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微熱の道化師  作者: だぶまん
微熱の道化師(異世界編)
6/15

6.「正義の味方」

村長の話によると偽り村は潜在的な地下資源が多く、ヘルニア国領ではあるがリン国としても放っておけない重要な場所でもあるという。


宿屋に帰ると店主が出迎えてくれた。太郎の部屋は2階にあるが1階は食事場兼受付ロビーになっていた。

せっかくヘルニア国から来てくれたのだからと店主は今夜の食事は特別だと豪勢な料理が食卓に並んでいた。

太郎のおなかがg〇ogle鳴った。


一通り食事を楽しんだ調査団一行は早々に2階に上がった。旅の疲れか皆各部屋で泥のように眠った。

翌日、調査団の兵士が数名居なくなっていた。

調査団は“仕事を増やすなよ”と愚痴をこぼしながら行方不明の調査員と兵士を見つけるため周辺捜索を始めた。

村人への聞き込み、村の整備状況の確認、太郎も兵士に偽り村の隅から隅まで調査を行ったが一向に見つからなかった。

村の中央に立つ像が奔走する調査団に影を落とした。

この日も行方不明者は見つからなかった。

村人は依然として手厚く調査団をもてなされあまりの居心地の良さにもうここにずっといていいのではないかと錯覚し始めていた。

太郎はいつものように宿で眠りにつく。そして夢を見た。


「おまも像にしてやろうか」


夢の中で太郎の前に立ちはだかっていたのは偽り村の村人たちだった。

行方不明となった調査員を象ったような石像が村人たちに紛れるように立っていた。

抵抗する太郎だったが、やがてつま先からじわじわと体が動かなくなっていく。どうにもできない太郎にヘルメットから声が聞こえた。


“目を覚ませっ!”


しかし、太郎はこれが夢だということに気付くことができていない。ヘルメットからもう一度声が聞こえた。


“だ〇まんのNFT全然売れてないじゃないか”


「あーーーーーーーー」


太郎は悲鳴とともに目覚めた。太郎は緊縛状態だった。周りを見ると驚く村人たちがいた。

そしてこれから太郎に着けられるだろう目隠しが宿の店主の手に握られていた。


「失敗じゃあっ。」


村人の一人がそう叫ぶと他の村人たちが太郎の部屋から逃げ出す。

太郎の胴体にロープが亀甲縛りできつく締め付けられていた。

村人たちを追いかけるため慌てて外に出た弱者太郎だったが、


「あともう少しだったのになあ。」


という声とともに背の高い怪物が太郎の前に現れた。


「誰だっ!」


そう叫んだのは太郎である。


「君のお友達もこっちで待ってるみたいだよ」


そういうと怪物は後ろで石像となっている調査団たちを見せた。そして不安げな表情でそっと村人たちも姿を現せた。

どうやら偽り村の住人はこの怪物とグルだったらしいことを太郎は察して村人を罵倒した。


「卑怯者たちめっ!」


怪物はケタケタと笑いながら村との関係について説明し始めた。

どうやらこの村はすでにリン国に忠誠を誓っておりその証明としてヘルニア国からくる調査団を襲っていたらしい。

「お前もここで消してやる」と怪物は弱者太郎に襲い掛かった。太郎はもうだめかと思い目をつむってしまったが何も起きない。

恐る恐る目を開けて見たのは体を震わせている怪物の姿だった。


何事かと思い様子を見る太郎。

すると怪物は太郎に向かって


「なぜコ・イカゲ様のマーキングがあるんだ。」


と食い気味に尋ねた。

太郎は膝にコ・イカゲの矢を受けたと怪物に説明すると


「私よりも先に寵愛を受けるな。下郎。」


と怪物はひどく憤慨した。


「覚えておけ小僧。コ・イカゲ様の寵愛を最も受けるべき存在はこの私、ミ・セイネン=キツエンだっ。」


そういうとキツエン(ミ・セイネン=キツエン)は一回り大きくなった。そしてキツエンの強烈なパンチが太郎を襲った。

しかし、とっさに太郎はダイセイオンを放ちキツエンをたじろがせた。

キツエンは少し驚いたが、何やら理解したようなニヤついた顔で再度太郎にパンチを繰り出した。


太郎は再びダイセイオンを出そうとするが、技は出なかった。なぜでなくなったのか困惑していたがその間にキツエンのパンチがあたり

太郎は亀甲縛りが解けるとともに勢いよく吹っ飛ばされた。


太郎が飛ばされた先は運よくゼン・ニン兄弟の家でゼン・ニン兄がちょうどベッドで寝ていたところだった。

体の動かない太郎は瀕死の状態だったが、おどろいていたゼン・ニン兄は太郎の体の状態を見るなり治癒魔法で応急措置を施して何とか太郎を立ちあがらせた。

太郎はゼン・ニン兄に事情を聞かれた。事情から状況を理解したゼン・ニン兄は一度地下に潜りしばらくして戻ってきた。


「これは、失敗作じゃが無いよりはマシじゃろう」


ゼン・ニン兄はそういうと風呂敷きを差し出した。太郎は中身を見るなり興奮した。


一方そのころ、キツエンはまだイラ立っていた。村人たちに太郎を探すように命令したキツエンだったが一向に探し出せない状況にうんざりしていた。

早くしないとお前も像に変えちゃうぞ☆彡と村人たちを脅すキツエン。するとそこに第一声がとどろいた。


「この世に悪がある限り、正義の味方は駆けつけるっ!!」


どこから聞こえるのかあたりをきょろきょろと見回すキツエンと村人たち。そしてそれを宿のバルコニーから見下ろす弱者太郎がいた。


「偽り村の人々を恐怖で支配し、ヘルニア国を危機に陥れる悪行。私が許さん。」


キツエンはここでやっと人型の影を視認する。とっさにキツエンは「誰だっ!」と聞き返す。


「ふはは、教えてやろう。正義の味方、クイックボーグ(QB)!」


太郎は満足感を得ていた。本物には程遠いが自分のなりたい姿で成りたいヒーローを演じきれたからだ。

キツエンはしばらくそのクイックボーグに脅威を感じたが、明りに照らされて太郎の姿が鮮明になるとキツエンは冷静になったと同時に笑いが込み上げてきた。


「何がクイックボーグだ笑わせるな。まあ、でもお前を見つけられたから手間が省けたわ。村人使えねぇな。お前ら石像にするわ。」


キツエンはそういうと指を鳴らした瞬間偽り村の村人が石像に変わった。太郎は「やめろっ!」とキツエンに懇願したが、

「お前を倒したら元に戻してやるよ」と言いながら太郎に向かって鋭い手刀をぶつけた。

太郎はステップで避けたが、後ろには手刀をもらい壊れた住人の石像の破片が散乱していた。

太郎はうなだれた。キツエンと太郎との間にあるすさまじい力の差に勝てる見込みがないこと。そして何より村人を傷つけてしまったことに絶望してしまった。

そんな太郎を見たキツエンは「そんな暗い顔すなよ」とニタニタと笑いながら像になった村人たちを破壊し始める。


「いいこと思いついた。」


キツエンは指を鳴らす。像になった村人の顔だけをもとにもどして喋れるようにする。


「こうすれば悲鳴も聞こえるし、お前の絶望した姿も見れるからお得だよなっ!」


破壊される自身の体に村人たちは悲鳴を上げる。

太郎は「やめろっ!」とキツエンの体にしがみつくがすぐに振り払われる。


"俺は無力だ“


弱者太郎はキツエンとの闘いに負けることを悟ってしまった。


みんなの応援で弱者太郎とか村人を救うんだ!

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