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サラ様の趣味の一つ。Ⅱ

クラウドside


 シエナルドもレオナード隊長に連れられて部屋を出た。私は彼女と2人軽く談笑しながら彼等が戻ってくるのを待った。そうして彼等が部屋から出て20分ほど、それぞれが最初の応接室に集まり何かしら物を持っていた。しかも、レオナード隊長に釣られてシエナルドまで何か持っている。


「クッ」


 その姿に思わず吹き出しそうになるのをなんとか堪え、視線を急いで逸らすと。彼女が皆が持ってきたものを一瞥し嬉しそうに微笑んだ。その姿に少し見惚れながら、慌てて思考を切り替える為に彼女が何をしているのか訪ねた。


「何をしているのですか?」

「いえ、皆さん中々個性的なモノを選んできたな。と思っただけなんですよ。因みにこれらの使い道分かりますか?」

「「「いや、全く」」」


 皆が一声に答える。それに彼女はまたツボに入ったのかくすくす笑い出した。


「ふふ。では、ご説明しますね。せっかくなので使ってみてください。まず、あー。その前に皆さんのお名前を教えてください。これから一緒に暮らすのですからお名前を知っていなくては……」


「ああ。そうですね。私は『黒騎士』の副団長をしてます。クラウド・バルヒロッタです」

「同じく副団長のルドルフ・サルタ・セルバーンだ。よろしくなお嬢ちゃん」

「補佐をしています、ランドール・ドラ・バルタスです」

「俺はフラウ。下っ端共のまとめ役だ。まぁ、小隊長みたいなもんだ」

「同じくカーネル・バンク。よろしく」

「ほんで、俺がマリック。よろしくな!」

「えぇ。よろしくお願いします」


 自己紹介が終わったところで、それぞれの席に着いた彼等は、持ってきたモノをテーブルに置いたり、手に持っていたりしていたが、やがて彼女は一つ一つ用途を説明していった。


「まず、マリックさんが選んだモノですが」

「マリックでいいよ。さんづけは正直慣れてないから気持ち悪いんだよね」

「分かりました。マリックが選んだモノ。これは『風鈴』ですね」

「「「「フウリン?」」」」

 

 聞きなれないモノだったのだろう。皆から疑問だた。


「『風鈴』というのは、暑い時期などに窓辺に吊るして風で音が鳴るようになっているものですね。ちりんちりんと綺麗な音が鳴るんですよ」


白いカップのような形を逆様にしたような形状に、中には青色の石が吊るされている。見ているだけで涼やかでどこか品がある印象を与えた。


「へー。今度やってみよ」


 マリックがどこか嬉しそうに手元の『フウリン』を眺めた。それを横目に見ていたフラウは自分が探してきたモノを、サラの目の前に晒すと説明を求めた。


「俺のは何に使うんだ?」


 それを見た彼女は躊躇うことなく応えていく。


「フラウさんのは『虎の貯金箱』ですね」

「……チョキンバコってのはなんだ?」

「………」

 私たちには最もな疑問だったのだが、彼女の常識では無かったらしい。暫しの沈黙のあと、平静を取り戻し、何事も無かったように疑問に答えた。


「『貯金箱』というのはお金を貯金つまり、お金を貯めて収納しておける入れ物の事です」

「へー。なんか、こいつの面構えがいいから思わず持ってきたんだが、そんなのに使えるのか」

「ちなみに、その虎の後ろの頭に細長い切り穴があると思うのですが、そこからお金を入れて、日常的に使わないように収納しておくんです。もしその入れ物全部にお金が貯まったら、その入れ物ごと壊しちゃってください」

「「「「……………」」」」


 続いて言われた残忍な言葉に、思わず沈黙が周りから出る。


「……なにか、もったいない使い道ですね」

「しかし、これでも中々便利なんですよ?入れたら最後、割らないと取り出すことはできませんから。きちんとお金が貯まって行きます。因みに、これに銀貨を一杯に詰め込むと金貨3枚分。金貨を詰め込むと晶貨2枚分くらいにはなるんじゃないですか?」

「なに!?本当か?」

「まぁ、地道に貯めていければの話ですよ?あまり一日に詰め込みすぎるとお金が取り出せなくて、生活できなくなりますからね。気をつけて使ってください。『お金のご利用は計画的に』です」


