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クップルングの盗賊  作者: 楠木あいら
盗賊ができるまで
10/12

脱走と出会い

 

 サクリファイスという人種販売の館から脱走した二人の奇妙な少年少女は、森の中を走った。

 奇妙というべきだろう。

 少女の方は人と変わらない外見をしているが、明かり一つない真っ暗な森を難なく走っていた。障害物をよけて木の根につまづくことなく、まるで昼間のように。

「追っている気配はないが、暗視能力のあるお前さんの目で確認してくれ」

 それが少女、紫羅の能力であった。

「…。大丈夫みたいね」

 後ろを確認した紫羅しらは肩に視線を向けて、小さな相棒を見つめた。

 自分の名前すら記憶していない男は体調10センチしかない妖精だった。いや、妖精にしては鋭すぎる目をしているが。

 背に羽根があることと髪が赤いことから、紫羅は『丸虫』と名付けたがセンスのないネーミングに反対する様子もなく受け入れたらしい。


「深黒(前話で脱走の手助けをした少女)の話だと西に向かえば港町に着くって言ってたわね」

 走る足を止めたけれども、歩く足は止まらず2人は進み続ける。

「そうだけれども…どうするんだ?町に着いたところで」

「そうね。丸虫で見せ物にして稼ごうかしら」

「…」

 丸虫は不服の目を向けたが、口にしなかったのは物音を耳にしたからであった。

「丸虫、何か向かってくる」

「追っ手か」

 前方を見つめたまま紫羅は首を横に振った。

「それにしては、小さすぎる。身売り館に住む追っ手のエキスパート種族なら別だけど」

 ありえないようで、ありえる話であった。

 2人が収容されていた館は、珍しい外見や能力を持つ種族専門だから。

「でも、大丈夫かな…ある意味、大丈夫じゃないみたい」

「見えない人間にわかるように、説明してくれ」

「今、こっちに向かってくるのは、あたしたちより小さな子供なんだけれども…彼女、後ろにいる男達、5、6人かな、追われているのよ」

「…。それって、俺達と同じ、館脱走か?」

「さあ、可能性はあるわね。とにかく、助けるわよ」

 丸虫の『どうやって…』という問いに答える暇なく、紫羅は走り出した。

 闇中が見えない丸虫にも、たいまつの明かりが近づき、それが追っ手だということまでわかったが、紫羅の襟に捕まっているのが精一杯だった。

 いくら背中に羽根があるとはいえ、見えない闇の中に放されれば迷子になるのは目に見えている。

 幼子を捕まえるための怒号と、息を切らしながら走る幼子の音。それと上下左右、に動く紫羅で丸虫にとって何が何だかわからないまま、時が流れた。



 なので、丸虫が気がついた頃には、騒動は影も形もなかった。

「ここまで来れば、もう、安心」

「…うん」

 未だに闇の中でわからないことだらけだが、逃走仲間が一人増えたのは確かなようだ。



「逃げてきたんだな。この子の手を引いて、一緒に」

「そう。暗視能力を利用してね。明かりに頼らなければならない連中だから楽勝、楽勝」

「巻き込まれる方は、たまったもんじゃないぞ…で…」

 丸虫は紫羅の隣にいる少女に視線を向けた。…と、言っても誰も明かりを持っていない、暗い森の中。丸虫には小さな子供の輪郭すら見えず、そこに人の気配がするのが頼りだった。

