K.22 「異物な敵」(AIが要約)
谷底の崩落から脱出し、地上へと帰還した乙女の棺。その安堵も束の間、目の前に現れたタコ型の巨人が、静かに口を開いた。
「モグラが顔を出したよ」
その声は、まるで世界の理そのものを語るかのように、抑揚がなく、冷徹だった。乙女の棺は、崩落の際に浴びた土埃を被ったまま、確かにモグラのように茶色に染まっていた。弱者太郎とアリスは、息を殺して眼前の巨人を睨みつける。その威容は、これまで対峙してきたどの魔具人形とも比較にならない、圧倒的な存在感を放っていた。
「誰」
沈黙を破ったのは、乙女の棺越しに問いかけたアリスの声だった。その問いに応じるように、巨人の頭らしきところが、まるでフードを脱ぐかのようにふわりとなくなり、中から人間の男女が現れた。彼らは、巨人の内部に悠然と佇んでいた。
男は、静かに言った。
「我が名はオトギゾウシ。この世界の創造主である」
続いて、女が、傲然と告げた。
「我が名はユウ・ゲ。創造主の生み出した、唯一無二の王である」
創造主――その言葉の持つ意味を、弱者太郎は瞬時に理解できなかった。だが、目の前の男が、この世界の理の外側に立つ、絶対的な存在であることだけは肌で感じ取れた。
「この世界の創造主……ならば、なぜこんな世界にした!」
弱者太郎は、抑えきれない怒りを込めて問いかけた。人間と魔族が争い、数多の命が失われていくこの歪んだ世界。その元凶が目の前にいる。
「この世界は、終焉を望んでいる」
オトギゾウシは、淡々と答えた。まるで、他人事のように。
「ユウ・ゲに任せた。弱者太郎よ、必死にあらがえ」
オトギゾウシはそれだけ言うと、その体は塵のように霧散し、跡形もなく姿を消した。
なぜ、弱者太郎の存在を知っているのか。なぜ、わざわざ目の前に現れたのか。そして、なぜ戦うことを促すような言葉を残したのか。無数の疑問が弱者太郎の頭を駆け巡る。だが、考える暇もなく、その巨人は再び動き出した。
「我が魔具人形の名は『暁の城』」
ユウ・ゲは、まるで女神が下僕に語り掛けるかのような尊大な口調で言った。
「お前たちのその粗末な魔具人形、片腕で粉砕してやる」
ユウ・ゲはそういうと、暁の城からその言葉を証明するかのように、腕を一本、蛇のようにしならせながら大きく突き出した。その腕は鞭のように空を走り、乙女の棺めがけて振り落とされた。
「くっ!」
乙女の棺は咄嗟に腕で防御したが、直撃の瞬間、大地が揺れた。ズシン、という轟音と共に、乙女の棺が立っていた地面には巨大なクレーターができている。そして、攻撃を受け止めた乙女の棺の腕は、関節から無残に引きちぎられ、火花を散らしながら地面に転がっていた。
「魔力が足りないんだ……!」
弱者太郎は、操縦桿を握りしめながらうめいた。自分が人間の体に戻ったことで、ペンライトだった頃のように膨大な魔力を蓄積し、供給する能力が著しく低下していることに、今更ながら気づいたのだ。それによって、乙女の棺の外にまとっていた防御魔法の層が、紙のように薄くなっていたのだった。
片腕を失い、バランスを崩して膝をつく乙女の棺。その無様な姿を見て、暁の城の中から、ユウ・ゲは満足げににやりと笑った。絶望的な戦力差。それは、これから始まる世界の終焉の、ほんの序曲に過ぎなかった。




