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困難と思惑の始まり

 トントントントントン………


「遅い!何時まで私はここに居ればいいんだ」


 サラがここの控室に通されて、既に50分もの時間が経過していた。


「……サラ様」


 流石のイザベラもこれ以上主人が待たされる状況に静かに怒りを覚えてんいた。何せ、此処に招いたのはアチラであって、我々ではないのだ。これ以上の時間を此方で待たされるのであれば、イザベラは王へと直接面会の許可もしくはその上役にでも連絡をどんな手段であれ、取ろうと考えていたのだ。


 一介のメイドでしかないイザベラではあるが、このような理不尽な扱いを受ける主人を見てはいられない。ただでさえ、こう言った場を嫌っているのだから。


 そして、もうそろそろ1時間が経過した頃。イザベラの我慢は限界を超え、主人の許可を貰うべく後ろに控えた場所から一歩踏み出すと、主人へと口を開く……が


「サ『コンコン』………」


 突如として聞こえてきた扉をたたく音にイザベラの声は遮られたが、同時にサラとイザベラは固まってしまった。


コンコンコン

 続けざまに鳴らされる2度目の扉の音に、気のせいではないと分かると、イザベラはサラが何かを言う前に扉へと素早く向かい声をかけた。


「はい……」


『黒騎士団長シエナルド・ドルテ・オーデンシュバンクだ。サラ殿はおいでか』


 扉の向こう側から聞こえてきた少しくぐもった声は最近見知ったばかりの人物のものだった。それに少し安心したイザベラは主人に顔を向け「黒騎士のシエナルド様がお見えです」と来訪者の名を告げた。




 来訪者の名を聞いたサラは少し目を見開いたが、すぐにいつもの笑顔(表使用)を浮かべ通すよう伝える。そうして、開かれた扉をくぐって表れたシエナルドに再び目を見開いた。










*************




ガチャ

 コツコツコツコツ


長い脚を黒のロングブーツで歩きながらズボンも上着も全て黒といういつもの軍服に装飾品が多少多くつけられたその姿は最早どこぞの王子並に気品と優雅さがあり、普段は下ろさている銀糸のような銀髪は綺麗に後ろへと流され、より大人の色香を強めていた。


 そんなシエナルドの姿にいつの間にか無自覚に見惚れつつも、(表使用の)笑顔を保っているサラだが、内心はかなり(色んな意味で)荒れていた。


(…あっぶね!なに、この色気!まるで襲ってくださいと言わんばかりの色気!!!そんなにフェロモン振りまいてなにしたいんだよあんたっ!!なに、襲ってほしいわけ?!それとも、襲われたいわけ?!←(混乱中)つか、男のくせになんだその色気は!美形でカッコイイばかりか←(嫉妬)こんな色気まで…。どこにそんなの持ってやがんだこの野郎!羨ましい←(本音))


コツッ 

 今だ混乱を極めているサラの脳内に、これまた美形によく合う美声で声を掛けられ我に返った。


「サラ殿、長らくお待たせして申し訳なかった」


「……いいえ、それよりも陛下はどちらに?本日は陛下よりご招待を承り、急ぎ此処へ参ったのですが、何故か会場でなくこの控室へ通されましたので…何か大事なお話でもあるのかと。…ところが、1時間近く経っても一向にどなたも来られないので、イザベラと2人で何か遭ったのではないかと気を揉んでいたところです」


 さり気無く「どなたも」を強調しながら『人を呼んどいて1時間も待たせるなんざどういう了見だ』と訴えるサラ。だが、そんなサラの厭味もシエナルドはさらっと受け流す。


「それは、どんだ心配をおかけした。なにぶん私も先ほど陛下の使いの者から事情を聴いたばかりで、こちらへ来るのか遅くなってしまった。どうやら陛下には急きょ仕事が入ってしまわれたようだ」


「まぁ、それでわざわざシエナルド様がお伝えに来られたのですか?侍女の方にでもお伝え寄こしてくださればよろしかったのに(寧ろ、そうして欲しかった!!陛下もわざわざ団長さんに頼まんでも…)」


