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サラとの出会い(レオナード編)

更新は地道に頑張っていきたいと思います。暖かく見守ってください。

レオナードside


 俺は今朝早くサラの家を訪ね、条件付きではあるが、なんとか家を貸してもらえることに成功した。サラは信用に値する奴だ。しかも、サラはああ見えて普通の15歳のお嬢様ではない。そう想ったのはサラと初めて出会った頃からの印象だった。


 今から2年前、サラを初めて見たのは城下町の細い路地裏。誰も居ない薄暗いそこで、サラは5・6人のゴロツキ達に絡まれていた。どうして、こんな薄暗い路地に身なりのいい明らかにお嬢様風情とした子がいるのか不思議に思いはしたが。そこにたまたまフラリと立ち寄ったのも偶然で、俺はすぐには駆けつけず、その様子を少し窺っていた。


「お嬢ちゃん。随分いい身なりしてるじゃん。ちょっとお兄さん達お金に困ってるんだけど、恵んでくんないかな?」

「「「ぎゃははは」」」

「むしろ、どこかに売り飛ばすか。…良く見たら結構可愛い顔してんじゃん。」

「あー。確かに。……だが、幼すぎやしないか?」

「くっくっく。そんなの、どっかの変態金持ち貴族共にでも売りゃあ問題ねぇーよ」

「それもそうだ。「「「「ぎゃははは」」」」


 下品な笑い声を聞きながら、これは早めに助けた方がいいだろうと判断し、輪の中へ入ろうとしたその時。見るからにとてもお上品なお嬢様から出たとは思えない、低い声と不思議な威圧感で、これまたとんでもない言葉を吐きだした。


「うっせぇーな。さっきからピーチクパーチク騒ぎやがって。こっちとら徹夜の仕事が終わって後は家帰って寝るだけって時によ。てめぇーらみたいに昼間っからこんなところで油売ってる暇なんざないんだよ!あたしは早く帰って寝たいんだ。つかマジ寝かせろ。どんだけ寝てないんと思ってんだ。今から私の安眠妨害してみろや。マジ許さねぇー。完膚無きまでに叩きのめしてやる。ストレスも溜まってるし、これ以上怒らせんなや。」


「「「「「「…………………」」」」」」


 一同唖然。俺も踏み出そうとした格好のまま固まってしまった。なんなんだ、この嬢ちゃんは………威勢がいいにも程がある。


 そんな中、我に返ったゴロツキの一人が真っ赤な顔して怒鳴り散らした。


「ふざけんなよ。嬢ちゃん。こっちが下手にでてりゃあ、調子に乗りやがって。ちょっと痛い目にでも見てもらおうじゃねぇーか。」

「はっ!どこが下手だよ。十分上から目線だったじゃないか。まぁ、いいや。丁度こっちもお前らのせいでイライラしてきたんでね。ストレス解消にでもお手伝いいただこうじゃないか。」

「~~~くそっが!!やっちまえ!!」

「「「おう!!」」」


 これはヤバい。そう俺は瞬時に思った。相手はどう見ても男のゴロツキ5人だ。そんな相手をお嬢ちゃん。しかもまだ、13・4くらいのだ。どうあっても力の差は歴然としている。俺はこんどこそ輪に入ろうと身体を動かした。


 が。 バキッ


「「ぐはっ!」」

ベキッ

「ぐふっ。」

ドコッ

「ぶふぁっ!」


 次々と倒れて行くゴロツキを目にしながら、今度は開いた口がふさがらなかった。


「(なんなんだ。これは…)」


 嬢ちゃんは素早く最初の男2人の懐に入り込むと、腹の溝内に肘鉄と蹴りを喰らわせた。そしてそのすぐ後に控えていた男の拳を右に避けると、そいつの腕を掴み右脚の先を踏みつけて前に倒れ込むように促し、その勢いを利用して掴んだ右腕だけで男を地面へと投げつけた。次の男も同じく拳を振り上げるが、先に嬢ちゃんが懐へと入り、素早く胸倉を掴むと男の右腕を抱え込みながら背を向け、勢いを殺さず、後ろ左足で男の左足を払うと、男を抱えながら投げ飛ばした。


 どれも、見たことが無い体術のようで屈強とまではいわないが、それなりの体格を持つ男達を女の子。しかも、子供にのされている姿は異様でしかない。しかし、その体裁きは見事で思わず見惚れるほどだ。そして、ゴロツキの最後の男がこの異様さに今更気がついたのか脅えた顔で逃げ出そうと叫びながら踵を返そうとした。しかし…


「うっわわぁあ!!」

「逃がさないよ。最初に喧嘩を売ってきたのは君たちだからね―ニヤリ。最後までお付き合い願おうか」


 そんな、悪魔の囁きと共に上へ飛び上がると、逃げ出そうとした男の前に着地。逃げ道をふさがれた男は気が動転しながら、そのまま嬢ちゃんへと飛びかかった………が、嬢ちゃんはそれを静かに見つめながら左足を軸に右足で男を勢いよく蹴りあげた。


「グハッ!」


 ……最後の男が終わるとその嬢ちゃんは手を軽くはたきながら、この路地を後にした。

結局俺は最後まで呆然とその後ろ姿を見やることしかできずにいた。そして、ひたすらにあの嬢ちゃんが何者だったのかを考えていた。

 だが、その疑問は案外早く解決される事いなる。


 それは…



 ある任務で結構な怪我を負った俺は、偶々行き倒れている処をこの間見かけた嬢ちゃんによって拾われ、助けられたからだ。暫くして、この屋敷が城の近くの森の中に建っている事を知り、やっとこの嬢ちゃんが何者だったのかを瞬時に理解した。

 城の近くのこの森に屋敷を持つ家はただ一つだけ。そして、此処最近噂にもなっている人物が暮らす屋敷だ。そして、その噂と云うのが…

「秀才にして鬼才の稀なる力を持ったご令嬢が居る。」というもの。詳しい事は知られていないが、貴族社会や城内に住まう人々には有名な話だった。そして、その人物というのが、今目の前に居るサラサ・セナ・アルメリア。アルメリア家の一人娘。しかし、サラの両親は彼女が10歳の時に事故で亡くなっている。爵位は従兄のサイレントに譲られ、サラは両親の残した財産で生計を立てているようだった。


 まぁ、そんな縁で図々しくも色々と頼みごとをしたり、連れ回したりしているうちに今じゃ友人として何度かサラの家を訪れるようになった。しかし、今回の件引き受けてくれてホント助かった。あとは、シエナルドに報告して今日のお昼になる前からでも、荷物を運び入れてもらうことにしよう。


 ついでに、俺も行こうか。昼飯をあやかりに行くのもいいだろ。最近は忙しくてゆっくり食事もとっていなかった。サラの屋敷で作られる飯は中々珍しいものばかりで、更にめちゃくちゃ美味い。……よし、今日の飯はサラ宅で頂こう。


 そう、上機嫌に城内の廊下を歩く姿を多くの人に目撃されていた。それに、まったく気付かず今日のお昼を楽しみにするレオナードであった。





end





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