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微熱の道化師  作者: だぶまん
微熱の道化師(異世界帰還編)
43/50

K.19 「終わりとはじまりの場所」(AIが要約)

これで運も尽きたか、とキュービーは思った。最後の切り札であった『ミ・マモーレ』も使い切り、乙女の棺は満身創痍。純白だったはずの装甲は無数の傷で覆われ、もはや立つことすら覚束ない。

しかし、目的地もまた、近かった。というより、この谷底の真下だったのだ。ビーコンの光は、足元で「ここだ」と訴えるかのように、激しく明滅を繰り返している。

「……冒険してみますか」

キュービーは覚悟を決め、呟いた。その言葉に応じるように、乙女の棺は制御を失ったかのようにふらつきながら、谷底へとその身を投じた。

「ドズンッ!」

鈍い着地音が、静寂に包まれた谷底に響き渡る。衝撃で機体の各所が悲鳴を上げたが、なんとか原型は保っている。暗闇をライトで照らすと、目の前の岸壁が、まるで巨大な水晶のように、

大きく透き通った壁となって現れた。依然としてビーコンは、ここが目的地であると強く点滅して主張している。

ふと、キュービーは周囲があまりにも静かになったことに気づいた。風の音も、虫の声も、何も聞こえない。まるで世界の音そのものが消え失せたかのような、絶対的な静寂。

その静寂を破るように、どこからか声が聞こえる。

「人の子よ。なぜここに来た」

荘厳で、性別も年齢も判別できない、超越的な響き。キュービーは周りを見回すが、姿は見えない。

「誰だ」キュービーはその声の主に何者かを聞いた。

「ここは終わりとはじまりの場所。生きる者には要はない」

姿が見えないものの声に、らちが明かないと感じたキュービーは、自分の要求だけをその声の主に伝えた。

「操縦席に女の子がいる。起きないんだ。助けてくれ」

しばらくの沈黙の後、声は再び響いた。

「お前たちには“終わり”を感じない」

その言葉の真意を測りかね、キュービーは操縦席のハッチを開けた。眠ったままの謎の少女Qの姿を、暗闇の中に晒す。これが事実であることを、何とか伝えようとしたのだった。

すると今度は、先程とは違う、焦燥に満ちた声が聞こえた。

「お前は……アリス、アリスなのか!」

「誰だ」

キュービーがその声の主を探した、その時だった。大きく透き通った岸壁から、陽炎のようにゆらりと黒い影が現れた。

それは、かつてキュービー(弱者太郎)と対峙し、その手で葬られたはずの魔族――コ・イカゲだった。

「なぜ娘がここに来た。まさか、死んでしまったのか」

イカゲは、苦痛に満ちた声で乙女の棺に問いかけた。その影は悲しみで震えているように見えた。

「死んではいない。ただ眠っているだけだ。魔力の使い過ぎらしい」

キュービーはイカゲのほうを向いて、冷静に答えた。

イカゲは自身の娘が人間の道具にされていることを憂いた。そして乙女の棺に対して憤りを露わにした。

「私の娘をこんなにも辱めるとは。許さんぞ」

「それは違う。こうなることは彼女自身が望んだことだ」

キュービーは答えた。

それでも信じないイカゲは乙女の棺に向かってなおも罵倒した。そんな時、最初につぶやいた者の声が再び聞こえた。

「皆落ち着け。ならば、審判をしよう」

その声が響くと、どこからか一条の光が差し始め、その光は祭壇らしき場所を指し示すように照らした。

「そこに娘を置け」と声が聞こえた。

しかし、物理的に手の届かない乙女の棺は、代わりに自身がその祭壇に座るようにおいた。Qを背負ったまま、静かに腰を下ろす。

「まあ、それでもよかろう」

とまた声が聞こえた。

その言葉を合図にするように、大きく透き通った岸壁が淡い青色に光り始める。周囲が、神秘的な光に包まれて明るくなった。審判の時が、始まろうとしていた。

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