K.24 「道具」(AIが要約)
「勇者の化身……なんと滑稽な」
ユウ・ゲは、炎の巨人と化した『勇者の化身』を、ニヤつくような声で嘲笑った。
その言葉が言い終わるか終わらないかのうちに、勇者の化身は暁の城の巨体を殴りつけていた。地響きと共に、暁の城がわずかに後退する。
即座に、暁の城もまた勇者の化身を複数の腕で殴り返した。
ゴウ、ゴウ、と、二体の巨人が拳を交えるたびに、衝撃波で周囲の大地が揺れる。
しばらくの殴り合いが続いた後、ふいに暁の城の全身から、不気味な紫色の魔法陣が無数に浮かび上がった。
勇者の化身はその魔法陣に攻撃を加えるも、まるで幻影を殴っているかのように、拳は虚しくすり抜ける。
逆に、魔法陣から放たれる衝撃波が、勇者の化身の装甲をじりじりと削っていく。
「……強い」
弱者太郎は、操縦桿を握りしめながら、ぽつりと言った。
「物理攻撃だけじゃ、きっと倒せないわ」
隣で、アリスが冷静にアドバイスをする。
太郎はそれならばと、こちらも対抗するように魔法陣を展開し、相殺を狙った。だが、勇者の化身から放たれた魔法陣は、まるで脆いせんべいのように、暁の城の魔法陣に触れた瞬間にぽろぽろと剥がれ落ちてしまった。
「だめだ、効かない……!」
格の違いを悟り、諦めかけた太郎に、アリスが言った。
「なんで、崖を攻撃しているの?」
その言葉に、太郎ははっとした。モニターに映る視界では、自分は確かに暁の城を攻撃しているはずだ。だが、アリスの目には、あらぬ方向を攻撃しているように見えている。
太郎は察した。これは、かつてコ・イカゲが使っていた魔術と同様の、強力な精神干渉――洗脳術だと。
「やっぱ親族だな……」
そう言うと、太郎はアリスに自分の視界が奪われたことを説明した。それを聞いたアリスが「私が、あなたの目になる」と言ったのは、必然だったのかもしれない。
動きを止めた勇者の化身に、ユウ・ゲは自身の勝利を確信した。そして、暁の城から出る無数の触手が、最後のとどめを刺さんと勇者の化身を襲った。
「これで終わりだ」
そう思ったのも束の間、勇者の化身は神速の動きで触手を掻い潜り、気づけば暁の城を見上げるような状態になっていた。否、見上げているのではない。
暁の城は、首から下を完全に破壊され、頭部だけになっていたのだ。
「洗脳が効かない……!?」と、ユウ・ゲは疑問に思ったが、その謎は、隣に座るアリスの存在を思い出すことで理解ができた。
悔しそうに、ユウ・ゲは「アリスの目を使ったな……!」と言った。
弱者太郎は「最高のコンビネーションだっただろう?」と、得意げな声で返した。
優越感に浸る弱者太郎だったが、その時、破壊された暁の城の頭部から、ユウ・ゲ本人が姿を現した。そして、彼女は一言、
「お父様!」
と、天高く叫んだ。すると、天からユウ・ゲを指し示すように、一筋の光が現れた。空から降ってきたのは、この世界の創造主、オトギゾウシである。
「おお、娘よ。こんなところで嘆くとは情けない。力ある者の叫びではないな」
「私では、お父様のお役に立てませんでした。どうか、私をお救いください」
ユウ・ゲはオトギゾウシに助けを求めた。しかし、オトギゾウシは冷ややかに告げる。
「私はお前の創造主であって、決して父親ではないのだよ。お前を助けることは道理ではない」
その言葉に、ユウ・ゲは絶望したように問いかけた。
「ではなぜ、私を創造されたのですか」
「答えは簡単だ。都合がいいからである」
オトギゾウシは、きっぱりとユウ・ゲに言った。
ユウ・ゲは涙を浮かべながら、「それでも……それでも私は、あなたの娘です」と言うと、オトギゾウシは、まるで慈悲をかけるかのように返した。
「安心しろ。お前は、私のための立派な魔具人形となるのだ」
ユウ・ゲは驚いた表情をしたが、その姿はオトギゾウシの言葉によって、一瞬で形を変えさせられた。悲鳴を上げる間もなく、彼女の肉体は膨張し、歪み、機械と融合していく。
そして、オトギゾウシは、そのおぞましい変貌を満足げに見下ろしながら、低い声で唸るように言った。
「紹介しよう。世界最高の魔具人形――『魔王城』だ」




