K.21 「キュービーに明かされる真実」(AIが要約)
アリスの慟哭が静かに響く審判の間で、キュービーは目の前の光景に釘付けになっていた。クイックボーグ、ウルティマヘヴン、そして――無数の、ありとあらゆる姿の「自分」。
そのシュールな光景に思考が停止していると、大きく透き通った岸壁の中にいる弱者太郎の一人が、こちらを見て嘲るように言った。
「まだ生きてたのかよ。お前はどこまでやれるんだろうな」
「どこまで……?」
キュービーは、意味が分からず聞き返す。すると、弱者太郎たちは一斉にケタケタと笑い出した。
「なーんにも知らないのな、お前」
「何がおかしい!」
キュービーが苛立ちを滲ませて問うと、弱者太郎たちはまるで自慢話でもするかのように、次々に己の末路を語り始めた。
「俺は孤児院で暗殺されたわ」
「俺はヘルニア国への潜入に失敗して処刑」
「マスター・フォールに負けたのが俺だな」
何が何だかわからない。彼らが語るそれは、自分が辿ったかもしれない、無数の「if」の結末。キュービーは、ただただ混乱していた。
「説明しよう」
その声は、本物のクイックボーグ――ジナンだった。彼は静かに口を開いた。
「『終わりとはじまりの場所』は、この世界で葬られた者の魂が集められ、再び転生を待つ場所だ。まだ使命を全うできていない者は、再び活力を入れられて蘇生する。魔力入りだがな」
「……」
「本来であれば、使命を果たした魂は、全く別の人物として現世に転生する。だが、ここに不思議なことが起こっている。転生を待つ弱者太郎が、何十人もいるということだ」
何が言いたいのか、さっぱり伝わらない。キュービーは痺れを切らした。
「結局、何が言いたいのさ!」
クイックボーグは腕を組みながら、淡々と答えた。
「君の使命は、まだ全うできていないということだ」
その言葉と、現状がうまくかみ合っていない。使命のある者は蘇生し、果たした者は転生する。それなのに、なぜ使命を果たしたはずの「弱者太郎」が、複数、転生を待っている?
この矛盾に、キュービーは疑問を思った。
「なぜ、弱者太郎たちは転生できていないんだ」
「それは、君がいわゆる世界の救世主――つまり“バグ”だということだ」
クイックボーグの言葉に、キュービーは驚愕した。だが、これまでの何でもありな冒険の流れを思い出し、妙な納得感もあった。彼はため息をつき、ではどうすれば良いかと尋ねた。
「それは知らない。でも、君は強くなる」
クイックボーグは、ただそう言った。
その時、超越的な声が再び響き渡った。
「正直、この弱者太郎たちを増やすのはめんどくさかったんだよね。審判の時だ。もとの姿に戻れ」
ドンッ!
ペンライトだったキュービーの体に、凄まじい衝撃が走った。視界が真っ白になり、意識が遠のく。
次に気が付くと、彼は地面に立っていた。自分の手を見る。ピンク色の消しゴムではない、見慣れた人間の手。恐る恐る体を触る。そうだ、この感触だ。
「も、戻った……!」
キュービーは戸惑いながらも、自分の体が元の体に戻ったことに、心の底から喜んだ。ちなみに、顔にはクイックボーグのヘルメットが固着したままである。
アリスは、突然ペンライトが人間になったこの出来事に驚いていた。
「怖がらないで、これが私の本当の姿だ」
弱者太郎はアリスに弁明するが、アリスは若干引き気味の顔を見せつつも、「よかったね」とドライに返事をした。
「弱者太郎。我々はこれから転生する。またどこかで会おう」
クイックボーグはそう言うと、ウルティマヘヴンと共に、別れの印のように拳を弱者太郎に向けた。そして、その姿は光の粒子となって消えていった。
「一つだけ」
ウルティマヘヴンだけが、まだそこにいた。
「私の力の源は悪を憎む心だったが、MUGEN-01は固着者の心に共鳴する。可能性は無限だ。健闘を祈る」
そう言い残すと、ウルティマヘヴンもまた、静かに姿を消した。
審判が終わり、その場は完全な暗闇に包まれた。しかし、しばらくすると、ゴゴゴゴ……という轟音と共に、再び光が差した。地震だった。谷底の空間そのものが崩れ始めている。
弱者太郎は、瓦礫が降り注ぐ中、とっさにアリスの手を強く引っ張って、乙女の棺に乗り込んだ。
太郎が予備設備の操縦桿を握ると、まるで彼の帰還を待っていたかのように、乙女の棺の足元から眩い魔法陣が光った。
そして、閃光と共に乙女の棺は凄まじい勢いで上昇し、崩落する谷底から脱出して地上へと戻った。
安堵したのも束の間、目の前には、空を覆い尽くすほどの巨大な影が現れた。それは、タコ型の巨人だった。




