6話 温室
―――「ここが温室よ」
私達は 護衛の騎士に開けて貰った扉から中に入った
「広い温室ですね 」
......クラウデレの反応がちょっと薄い気がする。
うちの温室はかなり広くて豪華だからもっと良い反応すると思ってた......
私のお気に入りの場所だからちょっと残念。
花とか興味ないタイプでつまらないのかな?
まぁ、男の子だし仕方ないかもね。
「公爵家自慢の温室よ 他の貴族家と比べても特に広くて大きい方で、色々な地方から取り寄せたお花も沢山咲いているの。この国の中でもここまで珍しいお花が揃っている家はそう無いと思うわ。」
「美しいお花ばかりですね。」
......今度も反応が薄い。
......今思ったけど、仮面してて見えてるのかな?
いや、見えて......るんだろうね?たぶん。
広さも分かってたし何ならここまで私についてきてるし
そういえば最初の庭園の時も父の後ろをちゃんとついてきてた。
不思議な子だなぁ。
「…」
「…」
うん。話す事が無い。
クラウデレもあれから黙ったままだ。
......やっぱりつまらないのかな?こっちの可能性の方が高いよね?
こんな時どうしたらいいんだろう......
今まで同じ歳の子達とまともに会話してこなかったせいで話が続かない......
花以外の会話のきっかけも思いつかないから
何を話したら良いか分からないんだけど......
気まずい......
まだ出会って間もないけど、何となくあの子も大人しいタイプの子な気がする。
私かあの子がもっとお喋りな子だったら良かったんだけど......
「えっと......せっかくだから温室を見てまわるといいわ。私はここで休んでいるから。」
―――とりあえず温室の中で別行動しておこう。
「分かりました。......少し見てきます」
そう言ってクラウデレは温室の奥に歩いて行った。
―――今のうちに紅茶とお菓子を食べてしまって、なるべく早く切り上げようかな?
平民の子供と一緒にお茶をする事は出来ないし、目の前で私だけお菓子を食べているのもなんだか悪い気がするから。
それに、こんな空気が後何時間もあるとかお互いに気まずいはず。
同じ歳の子とここまで話せる機会も私は少ないだろうから、もっと話せたら......という気持ちもちょっとあるけど、話す話題が無いなら仕方無いよね。
「紅茶とお菓子の用意をしてくれる?」
近くに待機しているメイド達にそう言うと
すぐに用意された。
紅茶は帝国産茶葉のアールグレイで透き通った綺麗なオレンジ色をしている
お菓子は美味しそうなチェック柄のクッキーと、いちごジャムのクッキーだ
私はこの紅茶とお菓子の見た目と味が好きで、よく食べている。
あの子とも一緒に食べられたら......
もっと会話も弾んだのかな......?
あの子も甘いものだったら好きかもしれない。
どのお菓子が好き?とか
美味しいクッキーでしょ?とか
綺麗な紅茶よね?とか―――
色々話せるんじゃないかな?
―――こっそりお菓子をあげてみよう!
お菓子ならこの気まずい空気をどうにか出来るかもしれない!
クラウデルが戻ってきたら
メイドや騎士達には「二人で遊びたいから」と説明して入口付近で待機してもらうようにお願いしたらいい。
入口付近から見えにくい温室の奥の方まで二人で行ってから
そこでお菓子をあげて、それをきっかけに話そう!
温室の出入口は一つしかないから護衛騎士達も頑張って説得したら了承してくれるはず!
―――よし。これだ、この作戦でいこう!
私はお菓子には手をつけずに、お気に入りの紅茶だけを飲み干した。




