ぼくはちびた
ぼくは ちびた。
うちで 一番 えらいんだ。
けらいだって、 二人も いるんだぞ。
おんなの けらいが やってきた。
よくしゃべるけど やばんな しゅぞくの ことばは わからない。
なまえは 「まま」 らしい。
あさ、『まま』が おきてこないと ぼくは おおごえで どなる。
ままー、ごはんをもってこい。いますぐだ。
(子猫の声)
『まま』は けらいのくせに ねぼすけなので すぐおきてこない。
だから ぼくは いたずらを してやる。
ゴミぶくろを カサカサ。
カサカサすると ままは とんでくる。
ままが おきてこないのが わるいんじゃないか、けらいのくせに。
おなかが いっぱいになった。
つぎは うんどうだ。
おとこの けらいが やってきた。
なまえは 『ぱぱ』 らしい。
こえも たいども でかいし ちょっと こわい。
いや、こわくなんか ないやい。
ぼくが うちで 一番 えらいんだから。
ぱぱー、うんどうさせろ、おもちゃをだせ。
(子猫の声)
うわー、 よってきた。 にげろ。
じゃなくて、 うんどうだ、 うんどう。
ぱぱに おもちゃの ひもを ふりまわさせて、
ぼくは いえじゅうを はしりまわる。
はあはあ、ちょ、ちょっと きゅうけい。
え、まだやるの?
けらいのくせに しゅじんを こきつかうな。
いっぱい うんどうしたので つかれて ねむくなった。
めが さめると けらいが いなかった。
『ぱぱ』も 『まま』も いなかった。
ごはんは? おもちゃは?
ままー。(子猫の声)
ぱぱー。(子猫の声)
だれも いないの?
うちのなかに ぼく ひとり。
まま、どこにいるの。
ぱぱ、かえってこないの。
そとが だんだん くらくなってくる。
うちも くらくなってくる。
なんだか へんな きもちだよ。
なんだか なきたく なっちゃった。
うわああん うわああん
(子猫の声)
「ただいまー、ちびた、ごめんね? 遅くなっちゃって。」
「元気してたか? うちの ちびは。」
がちゃりと音がして、
『ぱぱ』と 『まま』が かえってきた。
「どうしたの? ちびた 泣いてたの?」
『まま』が よってくる。
な、ないてなんか ないやい。
ぼくは うちで 一番えらいんだぞ。
ちびた なんだぞ。