「バンゼと申します。あの…本当に、安心してもいい方々なんですか…助けていただいたのに…すみません」

 『少し混乱しているが、気品を感じる口調…どこかの金持ちか貴族階級の子供じゃなかろうな…』と、丸虫は一抹の不安を覚えたが紫羅は…

「なぁに…いいってことよ。あたしらも館から脱走してきたんだから」

 気付く様子はなく、仲間ができた事に喜んでいた。

「私たちは、逃走仲間なんだから。握手して、森をぬけ出すわよ。ほら、丸虫」

 紫羅は丸虫を羽根をさわらないように器用に持ち上げ、両手を差し出すように頼んだバルゼの上にちょこんと乗せた。

「おい…握手とは呼べないだろう」

「丸虫の手じゃ小さすぎて無理じゃない」

「え…丸虫さんって、こんな小さな人なんですか?」

 手の重みで者の存在をしったバルゼは顔を近づけた。

「背中に羽がある妖精んだよ」

「え、本当なんですか。うわぁ…すごい、本物の妖精さんなんだ」

「感激しているところ悪いが、君が想像するかわいい姿はしていない。今、見えない方が幸せだと思うほどな」

「いいえ。そんな事はありません。丸虫さん、紫羅さんの声は恐い人の声じゃないのは確かです。だから、きっと、お姿も言い人の姿をしています」

 『君に断言されてもなぁ…』と苦笑するしかない丸虫であった。




 暗い森の中だが、追っ手を恐れ3人は森の中を進んだ。

 いや、正確には2人であった。闇中が見える紫羅がバルゼの手を引いて進み、丸虫はバルゼの肩にちょこんと乗っている。  

「街を歩いていたら、いきなり捕まって馬車に乗せられたの。隙をついて逃げ出したら…」

「私たちがいたっていうことね」

「うん」

 疲れた様子も見せず、歩き続けるバルゼに楽をしている自分が申し訳なく感じる丸虫であった。

「問題はなぜ、捕まったか、ということだな。バルゼは俺達みたいな奇妙な姿はしていないんだろう」

「うん…。きっと、誘拐してお金をだまし取ろるんじゃないかな」


 会話が一段落したところで、3人の進行も止まることにした。

 追っ手の気配はないが、どんな生物が潜んでいるかわからない森の中。紫羅が見つけだした大木の上で休むことにした。

「ちょっと登ったところに休めるくぼみがあるのよ」

「木の上って…バルゼは大丈夫なのか?」

「大丈夫です。木登りは大好きです。登りすぎて、ばあやに怒られています」

「…。だけど、今はそんなに寒くないが、朝方は冷えるし、風邪…って、おい、聞いているのか」

「平気だって。ほら、丸虫。そんな苦虫噛みつぶした顔していないで」

「丸虫さん、肩に乗りますか?」

 不安を消せない丸虫は、念のため辺りを見回したが不安は目に映らず、しぶしぶ自力で上がっていった。



「だから、俺は反対したんだ」

 小声で丸虫が反論したが、もう遅かった。

 下からの物音に気付いた時にはもう明かりが近づいてくるところだった。

 近づいてきた者たちは馬車と馬を使っての移動で、下手に動けばすぐに気づかれてしまう。相手の動きを待つしかなかった。

 まだ、相手がさっきの追っ手と決まったわけでもなく。向こうは木の上の存在に気付いてもいない。

 もし近づいてくるのが旅商人の集団、キャラバンならば便乗させてもらおうかと考えていたが…。

 現実は、そう甘くないようだ。

「いいか。交代で徹底的に捜せ。相手は子供だ、そんな遠くにはいない」

 バルゼを誘拐した一行は、よりによって3人のいる大木で休息をとり始めた。

『だから、俺は反対したんだ』という顔を紫羅に向けたが相棒はけろりとしていた。

『気付かれていないんだから大丈夫よ』という表情を浮かべた。

 下でたき火をしてくれているから、わずかに読みとることができたが、嬉しくはない3人であった。



「何かぬけだせる方法はないかしら」

 凍えながら紫羅が口にできたのは、追っ手2人を残して探しに出かけたからであった。

