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サラの副業…それは

「サラ。お前用事があったんじゃないのか?」


 サラが座ったのに合わせて、レオナードの質問が飛んだ。それにサラが微笑みながら応える。


「ええ。つい先ほど終わらせてきました。私もお腹がすいてきたので昼食を取らせて頂こうと思いまして」

「そうか。…あ、そういや、サラ。あの上手い料理。あれサラが作ってたって本当かよ」

「…あの料理?」


 サラは話が見えず、首をかしげる。それにレオナードが先ほどまでしていた話の内容を簡単に説明する。それを聞いたサラは納得したという顔で先ほどのレオナードの質問に応えた。


「確かに時間が空いて、私が暇つぶしに料理した時に限って、レオン殿はよく此方にいらしてましたね-クスクス」

「じゃあ、やっぱり今迄のあれはサラが作ってたのか」

「ええ。まぁ、たいしたモノではないのですけれど。そんなに気に入ってくださるとは…」

「じゃあ、なんで今日の昼食は『あの料理』じゃないんだ?」


 レオン殿はそこまであの料理が食べたかったのだろうか。それに、何やらメイドのリリネットから痛い指摘を受けて少し拗ねてしまっているらしい。そんなレオナードをみて、またも笑いそうになるが、あえてそれは抑えて今は正直にレオナードの質問に答えることにした。


「勿論。それは私に時間がなかったからですね」

「だが、今日は一日家に居たんだろ?」

「…確かにそうですが、家に居ても私には仕事がありますので」

「家で仕事?……ああ。あれか、なんだ締切近かったのか?」

「……まぁ、そんなところです」


 サラは運ばれてきた食事に手をつけながら、質問に答え。シエナルドたちは食後のお茶をゆっくり飲みながらレオナードたちの話を聞いていた。そこへ、少し眉間に皺を寄せたシエナルドがサラとレオナードの会話に唐突の質問を投げかけた。


「あれとは何だ?」


 それに2人は驚いた顔をし、それを見たシエナルドの眉間の皺が更に増える。


「(なんだ?突然不機嫌になっちゃって)」


 そうまたも首をかしげるサラに対して、レオナードは突然会話に入り、不機嫌になったシエナルドを見て、「はは~ん」と、何かに思い当たると人の悪い顔をし、そして次の瞬間には満面の笑顔でシエナルドの質問に答えた。


「前にも言ったろ。サラは副業で小説を書いてるんだよ。最近じゃほぼ推理小説と恋愛小説しか書いてないみたいだがな」

「…レオン殿。よく御存じですね、そんな事。私レオン殿に言いましたかしら。推理小説のことはともかく恋愛小説のことまで」

「おいおい。誤解すんなよ!俺の妹がサラの書いてる恋愛小説の熱烈なファンだから知ってるだけだ!…そもそも俺が恋愛モノなんか読むわけないだろうが」

「まぁ、そうですね…」


 レオナードの応えに思わず口を出してしまい、それに慌てて弁解するレオナードを見やりながら「それもそうだ」と納得する。そこへ、今まで静かにお茶を飲んでいたランドールが話を振ってきた。


「そう言えば、推理小説と聞いて思い出したのですが、最近特に人気の推理小説がありますよね。この間城下の本屋へ出かけた時に大々的に置いてあって、何冊か買って読んでみたんですが…これがまた凄いのなんの!私はあの時初めて小説に感動というモノを覚えました!!今度是非続きを買いに行かねばと思っていたんです」

「…それはもしや、『名探偵コナドイル』の事では?」


「「ブッ!!」」

 

 サラとレオナードは口に入れたモノを吹き出しそうになり、慌てて口元を押さえて飲み込んだ。しかし、その後2人して盛大にせき込んでしまい少し涙目になったが、先ほどの推理小説の話に盛り上がるランドールとクラウドにはそんな2人は見えていないらしい。


「!!そうです」

「私もあれには感動しました。あのような名推理があるなど、作者の『シズカ』殿は素晴らしい作家だと感じました。是非一度お会いしてみたいものです」


 その言葉に思わずサラは視線を騎士たちから外し、あらぬ方を向きながら引き攣った笑みで「ははっ」と乾いた声を出した。そんなサラを見ながらレオナードはニヤニヤと面白そうにしている。


「(にゃろ。人事だと思って。…いや、確かに人事ではあるけど)」


 内心毒づきながら一人ツッコミをしていても、クラウドたちの会話は今だ終わりを見せない。それどころか、カーネルの一言で更に話に広がりを持たせてしまった。


「あ、その『シズカ』殿とはもしや『怪盗ルパーヌ』も書いていませんか。私はあの小説が大好きなんですよ。1冊読み切りなのでとても読みやすいんですよね」

「ああ!!それなら俺も読んだことある。あまり本を読まない俺でもあれは面白くてつい慣れない徹夜をして読みふけっちまったぜ」

「俺も!俺も!俺もそれ読んだよー。何気にルパーヌってカッコイイよね」


 そんな盛り上がりを見せる間に、サラは食事を済ませ食後のお茶を楽しむ。もう目の前の出来事は完全無視。むしろお茶を楽しむことで現実逃避をしているのだ。


「(このお茶を飲んだら、即座にこの場を離れよう。うん、今日はその方がいい。絶対)」


 そう考えているサラであったが、……現実はサラにそう甘くはなかった。そして、本日最大級の爆弾が落とされたのだ。…例に洩れず、あの男の一言で。


「はあ。『シズカ』殿とは一体どういった方なのか。この感動を是非本人にお伝えし、続きを書いていただきたい!!…しかし、どうやってこの想いを伝えればいいのか…」


「なら、本人に直接言いやいいじゃねぇか。ちょうど此処に居るんだからよ」


 ピキッ


 その瞬間、この場に居る誰もが動きを止めた。そして、数秒後。クラウドたちが目にも止らぬ速さでレオナードへと詰め寄る。それには流石のレオナードも腰が引けていた。


「だ、誰です!!こ、この場にいらっしゃるのですか!?」

「えっ、あー。」

「焦らさず、早く教えてください!!」

「隠し事はいけませんよ。レオナード隊長」

「おいっ、少し落ち着け!お前ら!!」


 あまりの迫力にあのレオナードもたじたじになっていた。そんな場面を見たサラは少し青ざめながら、誰にも気づかれないように席を立とうと、椅子から若干腰を浮かした処で


 グワッシ!!


 サラの腕はすぐさま掴まれた。そのままギッギッギと、まるで油を差していない機会のような動作で顔をあげると、そこには素晴らしい笑顔で更に、サラの腕を強く握るレオナードがいらっしゃった。


「何処に行くのかな~?サ・ラ・ちゃん♪(まさか、こんな状況の中一人逃げ出そうなんて思ってないよな?(黒))-ニッコリ」


 素敵な笑顔で問いかけるレオナードに、サラはただただ乾いた笑いを漏らしながら、次の瞬間にはガックっと肩を落とすのだった。こうして、呆気なくサラの逃亡は失敗と相成った。






ああ。結局逃げ切れなかった。

そして、何かと厄介事を起こすのはもうレオナードの役目かもしれません。あははは(ノ∀`;)


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