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思惑の果て… 新たな計画

遅くなりまして、本当にすみません!!どうにも、以前書いた続きに納得がいかなくて、思わず書き換えました(>_<)


トントントントン


 両腕を前で組み、椅子の端で中指を鳴らす音が豪華で静かな部屋に木霊する。その様子を少し離れた処から心配そうに窺うイザベラが思わずそんな主へと声をかけた。


「サラ様。どうか落ち着きください」


ピタッ

 途端に指を打ち鳴らす音は止んだが、普段では見られない程の機嫌の悪さをイザベラは主に対してヒシヒシと感じていた。その証拠に、サラは先ほどから表情をピクリともさせずに無表情を貫いている。


「……落ち着けですって?」


 使用人にも心配りを忘れないサラも今回ばかりはそうも言ってられない程の苛立ちがあるようだ。普段よりも低い声で怒気を露わにするサラに今迄にない程の機嫌の悪さを物語っている。そんな主人の心情を察しながらも、なんとか宥めようと奮闘するも、先ほどからあまり効果が得られていない。

 どうしようもないと、イザベラはため息を吐きながら宥めるように、そもそもの原因となった人物の名を口にした。


「しかし陛下のご命令とあっては、流石のアルメリアであろうと断れません」

「……チッ」


 思わず出てしまった舌打ちに、本来のサラの性格が露わになる。


 そんなサラは今王宮の控室に居た。今晩の夜会への急な出席が決まったためである。これが、普通の夜会ならば通常通り出席などしなかっただろうが、今回ばかりは相手が良くなかった。昨夜我が家へと届いた1通の招待状。それは、紛れもなく今晩開かれる夜会への招待状であった。しかも……


「陛下自らの招待状だとは……」

「これでは断るわけにはまいりませんわね」


 サラとイザベラ2人して肩を落として、沈黙する。


 王家従っては陛下自らの招待とあっては、流石のアルメリアでもそう易々と断れる相手ではない。そんなわけで、行きたくもない夜会などに出席する羽目になり、いやいやながらも参上したのだが……、案内された場所は何故か夜会の広間ではなく、このような豪華な賓客用の控室に使用人と2人通されてしまったのだ。


 何故、広間ではなく控室に通されたのか。それに応えられる人物が誰一人としていないため、サラのイラつきはピークに達しようとしていたのである。ここまで案内をした者は部屋に入った途端、早々に退出してしまい尋ねる暇もなかった。しかも、扉の前ではビシッとした城の兵士が扉番をしていて、何やら緊張を孕んだ緊迫感を漂わせ、気軽に声もかけれずに時間だけが過ぎっていったのである。







*************






 それとは打って変わったシエナルドの執務室では、興奮冷めきらぬといった風情で夜会用の少し装飾品の多い黒の騎士服を着込み、落ち着きなく部屋の中をうろうろとするシエナルドがいた。そんな落ち着きのない弟子を呆れた顔で見つめながら。


「少しは落ち着かんか馬鹿弟子………」

「…落ち着いている」


「(……どこがだ)」

「しかし、いきなり城の警護から外された途端に『今から夜会に出ろ。ついでにアルメリア家の令嬢のエスコートも兼ねろ!』とはどういう事です」


 ドサリ


 言いながら段々と落ち着きを取り戻してきたのか、少し疲れたように椅子へと背を預けるシエナルドに、ダグラスは先ほどから感じてした疑問を口にした。


「お前、自分の気持ちに気付いたのか?」

「はぁ?何です?」


 己の師匠からの突拍子のない言葉に「突然何だ」と口にするシエナルドにダグラスは思い違いだったか…と肺に溜まった息を吐き出しながら首を横に振った。


「いや、何でもない。気にするな」


 アルメリア嬢の話を出してすぐに食い付いたため、既に自覚したものだと思っていたのだ。


 そんな師匠を横目に身体を起こし片ひじをつきながらその手に顎を乗せ、暫し考えに耽ったシエナルドは少しずつ人を食ったような笑みを浮かべ、それをそのままダグラスへと視線を流した。


 その視線を真っ向から受けたダグラスは、その瞬間に走った確かな悪寒を感じて冷や汗を流した。そんなダグラスの様子に気づく事なく、笑みを浮かべたまま平然とした声でシエナルドは言ってのけた。


「あぁ、もしやダグラス殿が仰りたいことは〝私が『アルメリア嬢に想いを寄せている』といった感情に気付いているのか。″と言う事でしょうか」

「!!?……お前、やはり気付いて―――」


「えぇ、お陰さまで。どっかの天然野生人の隊長殿が親切にも自覚させてくれましてね。こうして心置きなく捕まえに行けるというものです。彼には本当に感謝していますよ。此の上なく、ね――フッ」