 その2人も1人は休み、1人は火の番をしているが船を漕いでいる。

「朝まで待った方がいいんじゃないのか?このまま気付かれなければいいんだから」

 丸虫は僅かな明かりでバルゼを見てから首を振った。

 疲労と子供寝る時間をすぎたらしく、とても夜通し歩くのは不可能なのは明らかである。

「でも、私が捕まって馬車が走っていた時間は一時間もありません。西にまっすぐ向かえばトンバラズの港町に着きます」

 首を振って歩こうとするけなげなバルゼに、紫羅は考え、決断した。

「私、港町までひとっ走りしてくる」

「は?」

「バルゼは誘拐されたんだから役人か、保護者を連れてくるのよ」


「………」

 紫羅はバルゼから預かったペンダントを握りしめて大木から降りていった。

 足の裏に猫の肉球でもあるのか、音一つたてずに。

「………………」

 残された丸虫は大いに不安だった。

 まず、紫羅が無事に捕まらずモンスター類に遭遇することなくたどりつけるのか。

 着いたとしても役人などの味方となる者達を連れてこられるのか

 バルゼは身代金目的の誘拐だが、バルゼの家はどのぐらいの地位があるかにも関係していた。貴族階


級以上ならば役人だってくるが。それに、善人地位じゃなければ…下手したら紫羅が『怪しい奴』として捕まる恐れだってある。

「………」

 それらがうまくいったとしても、戻ってくる前に下の連中に気付かれればアウトとなる。

「……」

 不安をあげればキリがなく、ため息をつく丸虫はバルゼの視線に気付いた。

「大丈夫ですよ。丸虫さん。きっと、うまくいってくれますよ」

 根拠のない言葉だが、今はうなづくしかなかった。

「寒くはないかい?お腹は?」

「平気です」

 バルゼに不安というものが見当たらず、丸虫はそれを口にした。

「丸虫さんがいるから、怖くないです」

「下の連中みたいに鋭い目をしているのにかい?」

「丸虫さんは良い人の目をしています。安心できる人です」

 もう少し会話を続けたかったが、下にいる追手がおもむろに立ち上がったので、息を潜めることにした。

 それは交代するための動作で、緊張を緩められない時間が続いた。


『紫羅の奴。洞窟を見つけてくれれば、バルゼを休ませることができたのに』

 先のことを考えていなかった相棒に、文句を頭の中で言ったが現状は変わることはない。

 それから数時間たったが紫羅が戻ってくる様子はなく、バルゼは限界まで達していた。



「バルゼ…寝相はいい方か?」

 必死に起きていようとするバルゼはうなづいた。

「木に落ちなければ、休んだ方がいい。何かあったら起こすから」

 バルゼはうなづき、そのまま眠りにはいった。

 しかし…たぶん家でやっているんだろう。人形を抱きしめて寝る習性が…。

「おい…」

 座ったまま眠りにつこうとするバルゼにとって人形以外に見えなかったらしく。簡単に捕まった丸虫は、なすすべもなくバルゼの胸元に引き寄せられていった。

「…」

 捕らえられたもののの、力はさほどなく、脱出は可能だが、丸虫は動こうとはしなかった。

『小さな娘が、事件に巻き込まれ心細いんだから、精神安定剤になるならば』

 という気持ちからであったが、遠く離ればなれにいる弟たちの存在を思い出したからでもあった。

 館に連れられたのは丸虫だけであり、もし安定した生活が送れるようであれば呼び出そうとしていたが、今は置き去りにしている。

『弟たちとバルゼをすり替えて自己満足しているだけにすぎないが…あいつら、元気にやっているんだろうか』

 闇の空を見上げていた事に気付き、丸虫は慌てて下に警戒した。


 時がどのくらい流れたのかはわからなかった。

 下の交代が3回ほど行われていたが、状況は何一つ変わらない。

「…」

 バルゼから抜けだした丸虫は、空を見上げた。

