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微熱の道化師  作者: だぶまん
微熱の道化師(異世界帰還編)
27/48

K.3「ゼン・ニン兄弟の師」(AIが要約)

乙女の棺との絆という、確かな繋がりを見つけたQの心には、仄かな光が灯っていた。あの日以来、無骨な鋼の巨人は単なる兵器ではなく、言葉を交わさずとも心を通わせられる、かけがえのない相棒となった。

ゼン・ニン兄弟との間にも、以前のような壁は感じない。不器用な彼らが向ける気遣いは、まるで家族のような温かさがあった。

――この仲間たちとなら、きっと戦える。

哨戒任務のため、乙女の棺で魔族の領空を飛行しながら、Qはそんな前向きな気持ちを抱いていた。

その時だった。

空間が歪むような異様なプレッシャーが、Qと乙女の棺を同時に襲った。警報が鳴るより早く、眼前の空間が裂け、そこから一体の機体が姿を現す。

それは、武者を模したかのような、優美でありながら禍々しい装甲を纏った人型兵器だった。

「な、なに……!?」

先手を取ったのは乙女の棺だった。Qの思考と完全にシンクロし、最大出力のビームを放つ。だが、敵機は、それをまるで舞を踊るように軽やかに回避すると、瞬時に距離を詰めていた。

速い!見えない!

次の瞬間、乙女の棺の全身に凄まじい衝撃が走った。敵機が振るった太刀が、純白の装甲を紙のように切り裂き、腕を、脚を、胴体を容赦なく破壊していく。抵抗しようにも、その動きはあまりに洗練され、圧倒的だった。

乙女の棺は赤子の手をひねるように蹂躙され、ズタズタになって地上へと叩きつけられる。

『……これがゼン・ニンたちが造った魔具人形か。醜い姿をしておるが、果たして……』

冷たく、底の知れない声が通信回線に割り込んでくる。コックピットで激しい衝撃に耐えていたQは、モニターに映る老人を見上げた。

パイロットは、デ・キールと名乗った。彼はつまらなそうに乙女の棺を見下ろすと、とどめを刺すべく、その太刀を振り上げる。

「――ッ!」

死を覚悟したQ。だがその瞬間、操縦席で明滅していたキュービーが、咄嗟に回避行動を取る。

乙女の棺は、Qの操縦を待たず、反射的にその場を回避した。

振り下ろされた太刀が、先ほどまで乙女の棺があった地面を深く抉る。

『ほう……?』

デ・キールの声に、初めてわずかな驚きが混じった。彼は自身の機体の動きを止めると、自身の背後に控えていた、さらに巨大で異質なシルエットの魔具人形へと乗り移る。

『まだ完全な魔具人形ではないな。だが、磨けば光るか。獣のような、荒々しい可能性を感じる』

デ・キールはそれだけ告げると、興味を失ったかのように空間の裂け目へと消えていった。残されたのは、半壊した乙女の棺と、圧倒的な力の差を見せつけられたQの絶望だけだった。

命からがら母艦に帰還したQから事の次第を聞いたゼン・ニン兄弟の顔色が変わった。

「間違いない、ワシらの元師匠、デ・キールだ」

ゼン・ニン(兄)が苦々しげに呟く。

「師匠?あなたたちの?」

Qが聞き返すと、ゼン・ニン(弟)がばつが悪そうに頭を掻いた。

「ああ。俺たちは昔、デ・キールの元で武具の作り方を学んでたんだ。……まあ、破門されたんだがな」

『破門!?これほどの技術を持つ兄弟がか!一体何をしたのだ!?』

キュービーが問う。ゼン・ニン(弟)は遠い目をして答えた。

「……おやつの時間に、師匠の嫌いな“スタバリス”を出した」

「「…………え?」」

Qとキュービーの間の抜けた声がブリッジに響く。あまりにくだらない破門理由に、先ほどまでの絶望感がどこかへ飛んでいってしまいそうだった。

「師匠は極度の甘党でな。酸っぱいスタバリスは虫唾が走るほど嫌いだったんだ。そんなことも知らずに俺たちが…」

「とにかく!師匠が敵に回ったってことは、こっちも本気を出さねえとやべえってことだ!」

ゼン・ニン(弟)が話を戻す。その言葉を肯定するかのように、けたたましい警報が鳴り響いた。

「前方より大規模な魔軍接近!その数、計測不能!」

「乙女の棺、出るわ!」

応急修理を終えたばかりの機体で、Qは再び戦場へと飛び出した。眼下には、地平線を埋め尽くすほどの魔族の大軍団が、津波のように押し寄せてくる。

乙女の棺は応戦するが、敵の数が多すぎる。一体倒しても、十体が群がってくる。装甲に無数の爪が食い込み、動きが鈍っていく。

「くっ……キリがない!」

乙女の棺との連携で奮戦するも、数の暴力の前にじりじりと追い詰められていく。このままでは、押し潰されるのも時間の問題だった。

その時、母艦である飛行艇のハッチが開き、中からキラキラと輝く小さな光の粒が、パラパラと無数に降ってきた。

「あれは……!」

光の粒は、空中で可愛らしい妖精のような姿へと変わる。全長3メートルほどの人型兵器。

「対大型魔族用に開発した、自律思考型戦闘ユニット、人工妖精『チュ・コイノ』部隊だ!行けぇっ!」

ゼン・ニン(兄)の通信と共に、チュ・コイノたちは一斉に魔族の群れへと突撃した。小型ながらその戦闘力は高く、編隊を組んで大群を翻弄し、次々と撃破していく。まるで、獰猛な狼の群れを狩る、美しい蜂の群れのようだった。

チュ・コイノたちの活躍で、乙女の棺への負担は一気に軽減される。

「すごい……!これなら!」

Qが戦況の好転に安堵した、その瞬間だった。

チュ・コイノたちが作り出した戦線の隙間を縫って、凄まじい速度で何かが乙女の棺に襲い掛かってきた。

ガンッ!と、金属同士がぶつかり合う甲高い音。乙女の棺は、強烈な一撃を受けて大きく体勢を崩す。

モニターに映し出されたのは、無機質で禍々しい魔具人形。その名は――。

「行くぞ。出臼・まきな……!」

デ・キールが再び乙女の棺の前に現れた。


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