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微熱の道化師  作者: だぶまん
微熱の道化師(異世界帰還編)
44/50

K.20 「審判と和解」(AIが要約)

青白い光に満たされた神秘的な空間で、超越的な声が響き渡った。

「魔族の作りし人間の子よ。目覚めよ」

その言葉が合図であったかのように、乙女の棺が腰を下ろした祭壇から、膨大で、しかし温かい魔力が溢れ出すのをキュービーは感じた。それは、まるで生命の源流に触れるかのような、清浄なエネルギーだった。その力が、コックピットで眠り続ける少女の体へと、優しく注がれていく。

しばらくすると、ぴくり、と謎の少女Q――アリスの指がかすかに動いた。やがてゆっくりと瞼が持ち上がり、虚ろだった瞳に、徐々に光が戻り始めた。

「アリス!」

思わず、といった風に、岸壁に佇むコ・イカゲが娘の名前を叫んだ。その声は、かつての冷徹な魔族のものではなく、ただ娘を想う父親のそれだった。

「パ、パ……?」

アリスは、その懐かしい声に反応するように、か細い声を漏らした。ゆっくりと上半身を起こし、混乱した様子で周囲を見回す。

「あれ……私は、センキと戦って……。ここは……?」

アリスは戸惑いながらも、今の状況を必死に理解しようとした。自分の記憶の最後と、目の前の光景が結びつかない。

「なぜ魔族と戦う」

再び、あの超越的な声が響いた。審判は、すでに始まっていた。

アリスは声の主を探すようにあたりを見回したが、やがて諦め、問いに答えるべく口を開いた。

「それは……パパの願いを叶えたかったから。人間と魔族が共存する世界を、見てみたかった」

その答えは、純粋で、しかしどこか儚げだった。

「人間と魔族はどこまで行っても分かり合うことはないのは事実だ。それでも戦う理由はなんだ」

声は、さらに核心を突くように、再び問いを投げかけた。

「パパのしたことは間違いじゃないということを、証明したい!」

アリスは答えた。その声には、先程よりも強い意志が宿っていた。そうだ、彼女はただ父の夢を追っていただけではない。

イカゲの死後、リン国で受けた裏切りと屈辱。その仕打ちへの復讐心もまた、父の願いを実現させるという形で昇華させようとしていたのだ。

「それは、自分の意志でやっているんだな」

声がアリスに確認するように聞くと、彼女は力強くこくりとうなずいて、その意思を示した。

「アリス……お前は、優しい子になったな」

今度は、イカゲの温かい声が聞こえた。その声色には、娘の成長を目の当たりにした父親の、深い安堵と誇りが滲んでいた。

それを聞いたアリスは、はっとした顔をして、声のした方角を振り向いた。「パパ!」と、今度ははっきりとした声を出した。

アリスは、大きく透き通った岸壁の中に佇むコ・イカゲの姿をその目に捉えると、一目散に駆け寄った。だが、その手は水晶のような壁に阻まれ、父に届くことはない。

「アリス、私はもうお前に触れることはできない。だが、お前の成長を感じて、満足したよ」

イカゲが優しく言った。その影は、悲しげに、しかし慈愛に満ちた笑みを浮かべているように見えた。

「パパ、私、頑張ってるよ!仇もとるから!」

アリスは、涙で滲む視界の中、震える声を絞り出すように言った。父が討たれた無念を晴らすこと。それもまた、彼女を突き動かす大きな原動力だったのだ。

「仇をとる必要はない」

だが、イカゲは静かに首を振った。

「お前が見ている夢は、私よりも大きな夢だ。早くその夢を叶えなさい」

イカゲは、ただ優しく言った。彼の姿が、陽炎のように揺らめき、徐々に薄れ始めていく。

「待って!」とアリスは引き留めたが、その声も虚しく響くだけだった。

「私の愛するアリス。

 運命は残酷だ。

   それでも君は強い。

    そこにいる戦友も頼れ。必ず、夢はかなう」

その言葉を残して、コ・イカゲの姿は完全に光の中へと消えていった。

アリスは、父から受け取った最後の言葉と、伝えきれなかった万感の想いを胸に刻み付けながら、込み上げてくる感情を抑えきれず、その場で泣き崩れた。

「彼は順番通りに旅立った。次の審判だ」

またどこからか声がした。

アリスの慟哭が響く中、大きく透き通った岸壁から、再び眩い光がこぼれた。光が収まると、そこには複数の人影が現れていた。

一人は、師の遺志を継ぎし正義の戦士、クイックボーグ(ジナン)。

もう一人は、復讐の果てに弟と再会した黒衣の戦士、ウルティマヘヴン(イチロ)。

そして――段ボールの鎧を纏った者、ファンシーなぬいぐるみ、ただのペンライト、その他、様々な姿形をした、無数の弱者太郎たち。

「What's?」

キュービーは、そのシュールで、あまりにも理解不能な光景に、目を丸くした。


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