G.7 「故郷に舞う異物(AI生成、調整有)」
キュービーは、いつものように街外れのベンチで日向ぼっこをしていた。
かつて人間だった頃の記憶。学校からの帰り道、よく一緒に銭湯に通った友人の姿が鮮明に思い出された。
「銭湯……か」
キュービーは、その言葉を口にした瞬間、無性に銭湯に行きたくなった。
「雲母! 銭湯に行かないか!?」
キュービーは、興奮気味に雲母に詰め寄った。
「え? 銭湯? 急にどうしたのよ」
雲母は、怪訝そうな顔でキュービーを見つめ返す。
「いや、その、なんとなく懐かしくなってな! あの、広くて熱いお風呂に、天井の高さとか、タイル張りの壁とか!」
「もしかして、盗撮でも企んでるんじゃないでしょうね?」
雲母は、鋭い眼光でキュービーを睨みつけた。
「違う! 違うんだ雲母! 異世界には銭湯がなかったから、恋しくなっただけなんだ!」
必死に訴えるキュービーの様子に、雲母は少しだけ疑いを解いた。
「まぁ、そこまで言うなら、仕方ないわね。でも、変なことをしたら許さないから」
「約束する!」
キュービーは、満面の笑み(無表情)で頷いた。
こうして、キュービーは、雲母、そして咲を誘い、久しぶりの銭湯にやって来たのだった。
湯船に浸かり、至福の時を過ごした三人は、風呂上がり、牛乳を片手に休憩スペースにやってきた。そこでキュービーは、異様な存在に目を奪われた。
「あれは……?」
そこにあったのは、巨大な扇風機だった。しかし、よく見るとそれは、扇風機と人間の体が融合したような異様な姿をしていた。
「誰だ!?」
キュービーが声をかけると、その扇風機人間はギギギと音を立て、こちらを向いた。
「バレたか、飛ぶぞ!」
低い声と共に、扇風機の羽が高速回転を始める。そして、扇風機人間は、腕からミニ扇風機を出現させると、そこから強烈な竜巻を発生させた。
「うわああああ!」
キュービーは、なすすべもなく竜巻に巻き込まれ、銭湯の壁を突き破って吹き飛ばされた。
キュービーが辿り着いたのは、女湯だった。壁に空いた大穴から、雲母と咲が驚いた顔でこちらを見ている。
「キュービー!? 何やってるのよ!?」
「まさか、わざとじゃないでしょうね!?」
雲母と咲は、怒ったようにキュービーに詰め寄り、その頬を思い切り引っ張った。
「違うんだ! 本当に事故なんだ! 俺は悪くない!」
その直後、再び大きな音が響き、巨大扇風機人間が、女湯に侵入してきた。
「え!? まさか!?」
キュービーは、焦って二人に叫んだ。
「変身だ!」
「ええ! わかってるわ!」
「いつでもどうぞ!」
雲母と咲は、魔法少女に変身した。
センプウキングは、不敵な笑みを浮かべながら自己紹介をした。
「私の名前は、センプウキング! 風使い最強の戦士だ!」
「センプウキング!? ふざけた名前ね!」
雲母は、センプウキングの軽薄な態度に眉をひそめた。
「あんたが、この銭湯を破壊したの!?」
咲は、怒りに燃えながらセンプウキングに詰め寄る。
「そうだ! お前らも、風の力で吹き飛ばしてやろう!」
センプウキングは、両腕のミニ扇風機から竜巻を発生させると、雲母と咲に襲い掛かった。
ついに雲母が、竜巻に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「雲母!」
咲が駆け寄るが、その隙に、咲も竜巻に巻き込まれてしまった。
二人が、絶体絶命のピンチに陥ったその時、センプウキングの背中のコンセントが抜け、竜巻が止まった。
「チャンス!」
咲は、機転を利かせ、センプウキングの足元をすくうと、その巨体を転倒させた。
倒れた衝撃で、センプウキングの軸が折れてしまった。
「ま、参った! 命だけは助けてくれ!」
センプウキングは、地面にへたり込み、雲母と咲に命乞いをした。
「お前は何者だ?」
キュービーは、センプウキングの姿をよく見ると、どこか懐かしいような、そんな気がした。
「もしかして、ユウ君!?」
センプウキングはハッとしたように言った。
「ああ、思い出した! お前は……弱者太郎だ!」
センプウキングはキュービー、いや、弱者太郎が幼少時代の頃よく遊んでいた旧友ユウだった。
「なんで、お前がこんな姿に!?」
キュービーが問い詰めると、ユウは、風呂上りに栄養ドリンクを飲んだら、急に力が湧いてきて、この姿になったと答えた。
「そんな、バカな……」
雲母は、呆れたように呟いた。
その直後、センプウキングは何か攻撃を受けたようにぐわぁっと声を上げて倒れた。
「センプウキングに力を与えたのは、俺だ。お前たちは、もう、元に戻すことはできない」
銭湯の外から、低い声が響き渡った。逆光で顔は見えなかったが、その声は明らかに悪意に満ちていた。
センプウキングは、むくりと起き上がり、体がさらに大きくなった。
「力が溢れてくるぞ!」
センプウキングは、残像を残すほどのスピードで、雲母たちに襲い掛かった。
雲母と咲は、応戦するも、センプウキングの攻撃は、先程よりも遥かに強力になっていた。
二人は、吹き飛ばされ、身動きが取れなくなってしまった。
「終わりだ!」
センプウキングが、二人にとどめを刺そうとした時、キュービーが、二人の前に立ちはだかった。
「させるか!」
キュービーは、必死でセンプウキングの攻撃を受け止める。その際、羽や尻尾の毛がむしられてしまったが、それでも、キュービーは諦めなかった。
「雲母! 咲! 大丈夫か!?」
「ええ! 私たちは大丈夫よ!」
雲母と咲は、お互いの無事を確認するため、手を伸ばしあった。キュービーの綿毛が飛び散りそうになった時、二人の指が触れ合った。
その瞬間、雲母と咲を、眩い光が包み込んだ。その光に、センプウキングの動きは少しだけ鈍った。その隙に、キュービーはなんとか二人の元に辿り着いた。
「大丈夫か?」
「ええ、私たちは大丈夫よ。言いたいことはわかったわ、咲。」
「ええ! いくわよ、雲母!」
光が消えると、雲母と咲は、お互いの手をしっかりと握っていた。そして、二人は、ステッキを一緒に持ちながら、声を揃えて新しい呪文を唱えた。
「元の姿に戻りなさい! ハートキャッチ・リフレクトフュージョン!」
「無駄だ! 俺は、もう人間の姿に戻らない!」
センプウキングは、堂々とした姿勢のまま、二人の攻撃をまともに受けた。最初は笑っていたセンプウキングだったが、
「友情パワー!」
二人の声と共に、さらに威力が増した魔法の矢が、センプウキングの体を突き抜けた。すると、センプウキングの体は砂のように溶け始め、中から、ユウが元の姿を現した。
「これが……、君たちの友情パワーか……」
キュービーが、雲母と咲の力を感心していると、再び、あの影が現れた。
「どいつもこいつも……お前らは、俺が直接倒す!」
影は、見る見るうちに鮮明になり、ついに、その正体を現した。それは、一人の少年だった。