 そんな事を思いつつ、この後をどうするかを考えていたサラは次の瞬間、シエナルドから発せられた言葉に凍りつく。


「いや、私が来たのにも訳があるのだ。この度の夜会では忙しい陛下の代わりに、私が貴方をエスコートするよう仰せつかっている」


「…………………は?」


 サラは通常の(表使用)笑顔も忘れ、素で返事をしてしまったのにも気付かない程の衝撃を受け、呆けてしまっていた。そんな顔をシエナルドに真近に見られ、やがてクツクツクツと笑いだした。そんなシエナルドに気付き、やっと我に戻ると少しづつ紅くなる頬をそのままにキッと今だに笑い続けるシエナルドを睨みつける。


「クス。――いや、すまなかった。なんとも可愛らしい反応だったもので、つい笑いが漏れてしまった」


 サラの睨みに気付き、笑いを止めるとさり気無く慰めにかかる。そんなシエナルドの言葉に更に紅くなりながら心の中で罵倒する。


(~~~な、なに言っちゃてんのこの人!私に可愛いとかないから!!確かにこの身体の前の持ち主の顔だけあってめっちゃっ可愛いけどねっ!ぶっちゃけ精神年齢は君より上だよ!!おばさんだよ?!だから何さ!!←(絶賛混乱中)

 しかも、また変に色気が増してるぅ~!!ちょ、マジこの人危険人物だって!!そんな風に笑ったらそこら辺の女の子なんてイチコロだよっ!あれ、これ死語かな?って、そんな場合じゃなくて!!どうすればいいの~~この状況!!)


 慣れない状況に陥ってしまったサラはなす術なく、顔を赤らめたまま助けを求めるようにイザベラへと視線を送った。それにいち早く気付いたイザベラはいまだ楽しそうに主人を見つめているシエナルドへと声をかける。


「シエナルド様、そろそろ広間に向かいませんと、夜会が開始されてから随分時間が経ってしまわれました。……他の皆さま方も首を長くしてお待ちでしょう」


「クス―そうだな。では、サラ殿お手を…」


 そうイザベラの気転により、なんとか見つめられる事を逃れることが出来たが、もう一つの問題を忘れていた。


(えっ(汗)これマジで一緒に行くの?!)


 既にサラへと腕を差し出すシエナルドを前に、イザベラへと再び視線を送れば今度は肩を竦められてしまった。これは覚悟を決めて一緒に会場入りしろということだ。


 しかし、あまりと言うよりは極力出来ることならば、シエナルドのように無駄に顔の整った相手とはこのような場所では一緒に居たくないというのがサラの本音だった。何故なら……


(どう考えてもこれ、周りのお嬢様方からの嫉妬の視線が半端ないっしょ!!なんで、よりによってこの人になっちゃったんですかぁ~!?

 あぁ~今夜の夜会、私に平穏は訪れないな……うっうっう、舞踏会とか夜会に出ての唯一の楽しみが『恋する乙女観察』だったのにぃいいぃ!!!その乙女達から嫉妬の視線を貰うだなんて……私は可愛らしい女の子の顔が見たいんだぁああぁ!!嫉妬する顔も可愛いかもしれんが、その相手が私なのが嫌だぁああぁ!!!―――にゃろ、あんのクソ爺、マジ会ったら唯じゃおかねぇー(怒))









*************






ブルッ

「………ガタガタガタ(寒気)」

「どうかなさいましたか、陛下!!」


 急ぎの書類にサインをしながら、突如青ざめ震える陛下に臣下の一人が声を掛けた。しかし、それは暫くすると段々収まっていったのか、陛下の顔色は徐々に戻っていった。


「どうしたのです、陛下」


 もう一人の臣下が陛下へと再び問うが、少しどもりながらも「…大丈夫だ」と告げた。


「い、いや。何でもない…少しおぞましい程の寒気を感じただけじゃ……」 

「「「……………」」」


(((いや、それもう『少し』って言わないのでは……)))


 臣下達の心の声が奇跡の一致を果たした瞬間であった。






 そんな陛下が酷い寒気に襲われていた頃、最終的に少し逡巡しながらも結局サラは20㎝以上違う長身の男を見上げながらその腕をとる他なく、そのまま会場へと2人して向かって行ったのだった。




 










今回はサラちゃんの責めターン♪


さて、次回はどうなるっ!!

そして、陛下の運命はいかにっ!!

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