 闇は水で薄めたように淡く、夜が明けようとしている。

「紫羅は…現れないのか」

 丸虫はバルゼから抜けだして閉じていた羽を開いた。そのまま飛びだそうとした時、何かが揺らいだ。

「バッ…」

 座ったまま、熟睡していたはずのバルゼの上体が、そのまま木の上に倒れ、危うく落ちるところだった。

 本人にとっては寝返りをうつ感覚での動きだったんだろう。目を覚まして体勢を整え、何とか落下を避けることができた。

 しかし、ここが危険と隣り合わせにしている木の上であり、丸虫がわずかにあげた声も加わって、安眠は抹消されてしまった。

「あぁっ。上だ、木の上にいる」

「しまった…バルゼ上に登れ、早く」

 バルゼは、落下以上に危険な状態であることに理解するまで時間がかかった。しかし、混乱することはなく、丸虫の指示に従ってくれた。

「館に売られる時、武器の没収を防ぐためしまっておいたものだが、さすがにこの体長じゃあ、気付く者はいなかったな」

 そう言って、丸虫は懐から3センチにも満たない短剣を取り出した。

「ただ、これが役にたつか…」

 下にいる男たちは3人だが、こちらは妖精のみ。

「地の利を最大限に使うしかない」

 急降下した丸虫は小さな刃を、登り始めた男の眉間?に切りつけた。

「うわあぁっ」

 薄らぎ始めたがまだ闇の力は大きく、誰も丸虫の存在に気付く者はいなかった。

 突然現れた小さな驚異に気付けなかった男は、意図も簡単に落ちていく。

「な、何かいる」

 地面に激突しめいいっぱい声をあげてから、男は警告を告げようとした。しかし、痛みが走り血が流れている事に気付きさらに悲鳴をあげた。

 何が起こったのか、わからない男に対し、丸虫は今のように血管を狙って次にきりかかろうとした。はずだった。

 目の前が真っ暗になった。それが人間の手だとわかった時にはもう、丸虫は今までいた大木の幹に叩きつけられた。

「っ…」

 羽が多少のクッションとなったお陰で、丸虫はすぐに幹から離れた。

 どしんと音がして、蹴りつけた足が幹に着いたのはその直後である。

「怖がることはねえ、ただの虫一匹、切り落とせ」

 丸虫の存在に気付いた一人が声をあげ、残り二人も長剣をぬいた。

 触れれば致命傷につながる刃を上昇することで切り抜けて、最初にいたところで振り返った。

 誰か登ろうとするものなら、切りつけようと決めていたが、向こうもそれを恐れてか、罵声をあげ脅す程度でいた。

「丸虫さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫だが…長期戦になりそうだ」

 捜しにいった仲間を呼び戻す命令が耳に入ってきた。

 すぐに襲いかかってくる恐れはないが、時間の問題である。

「バルゼ、紫羅が戻ってくるまでの辛抱だ」

 登ってくる気配はなく、戻ってきた丸虫の言葉に不安な顔でうなづいたバルゼは、細くなったがまだ座れる枝に腰をおろした。

「寒くはないかい?腹は?」

 首を横に振って『大丈夫』と言ったものの、ほとんど聞こえなかった。

「バルゼ。俺がいる。絶対に守ってみせる」

「……うん」

 丸虫の鋭いが、強い目にバルゼは、うなづいた。それから、つのる不安を抑えたい一心から人形のように抱きしめた。

 丸虫も不平の声をあげることなく収まった?。



「…音がする」

 バルゼから離れた丸虫は、敵に気付かれないように大木を放れ、どどどどと響いてくる音の正体を捜した。


「あれは…馬、馬車…敵か…いや、違う」

 丸虫が敵以外の団体に確認がとれたころには、かなり近づいていた。

「バルゼっ。あれは、お前が知っている団体か?」

 戻り声を荒げたものの、近づいてくる馬車や馬の音にかきけされ、自分の耳すら聞き取ることはできなかった。

 バルゼも騒音に気付き、木の下から覗いてもわかるようになった。

