表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微熱の道化師  作者: だぶまん
微熱の道化師(異世界帰還編)
32/50

K.8「駆け引き」(AIが要約)

──誰のために戦うのか。誰の痛みに応えるのか。


「……あなたは、人間に利用されているのです」


メロメルの声は静かで、どこか切なげだった。

その言葉は、確かに少女Qの心の奥を揺らす。


「乙女の棺はただの“魂の器”に過ぎない。自分の意思で動けるわけじゃない。

でも、あなたは違う。あなたはこの器に“魂”を与えられる特別な存在。

その力は魔族にも人間にも、そしてこの戦争そのものにとっても――決定的な意味があるのです」


「私たち魔族と手を組みましょう。

あなたが戻ってきても、誰も責めない。

共存なんて幻想のために、自分を壊すのはもうやめましょう。」


──共存は幻想。人間は私を利用しているだけ。

メロメルの言葉が、Qの胸にひそんでいた不安を容赦なく暴き出す。


「……っ!」


Qは拳を握りしめるが、力はすぐに抜けていった。

立ち尽くし、思考は混乱する。

自分は何のために戦っているのか。何を信じればいいのか。

心が、崩れそうだった。


その時、乙女の棺のディスプレイに文字がぽつりと浮かぶ。


『メロメルの話は、半分は事実で、半分は嘘だ』


「……!」


淡い光が文字を照らす。


『僕の名は弱者太郎、通称キュービー。

コ・イカゲは僕が葬った。でも彼は立派だった。

人間と魔族の共存――馬鹿げた挑戦に真剣に挑んでいたんだ』


Qは眉をひそめ、そっと画面に指をのばす。


「……この文字、まさか……」


乙女の棺のインターフェースは無機質に輝く。

最初は“棺”自身の自己対話だと思っていた。

けれど——


《違うよ、Q》


脳内に優しくてどこか抜けた、懐かしい声が響いた。


「……!」


Qは息を呑む。


《これは僕の言葉。乙女の棺じゃない、僕――弱者太郎、通称キュービーの声だよ》


思い出す。ピンク色の消しゴムみたいな、でもどこか強かったあの姿。


《僕は今、この兵器のシステムにいる。だからディスプレイを通して話してるんだ》


光がまた文字を映し出す。


『君はまだ気づいてないかもしれないけど――この戦いは、君だけのものじゃない。

僕も、ここにちゃんといる。』


Qの胸の奥に、小さな温もりが灯った。


そうか。この声は、あの弱くて強かった“誰か”の声だ。


「……やっと話したのね」


懺悔のような、告白のような、静かな声。

だけどその響きは確かだった。


Qは問いかけた。


「じゃあ、何が違ったの?あなたと彼では」


キュービーは少し間を置き、静かに答えた。


「誰かの犠牲の上にしか平和は成り立たない。

だとしても、その痛みを理解しようとしない者が作る平和は、どこか空っぽだ。

コ・イカゲは、君と君の母だけが平和な世界を作ろうとしていた」


Qは息を飲む。まるで心の奥を見透かされた気がした。


そしてキュービーは続けた。


「Q。君は仲間を裏切ったあと――笑顔でいられそうか?」


試すように、でも優しく問いかけるその言葉が、

Qの胸にずっしりと重くのしかかる。


メロメルの誘いとキュービーの問いかけ。

信じていた世界が揺れ、選ぶべき道が見えなくなる。


──Qは悩んだ。深く、深く。


やがて彼女は、静かに口を開いた。


「……まだ、答えは出せない。

でも、今はここにいたい」


その決断は、「保留」。


だが、それは逃げではない。


自分の心で選ぶための、

大切な時間を求める少女なりの精一杯の答えだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