K.4「師弟の刃」(AIが要約)
チュ・コイノ部隊の支援によって生まれた、ほんの束の間の安堵。それを嘲笑うかのように、機械仕掛けの神は戦場に降臨した。
『出臼・まきな』――その機体から響く声は、紛れもなく先ほどQたちを蹂躙したデ・キールのものだった。
「ワシの操る武装は、魔力で稼働する人造の義体。すなわち『魔具人形』。名は"出臼・まきな”。貴様らの魔具人形モドキに、ワシが倒せるじゃろうか」
その言葉は、乙女の棺に向けられたものでありながら、通信回線の向こうにいるであろう元弟子たちへの、明確な挑戦状だった。
戦いの火蓋は、再び切られた。Qは乙女の棺の全霊を以て、出臼・まきなに組み付く。純粋なパワーでは、乙女の棺がわずかに上回っていた。ギチギチと音を立てて敵機を締め上げる。勝てる!――その確信は、次の瞬間、絶望に変わった。
出臼・まきなの背部装甲が開き、隠されていた四本の腕が、蛇のように伸びて乙女の棺を強打する。不意を突かれた純白の巨人は、凄まじい勢いで吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「くっ……!」
体勢を立て直そうとするQの目に、六本腕の異様な姿で迫りくる出臼・まきなが映る。乙女の棺の攻撃も、この距離では決定打にならない。何か、何か立ち向かう武器は――!
『まずい!このままではやられる!何か、何か対抗する術は……!』
操縦席で明滅するキュービーの思考が、猛烈な速度で回転する。『クイックボーグ』。そうだ、彼の技――『ダイセイオン(大声)』は、超音波カッターに匹敵する周波数を生み出せる!
「これじゃ、負けちゃう……!」
Qが悲痛な叫びを上げた、その瞬間だった。目の前のコンソールに、一つの文字列が浮かび上がった。
【超震動斬】
それは、キュービーが咄嗟に考え出した、超音波を腕部に集中させ、触れるものすべてを切り裂く手刀の技。乙女の棺のシステムが、キュービーの思念を即座に技として実装したのだ。
Qは、藁にもすがる思いでその文字をタップした。途端に、乙女の棺の挙動が変わる。右腕が、まるで空間そのものを震わせるかのように、激しく振動し始めた。
『フン、搭乗者の恐怖が魔具人形にも現れるとはな。震えが止まらんようじゃ』
デ・キールは呆れたように言い放つ。『一発で終わらせてやるぞい』
出臼・まきなは、先ほどとは打って変わったような神速で、乙女の棺との距離をゼロにした。
「キュービー、行くよ……うおりゃああああ!!」
Qは雄叫びを上げ、震える右腕を突き出した。それは恐怖の震えではない。勝利を掴むための、力の震えだ。
超震動を纏った乙女の棺の拳が、出臼・まきなの頭部を捉える。ガラス細工のように、敵機の頭部が砕け散った!
その衝撃的な光景を目の当たりにした魔族の大軍団は、自分たちの神が敗れたと悟り、蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出していく。
だが、出臼・まきなはまだ倒れてはいなかった。
『……少しはやりおるわい』
頭部を失った機体から、デ・キールのはしゃいだ声が響く。まだ動く六本の腕が、再び乙女の棺を抱き寄せるようにして、その身動きを完全に封じた。
『どうじゃ。これで抵抗はできんじゃろう』
デ・キールがほくそ笑む。しかし、Qは冷静だった。乙女の棺は再び拳を震わせると、今度は円を描くように手刀を振るう。まるで熟練の職人が竹を両断するかのように、超震動斬は出臼・まきなの六本の腕を、付け根から鮮やかに切り裂いた!
衝撃で、出臼・まきなの胸部装甲が剥がれ落ち、内部の操縦席が露わになる。
『『デ・キール・ウ・デマエ!!』』
母艦のブリッジで、ゼン・ニン兄弟が同時に師匠のフルネームを叫んだ。
『Q!搭乗者を捕まえろ!』
ゼン・ニン(兄)の指示を受け、Qは器用に乙女の棺の掌で、気を失ったデ・キールをそっとすくい上げた。
捕縛されたデ・キールは、飛行艇の医務室で目を覚ました。ベッドの脇には、ゼン・ニン兄弟が神妙な面持ちで立っている。久々の再会だった。
「……やはり、お前たちの魔具人形じゃったか」
デ・キールは、心底がっかりしたように呟いた。
「やはり、師匠の機械でしたか」
ゼン・ニン(弟)が静かに返す。しばらくの沈黙の後、デ・キールは吐き捨てるように言った。
「……弱すぎる」
その言葉は、医務室にいた兄弟、そして通信で聞いていた飛行艇のクルー全員の胸に突き刺さった。
「私たちの力が、あなたに勝ったのです。デ・キール師匠」
ゼン・ニン(兄)が、誇りとわずかな怒りを込めて反論した。だが、デ・キールはそれを鼻で笑う。
「勝った?このワシにか?笑わせるな。ワシはただの偵察じゃ。お前たちが本当の恐怖を知るのは、これからよ」
デ・キールは、恨めしそうな、それでいてどこか哀れむような声で語り始めた。
「魔族の王が操る『真の魔具人形』は……お前たちの創造を、遥かに超える出来じゃ」




