17話 変化と眩しさ
※クーレ視点です。
僕達は二人で温室の奥に向かって歩き始めていた。
「い、いい天気ね......」
「そうですね、雲一つ無い快晴ですね。」
ご令嬢が話しかけてきた
僕なんかと話したくないんじゃないの?
まぁ気を使って誘ってくれたのかも。
優しい子ではあるんだろうな.........
僕がこんな奴じゃなければ平民だったとしても仲良く話していたかもしれない。
「えっと.........ここ!このお花!ガーベラと言って色の種類が多い綺麗なお花で
私が好きなお花だから、近くにベンチを置いてもらっているの。
いつもここで見てるんだけど......
今日は一緒にお花を見たいから......
あなたも一緒に座らない?」
え.........
おかしい、僕を嫌っていたんじゃないのか?
まぁきっとお世辞.........
………いや、本当にそうだろうか?
嫌な相手を隣に座らせようとするだろうか。
.........もし、嫌われてないとしたら?
.........この際、勇気を出してはっきりと聞いてみよう。
「僕は平民ですから...お嬢様のお隣に座るなんて......それに 他と違って仮面もしていますし......僕は気味が悪いでしょう?......気を悪くされたのでは......」
「そ、そんな事ないわ!いいのよ!そんなの気にしなくても!」
そんな事無い.........か。
気にしないで良いと言われたのは初めてだな.........
「ほら、お菓子も持ってきたの!あなたと一緒に食べたくて......
私もまだ食べてないから一緒に食べない?」
「僕と......一緒に......?
......よろしいのですか?」
「もちろん!ほら、あなたも早く座って!」
失礼します。と一言言ってから僕はご令嬢の隣に座った。
「はい、これあなたの分ね!」
そう言って僕にクッキーを一枚枚手渡してくれた。
ご令嬢はもう一枚の方を一口食べてから
僕に向かって声をかけた
「クッキー美味しいよ!」
淀みのない笑顔だ。
.........そうか、この子はきっと
平民とどう接していいのか分からなかったのかもしれない。
だからあまり話さないようにしてたのか
そして分からないなりに考えた結果、対等に接する事にした。
でも、それでは間違いだった時に騎士達の目があるとまずい。
だからバレないように騎士達を遠ざけた
誰にも見られないようにしたのか.........!
だから二人きりでと言い出したんだ
これなら全ての行動に納得がいく。
.........もしかして この子なら
僕とも仲良くしてくれるだろうか.........
僕はクッキーを受け取ると小さく一口かじった。
甘くて優しい味が口いっぱいに広がる
本当に美味しい。
美味しい物をわけてくれようとするこの子の心を信じてもいいかもしれない。
「はい すごく......とても美味しいです
えっと......お嬢様......レイデ様...はこのクッキーがお好きなんですか?」
レイデ様は対等に接したいだけなのではという予想を信じて
僕は勇気を振り絞って聞いてみた。
「ええ!そうなの!」
レイデ様が僕に向かって笑いかけた。
あぁ、良かった.........あってたんだ。
本当に変わった人.........
無意識に仮面の下でフッと笑みがこぼれる。
ガーベラの花に囲まれて笑う少女がとても眩しく見えた。
心なしか花も輝いているように見える
―――綺麗だ。
今まで見た何よりも。
.........はっ
少し遅れて思い出したかのように
「そうなんですね 」
と軽く相槌を打った
相槌を返すのが少し遅れてしまった。
おかしく思われていないかと思い、隣を見ると.........
レイデ様は気にしていない様子で
残りのクッキーを口に放り込んでいた。
そろそろ時間だろう。
温室を少し見て来ると言っただけだから時間をかけすぎると騎士達が心配して見に来るかもしれない。
このクッキーを食べ終わったら戻る事になるだろう。
「またお話ししたいです。」
―――「......ん?今何か言った?」
あ.........
言うつもりは無かったけど声に出してしまったみたいだ。
「いえ、何も。」
僕は焦ってそう言うと、食べかけだったクッキーを口に入れた。
「そう?」
―――……
こっそり二人で食べた優しいクッキーの味
差し込む太陽の光で輝きながら
揺れるガーベラの花を
僕は忘れない。
出来る事ならレイデ様の眩しいあの笑顔を
僕はこの先ずっと―――。




