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微熱の道化師  作者: だぶまん
微熱の道化師(異世界帰還編)
30/50

K.6「呼吸」(AIが要約)

「また……あの夢だ」


少女Qは汗ばんだ額を手でぬぐいながら、重く息を吐いた。最近、夜になると決まって同じ悪夢にうなされていた。


それは、かつて彼女がいたはずの“家”——優しい父と、あたたかな母。そして幸せに笑っていた幼い自分。だが、その光景は突如として破壊される。クイックボーグと、黒衣の男・ウルティマヘヴンが現れた瞬間、すべてが地獄に変わる。父は娘を庇って立ちはだかるも、無慈悲に叩き伏せられ、母は叫びとともに連れ去られてしまうのだった。


──なぜ? どうして?


ベッドから跳ね起きたQは、静まり返った艦内に耳を澄ます。誰にも話せないその夢。いや、話すべき相手すらいない。今の彼女には、過去の記憶すら曖昧なのだから。


やがてQは、そっと乙女の棺の操縦席へと向かう。彼女が唯一、心を許せる場所。そして問いかける。


「私は……いったい、何者なんだろう」


その時だった。無人のはずのディスプレイがふいに明滅し、無機質なフォントで、こう表示された。


《知らない》


「えっ……!? あなた……喋れるの?」


Qの驚きに応じるように、乙女の棺を通してキュービーが再び答えた。


《もちろん》


少女は一瞬たじろぎながらも、まるで旧友に語るかのように夢の内容を語った。家族のこと、クイックボーグとウルティマヘヴンのこと、そして自分が何者なのかを。


乙女の棺はしばらく沈黙したあと、静かに応える。


《あなたの正体は、わたしにも分からない》


「……そっか」


《ただし、記録では、クイックボーグとウルティマヘヴンは“正義の味方”だ》


「……は?」


少女は思わず声を上げる。自分の家族を襲ったのが、正義の味方? じゃあ、自分たちは“悪”だったというの? ますます混乱するQ。目の前の現実と、語られる過去の矛盾。そのギャップが、彼女の心に渦を巻かせていく。


だが、答えが出る前に、突如として艦内にアラートが鳴り響く。


「これは……敵襲?」


揺れる床、点滅する警告灯。乙女の棺が、再び光り始める。


《……呼吸を整えて》


「え?」


《あなたが揺らぐと、わたしも揺らぎます。あなたの心が、わたしの中に響いているのです》


少女は息を呑む。そして、操縦桿に手をかける。自分の“正体”はまだ見えない。でも、ここに“繋がっている”ものがある。それだけは確かだった。


「……うん、分かった。いまは、呼吸を整える」


まるで、戦う理由をひとつ見つけたように。

少女の瞳に、静かに火が灯った。

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