」
「あ~、うん。めちゃくちゃ巧妙に隠蔽しているけど、魔眼石で見る限り、ユエの奴やらかしてるなぁ」

 シアが直感で察した通り、ユエ様はやらかしていた。

 そう、公衆の面前で、神業的な魔力隠蔽をしつつ重力魔法を発動していたのだ! 

 その証拠に、香織が力を入れるに比例して重量を増加させているらしく、既に〝おもかる石〟を乗せる石灯籠からピシピシッと不吉な音が鳴り始めている。

 その音で香織も気が付いたらしい。

「これって……ユゥ~~エェ~~~っ!! また意地悪してたんだね! こんな場所で何を考えてるの!? 早く解除して! さぁ早く!」
「……ちょっと何言ってるのか分からないです」

 ぴゅ~ぴゅぴゅっぴゅぴゅ~~~と、わざとらしく口笛を吹きながらそっぽを向くユエ。香織への悪戯のためなら、神業の使用も辞さない! 

 重力魔法を解く気がないと察した香織の額に、ビキッと青筋が浮かぶ。

 二人のやりとりから事情を察したクラスメイト達が呆れ顔やら面白そうな顔やら見せる中、香織は一度、ふぅ~~と大きく息を吐いた。

「あ、あの、香織? 事情は察したけど、ここは人も多いし、もう諦めて……」
「雫ちゃん。女には、引けない戦いというものがあるの」

 少なくとも、観光地で身体強化するような戦いはマジで止めろ、と思う雫だったが、香織は既に――突撃乙女モードを発動!

「こんのぉおおおおおおおっ!! ぜぇ~~~たい、持ち上げるんだからぁああああああっ」

 迸る雄叫び! 神の使徒の膂力を遺憾なく発揮し、〝おもかる石〟攻略に全力を注ぐ! 魔力光が可視化されるのを抑えるくらいの理性は残っているらしく、その点は幸いだが……

「……むっ。往生際の悪い!」
「見ててねっ、ハジメくん! 私、負けないから!」

 いろんな意味で見てられねぇよ、というハジメのツッコミは二人の耳には入らない。

 雫や愛子があわあわしながら止めに入ろうとする。

 しかし、その前にビシリッと不吉な音がしたため二人は思わず動きを止めてしまう。

 見れば、とうとう石灯籠が超重量に耐えきれず亀裂をこさえていた!

「いきなり観光地破壊とか勘弁してくださぁ~~い!」
「と、取り敢えずみんな! 壁になって! 観光客に見えないように人壁になって!」

 愛子が半泣きで止めようとし、雫が指示を飛ばして生徒達が人垣を作る。

 香織は、周囲の注目にも負けず、超重量にも負けず、遂に〝おもかる石〟を胸元に抱くことに成功。そして、ぷるぷると震えながらも、ダァーーーーッ! と頭上に掲げた。

 それはまるで、バーベルの重量挙げ選手の如く、あるいは〝おらに力を分けてくれ!〟な戦闘民族の如く。

 同時に、香織の足下は放射状に陥没し、無数の亀裂が蜘蛛の巣のように広がった。

「見て見てっ、ハジメくん! ちゃんと持ち上げたよ! 願いが叶うよ!」
「……ぬぅ。香織め。やりおる」

 達成感に浸る香織さんは、既に忘れているらしい。〝予想より重いと感じたらアウト〟という事実に。初っ端から、既にアウトだったということに。

 だが、その晴れ晴れとした表情を見ると、誰も何も言えないのだった。

 取り敢えず、クラスメイト達が人目を阻んでくれている間に、二人に衝撃波付きデコピンでお仕置きしつつ、錬成で地面と石灯籠を修復するハジメ。

 あっという間に元に戻ったので目撃者はいないだろう。

 そう、人垣の内側にいた新人バスガイドさん以外には。

 一連の事態を目の当たりにした新人バスガイドは、しばらく引き攣り笑いを浮かべた後、

「……ふひっ」

 変な笑い声を残して気絶するのだった。

――新人バスガイドさんのSAN値 18
いつもお読み頂ありがとうございます。
感想・意見・誤字脱字報告もありがとうございます。

この後、もう一話投稿するよ!

設定とか考えなしの話だから、時系列も適当。
なので、光輝については言及していません。
いるかいないかは、貴方の心の目で見てあげてください。

PS
ありふれた日常6話が、オーバーラップ様のHPで更新されてます。
良かったら見に行ってみてください。

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