K.20 「審判と和解」(AIが要約)
青白い光に満たされた神秘的な空間で、超越的な声が響き渡った。
「魔族の作りし人間の子よ。目覚めよ」
その言葉が合図であったかのように、乙女の棺が腰を下ろした祭壇から、膨大で、しかし温かい魔力が溢れ出すのをキュービーは感じた。それは、まるで生命の源流に触れるかのような、清浄なエネルギーだった。その力が、コックピットで眠り続ける少女の体へと、優しく注がれていく。
しばらくすると、ぴくり、と謎の少女Q――アリスの指がかすかに動いた。やがてゆっくりと瞼が持ち上がり、虚ろだった瞳に、徐々に光が戻り始めた。
「アリス!」
思わず、といった風に、岸壁に佇むコ・イカゲが娘の名前を叫んだ。その声は、かつての冷徹な魔族のものではなく、ただ娘を想う父親のそれだった。
「パ、パ……?」
アリスは、その懐かしい声に反応するように、か細い声を漏らした。ゆっくりと上半身を起こし、混乱した様子で周囲を見回す。
「あれ……私は、センキと戦って……。ここは……?」
アリスは戸惑いながらも、今の状況を必死に理解しようとした。自分の記憶の最後と、目の前の光景が結びつかない。
「なぜ魔族と戦う」
再び、あの超越的な声が響いた。審判は、すでに始まっていた。
アリスは声の主を探すようにあたりを見回したが、やがて諦め、問いに答えるべく口を開いた。
「それは……パパの願いを叶えたかったから。人間と魔族が共存する世界を、見てみたかった」
その答えは、純粋で、しかしどこか儚げだった。
「人間と魔族はどこまで行っても分かり合うことはないのは事実だ。それでも戦う理由はなんだ」
声は、さらに核心を突くように、再び問いを投げかけた。
「パパのしたことは間違いじゃないということを、証明したい!」
アリスは答えた。その声には、先程よりも強い意志が宿っていた。そうだ、彼女はただ父の夢を追っていただけではない。
イカゲの死後、リン国で受けた裏切りと屈辱。その仕打ちへの復讐心もまた、父の願いを実現させるという形で昇華させようとしていたのだ。
「それは、自分の意志でやっているんだな」
声がアリスに確認するように聞くと、彼女は力強くこくりとうなずいて、その意思を示した。
「アリス……お前は、優しい子になったな」
今度は、イカゲの温かい声が聞こえた。その声色には、娘の成長を目の当たりにした父親の、深い安堵と誇りが滲んでいた。
それを聞いたアリスは、はっとした顔をして、声のした方角を振り向いた。「パパ!」と、今度ははっきりとした声を出した。
アリスは、大きく透き通った岸壁の中に佇むコ・イカゲの姿をその目に捉えると、一目散に駆け寄った。だが、その手は水晶のような壁に阻まれ、父に届くことはない。
「アリス、私はもうお前に触れることはできない。だが、お前の成長を感じて、満足したよ」
イカゲが優しく言った。その影は、悲しげに、しかし慈愛に満ちた笑みを浮かべているように見えた。
「パパ、私、頑張ってるよ!仇もとるから!」
アリスは、涙で滲む視界の中、震える声を絞り出すように言った。父が討たれた無念を晴らすこと。それもまた、彼女を突き動かす大きな原動力だったのだ。
「仇をとる必要はない」
だが、イカゲは静かに首を振った。
「お前が見ている夢は、私よりも大きな夢だ。早くその夢を叶えなさい」
イカゲは、ただ優しく言った。彼の姿が、陽炎のように揺らめき、徐々に薄れ始めていく。
「待って!」とアリスは引き留めたが、その声も虚しく響くだけだった。
「私の愛するアリス。
運命は残酷だ。
それでも君は強い。
そこにいる戦友も頼れ。必ず、夢はかなう」
その言葉を残して、コ・イカゲの姿は完全に光の中へと消えていった。
アリスは、父から受け取った最後の言葉と、伝えきれなかった万感の想いを胸に刻み付けながら、込み上げてくる感情を抑えきれず、その場で泣き崩れた。
「彼は順番通りに旅立った。次の審判だ」
またどこからか声がした。
アリスの慟哭が響く中、大きく透き通った岸壁から、再び眩い光がこぼれた。光が収まると、そこには複数の人影が現れていた。
一人は、師の遺志を継ぎし正義の戦士、クイックボーグ(ジナン)。
もう一人は、復讐の果てに弟と再会した黒衣の戦士、ウルティマヘヴン(イチロ)。
そして――段ボールの鎧を纏った者、ファンシーなぬいぐるみ、ただのペンライト、その他、様々な姿形をした、無数の弱者太郎たち。
「What's?」
キュービーは、そのシュールで、あまりにも理解不能な光景に、目を丸くした。