「…………」


 滅多に見られない貴重な弟子の頬笑みだというのに、どうしてこうも不安にさせられるのだろうか。しかも、それが弟子に対してではなく、確実に狙われているアルメリア嬢に対してなのが何とも言えない憐れみを呼ぶ。


 どうやら、この弟子はアルメリア嬢に関してだけ、感情が表に出るようになったようだ。それは幼いシエナルドを見てきたダグラスからしたらとても喜ばしい出来事だった。


 そう、単純にシエナルドの事だけを考えるならば………そして、その表情に浮かんでいるモノが『捕食者』の顔でなかったならば、ダグラスは手放しに心から喜ぶ事が出来ただろう。


 そんなダグラスの複雑な心境を余所に、尚も笑みを浮かべたまま更なる窮地へと追いこんでいくシエナルドは最早『捕食者』そのものであった。




「ダグラス殿がこの事を御存じだと言う事は……、陛下も知っている可能性がありますね」

「…………」


「何せ、貴方は陛下の側にいつも控えていて、滅多に側を離れることがない上に、陛下の片腕としての信頼も厚い。そんな貴方がつい最近、それも昨日の出来事をこうも早く知っているという事は……」

「…………」


「それも、今日の貴方の行動を見るに、レオナードではまずありえないでしょう。もし彼ならば、昨日わざわざ俺の処に来て、自覚させるような発言をするわけがない。そうなると、今回の事を企んだのは昨日あの場に居た私の部下の誰かということになる。更に、ダグラス殿と陛下に直接目通りが叶う人物。……単純に考えてあの2人のどちらか。若しくは、その両方だろうな。」


 最後の方は独り言に近いものだったが、己の行動一つでこうもアッサリ計画がバレてしまう弟子の頭の良さにも困ったものだと思いつつ、部下のフォローを一応入れてみる。


「まぁ、なんだ。あまり怒ってやるな。今回の計画だって、お前の為を思ってしたことなんだ。あの2人だって何も面白がってやったことじゃない」

「……ほう。やはり、ルドルフとクラウドだったか」


「…………」

「無言は肯定と取る」


「(……すまん。ルドルフ、クラウド)」


 弟子の容赦のない追撃に抗う術もなく、追い込まれたダグラスはもう全てを認め、露見するしか方法はなかった。


「(これでは、どちらが師匠で弟子かわからんな……)」


 そんな事を考えつつ、師匠としての威厳が欠片もなくなった今の状態を他の者に見られていない事だけが、ダグラスにとっての唯一の救いであった。そして全てを話終えたダグラスに、またも悪魔の如き囁きで弟子に翻弄されることになる。







*************





「………は?」


 ダグラスは全てを話終えてから、次に弟子が放った言葉に己の耳が可笑しくなったのではないかと疑った。何故なら………


「ですから。ダグラス殿はこのまま何事もなかったように計画を続行してください。と言っているんです。もちろん、他の方に私が知った事は内密で動いて頂きます」


 と、これまた吃驚するくらいの笑顔を見せるシエナルドに思わず頭を抱えた。


「なにせ、皆さんが頑張って私とアルメリア嬢との仲を取持とうとしているのです。彼らの努力をむざむざ棄ておくことはないでしょう。せっかくですから、此方もそちらの計画に沿って少し行動させて頂きましょうか」


 このセリフを聞いたダグラスは瞬時に青ざめた。これは暗に此方の計画を利用し、よりアルメリア嬢に近づきやすくしようと言っているのだ。しかも、自分の部下だけでなく、自分たちが仕えている国の主でさえ利用しようと言うのだ。これで、青ざめないわけがない。


「…もちろん、ダグラス殿はこの計画に乗ってくださいますね。――今回の計画をさぞ陛下は楽しみにしておられるようではありませんか。そんな陛下の楽しみを奪うような事、陛下の側近である貴方に出来るのですか?……ダグラス殿」

「っ…」



 こうして、ダグラスはシエナルドの指示の元。このまま変わらずに計画を続行することになった。その後出会う陛下の顔をまともに見ることの出来ないダグラスに、陛下から訝し気にみられ、余計なストレスをしょい込むことになるのはこれからの後、数十分後の事である。


 そんな事とはつい知らず、これからの事を思い、楽しそうに口の端を上げるシエナルドは夜会の準備を整え終えると、その場にダグラスだけを残し、サラが待つ控室へと足取り軽く向かうのであった。











哀れダグラス(T-T)

そして、黒さが段々パワーアップするシエナルド……

今度は誰がシエナルドの餌食になるのやら(ノω`*)

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