 この『チョキンバコ』なるモノの効果にフラウから驚きの声があがるが、そんな調子づいたフラウにクギを刺すことを忘れない。会話だけで彼女は当初において我々の本質をよく見抜いて来ていると感じられた。そう思ったところで、今度はランドールがそっと机に出してきて説明を求める。


「では、私のこれはなんでしょうか。中に砂が入っていて綺麗だったのでこれにしたんですが」


コトッと出されたそれは周りを陶器で囲まれ中のガラスが2つ内に行く毎に細くなっており、下のガラスの中には水色に輝く細かい粒が入っていた。


「ランドールさんのは『砂時計』です」

「『砂時計』……砂が時間になるのですか?」

「その通りです。しかし、それは大きさからして10分間の使用のみです」

「10分間しか使えないのですか」


 結構な大きさに見えるモノだが、以外に時間の幅は狭いようである。だが、これにも彼女は意外な視点からこの『砂時計』の使用法を説明してきたのだった。


「えぇ。しかし、ものは使いようです。時間を有利に使いたい方にはお勧めですよ」

「例えばどんな時に使うんです?」

「そうですね。例えば寝る前に10分間だけ読書をするとか、次の仕事をする前に10分間休憩にしよう。とかですね。たまに、料理で10分間煮込まないといけない時とかにも使えます。ちなみに、それの使用法は下に溜まっている砂の方を上にひっくり返すだけです。落ちて行く砂が時間の経過になるので全ての砂が落ちた時が約10分間ということになります」

「はぁー。なるほど」


 しかし10分されど10分なのだと。彼女はそうランドールに説明し彼を納得させた。これはある意味凄いことである。少し堅物な彼だけに、そう簡単に頷かせるなど。彼の事をよく知っている彼らも表情には出していないが、きっと私のように驚いていることだろう。


 驚きで鈍くなった空気を戻そうとしたのか、どこか甘く爽やかな印象を与え、良家のお嬢様方から多くの支持を仰いでいるカーネルが机の真ん中へと持ってきたモノを出してきた。


「では、私のこれは何なのでしょうか。なにやら、この置物の顔に愛着が沸きまして」

「「「「………」」」」


 確かに先ほどの空気は一掃できはしたが、カーネルは差し出したモノを見て今度は違う意味での沈黙は場を支配した。しかし、そんな空気はお構いなしと、サラは面白いモノを見るように目元を緩ませ、説明を始めた。


「あら。カーネルさんはマトリョウシカを持って来たんですか」

「マトリョウシカ?」

「はい。マトリョウシカも、こう見えてただの置物ではありません」

「「「へー」」」

「俺にはただの、丸っこい人形にしか見えないがな」


 ルドルフのセリフに思わず心中で「確かに」と同意をしめした。しかし、意に反して彼女は楽しそうにこの人形の特性をあげ、説明を続けた。


「ふふ。そこがマトリョウシカの良いところでもあります」

「これは一体何に使うんですか?」

「はい。これは実際やってみた方がいいかもしれませんね。ちょっと貸してください」

「あ、はい。どうぞ」


 カーネルがそのマトリョウシカというものを彼女に渡すと、彼女はおもむろにその人形の上半身と下半身とで持ち構えると。一気に捻り上げた。


「「「「えっ」」」」


 一同唖然。しかし、どうしたことだろうか。その人形の上半身と下半身は分かれたはずなのに、その中からまた同じ顔の人形が出てきた。


「「「「「えぇ!!」」」」


 そして、彼女は最初の人形の身体をくっつけると、今度は中に入っていた人形の上半身と下半身を取った。そして、また出てくる同じ顔。それが7・8回ほど続いたころ最初の頃とは比べ物にならないくらい小さくなった人形があった。そして、全部で9体もの人形。しかも、皆同じ顔。


「「「「…………」」」」


 皆の間の抜けた顔を見てまたも笑いだす彼女は、ちょっと目に涙を浮かべながらもこの人形の説明をしてくれた。


「この人形はこうやって分けると中が空洞になります。それを利用して、大きさに合わせたマトリョウシカの中に色々なモノを入れておけるんですよ。例えば秘密の暗号文やらヘソクリやら、お菓子やら。まぁ、簡単に言うと他の人にバレテ欲しくないものを人形に入れて隠しておけば仕組みを知らない人にはただの人形にしか見えない。っと、まぁ、こういうことです」

「「「「なるほど」」」」


 確かに、そういう仕組みになっていると知らなければ、いくらでも仕様はある。と皆して納得させられた。








続きます。

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