「バルゼ。味方ならば、飛んで知らせてくる。このままでは気付かれる事なく通りすぎてしまう」

「………」

 身振り手振りで伝えようとする丸虫をみて、バルゼは大きくうなづいた。

 そして意を決して枝から飛び降りた…。

 丸虫の声は届いていなかったようだ…。

「バっ、落ちる」

 すでに落下しているバルゼを助けようと手を両手でつかみもち上げようと力をこめたが、そこは体長10センチの妖精。共に落下の道を歩むこととなった。





「落ちた先が馬車の荷台だったから良かったものの…。こっちは生きた心地しなかった」

 走り去っていく馬車と一行を見つめながら、丸虫は言葉を漏らした。

「まあ、二人とも怪我しなかったんだから。良かったじゃない」

 バルゼを救ってくれたので、是非保護者に会ってほしいと言われたが、それを断った。とはいえ、お礼はもらったが。

「本当に良かったの?一般市民はめったに入れないお城なのに」

 バルゼの正体。それは一国の王女しかも王位継承者でもあった。

 バルゼが将来女王になると聞いて、王国の未来に不安を持ったが、驚くだけにした。

『王女かもしれないけれども、丸虫さんたちとは、友達でいたいな』

 正体をあらわにしても、バルゼの言葉遣いは変わらなかった。もし、また会うことが出来たならば、そうなれたのかもしれない。

 とはいえ、その確立はあまりにも低すぎるが。

「城に興味はあるが、見せ物になるから嫌なんだよなぁ。

 そういう紫羅こそ。別に、お前さんだけ行ってきても良かったのに」

 丸虫の言葉に紫羅はにこっと笑った。

「忙しいからね。これから野望に立ち向かうから」

「野望?」

 紫羅は足を止めてにやっと笑い直した。

「私、決めたの。

 港町で盗賊になる」

 予想もつかなかった発言に丸虫も移動する事をやめた。こちらは、フリーズして動かなくなったからだが。

「なんでまた…盗賊に?」

「決たというより、勧められてられてね。バルゼ…王女の護衛する騎士隊長に。その能力は盗賊に適任しているって」

「…まあ、そうかもしれないが」

「それに港町にいた盗賊集団にものすごい派閥争いが起きて、しかも共倒れになって、壊滅状態でちょうどお買い得品な物件なのよ」

「不動産屋に勧められて、家を購入するのとわけが違うんだからな。

 しかし、国が盗賊を勧めるとはな。何を考えているんだか」

「裏事情も聞いたよ。

 いくら国側が法律とか作っても、裏でのらりくらりとかわされてしまうからね。町の秩序を整えるには、裏側からの力が必要なんだってさ。

 ましてや港町だから、他国から船を通して密輸品とかがどんどん闇の物流が流れてくる。盗賊が壊滅した今の港町は無法状態で、闇の物流は膨れ上がり、それに連なって治安は悪くなる一方。このままでは首都にまで感染してしまう。

 王国側としては、表向きは認められないが、任せられる者を置いておきたいってね」

「ふうん。で、お前さんは、そんなややこしくなっていく話に乗ったわけか」

「頼まれ金も、もらったことだし」

「…。それが狙いか?」

「違うわよ。おもしろそうだからよ」

 紫羅の言葉に丸虫は再びフリーズした。

「おいおいおい。『おもしろい』だけで、人生を賭けるつもりか。言っておくが、盗賊なんて、そんな簡単なものじゃないんだからな」

「あら、簡単な人生なんてないわよ。世の中『難しい人生』ならば、面白い方がいいじゃない」

「………」

 紫羅の言葉に、丸虫は苦笑するしかなかった。

「というわけで、丸虫。長く、大変かもしれないけれども、頑張ろうね」

 巻き込まれている事に苦笑する気力はなかった。

 丸虫はため息をつき、前方を見つめた。

 町は、間近に近づいていた。


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