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微熱の道化師  作者: だぶまん
微熱の道化師(現代編)
20/24

G.5「お菓子好きかい?」

冬の訪れ。

雲母きららさきが住む町にも、今年もまた、その季節がやってきた。

朝、白い息を吐きながら通学路を歩く二人の会話があった。

「ねぇ、ほんと寒くなってきたよね。」雲母はそう言いながら、

首元を少しばかり手で覆った。咲は、いつもより少しだけ落ち着いたトーンで答えた。

「うん、手袋も、そろそろ新調しないと」二人の間には、

いつも通りの穏やかな時間が流れていた。


その日の放課後、ニュース記事によって、一変することになる。

スマートフォンの画面に表示されたのは、『ホスト村に雪だるま現る!人気ホストが次々被害に』という衝撃的な見出しだった。

記事によると、夜な夜なホスト村に出没する雪だるまが、人気ホストに次々と危害を加えているという。

雲母は、「ホストの世界も、何かと大変なんだね」と首を傾げながら咲に言った。それに対して、咲はいつもと違う、

複雑そうな表情で「えへへ、そうみたいだね」と返した。その返事には、何か引っかかるような、そんな違和感があった。


翌日、学校では雪だるまの話題で持ちきりだった。クラスのあちこちで、「隣のクラスの子、昨日雪だるまに襲われたんだって」という噂話が飛び交っていた。耳を澄ませて聞いていると、

どうやら同じ学校の女子生徒が、ホスト村で雪だるまに「ダルメェ、お菓子好きかい?」と声をかけられ、お菓子を渡された後、人気ホストの声のする方へ行いったらしい、という事がわかってきた。


「え、お菓子くれるだけなら、全然被害ないじゃん。私たちも、お菓子もらえるかもしれないし行ってみようよ!」


軽い気持ちで、そんなことを言う生徒もいた。


放課後、雲母が鞄から教科書を取り出そうとした時、いつの間にか鞄の中に潜んでいた、無表情のぬいぐるみ、キュービーが顔を出した。


「うわっ、キモッ。って、いつからいたの」雲母は、思わず驚きの声をあげた。キュービーは、そんな雲母の驚きには全く動じることなく、淡々とした口調で言った。

「あのJKたちが、気になる」雲母は、キュービーの言葉の意味を理解できずに、問いかけた。「それは犯罪だよ。何がそんなに気になるの?」

すると、キュービーは、今日噂話をしていたJKたちに、危険が迫っていると告げた。


キュービーの言葉を、最初は半信半疑で聞いていた雲母だったが、何か胸騒ぎを感じ、咲に声をかけることにした。

「ねぇ、咲、ちょっとだけ、一緒に行ってみない?気になることがあって」咲は少し躊躇する様子を見せたが、

「うん、わかった。」と、いつものように優しく微笑んだ。しかし、雲母は、その笑顔の奥に、何かを隠しているような、そんな気がしてならなかった。


夜のホスト村は、昼間の平和な雰囲気とは一変し、妖しい光に包まれていた。

女子高生たちは、雪だるまを探して路地裏を彷徨っていた。「あれぇ?雪だるま、全然いないじゃん」しばらく歩き回ったが

雪だるまが見つからないことに少しばかり落胆していた。その時、一人の男が、彼女たちに声をかけてきた。

「こんなところにいるのは危ないから、早く帰りな」それは、休憩中の人気ホストだった。

女子高生たちは、人気ホストと話せることに興奮し、雪だるまの事など、すっかり忘れてしまっていた。

その光景を、少し離れた場所から見ていた雲母たち。

咲は、その人気ホストを見るなり、ハッとした表情になり、小さな声「兄貴…」と呟いた。


キュービーの予想が外れたのかと思った、その時。談笑していた女子高生たちの背後から、「ダルメェ…、お菓子好きかい?」という不気味な唸り声と影が現れた。

それは、雪だるまだった。「あー、雪だるま!お菓子くれよ!」女子高生たちは、軽い気持ちで雪だるまに声をかけた。

だが、次の瞬間、雪だるまは、スコップを振り上げ、「ダルメェ」と不気味に呟きながら、無慈悲にも振り下ろした。悲鳴をあげて逃げ惑う女子高生たち。

あろうことか一人だけが、雪だるまに捕まってしまった。

「おい、その娘から離れろ!」

人気ホストが、雪だるまに立ち向かおうとするが、雪だるまは、スコップで彼の頭を殴り、「ダルメェ」と小さく呟きながら、気絶させてしまった。


その光景を目撃したキュービーは、震える声で言った。


「間違いない。あの雪だるまは、ダルメェ、弱者太郎エキスの吸飲者だ!」雪だるまの前に、

雲母と咲が立ち塞がった。二人は、魔法少女へと変身を遂げていた。雲母は、凛とした声で言った。


「お菓子はいらないわ!あなたは私たちが元に戻す。だから、早くその子を解放しなさい!」雪だるまは、しばらく黙り込んだ後、「ダルメェ」と叫び、「ダルメェ」と唸りながら、スコップを雲母に振り下ろした。間一髪で、雲母はそれを避けた。


一方、咲は、気絶した兄を、安全な場所に運び、介抱していた。「兄貴、しっかりして!お願いだから」咲は、心配そうな表情で、兄に声をかけた。兄が目を覚ますと、咲は安堵の表情を見せながらも、


「戦ってくる」


と言い、雲母の元へと走り出した。


「ホストさんは無事だったの?」

「ええ、これで心置きなく戦えるわ」


二人が、言葉を交わしていると、雪だるまは、ピタリと動きを止めた。


「ダルメェ、俺の名はユキダルメ。ホスト狩りを、よくも邪魔してくれたな。

 でも、JK捕まえられたから、あとはお前らを片付けるだけだぜ」


ユキダルメがスコップを空高く振り上げると、強烈な吹雪が、雲母と咲を襲った。

二人は、なんとか攻撃を避け続けたが、人質がいるため、ユキダルメに有効な攻撃を繰り出すことができない。


「あの人質を、どうにかして」咲が言うと、キュービーは、「隙が見えない」と答える。


その時、吹雪がピタリと止んだ。


雲母と咲が困惑した。ユキダルメの足元に、咲の兄がしがみついていた。


「ダルメェ、放せ」


ユキダルメは、咲兄の頭を、踏みつけた。


「雪だるまのくせに、歓迎が手厚いじゃねぇか」咲兄は、冗談交じりに言った。


「俺が、雪だるまだと?そんなわけあるかよ!」ユキダルメは、足元の水たまりに映る自分の姿を見て、初めて自分が雪だるまだという事に気がついた。


ユキダルメは、焦りのあまり、体が溶け始めている事に、気がついた。その隙をつき、咲は、ユキダルメを蹴った。JKたちとユキダルメとの間に隙ができた。


「雲母!」キュービーが叫ぶ。「元の姿に戻れ、リフレクトフュージョン!」雲母が呪文を唱えると、


ユキダルメの体は溶け始め、人間に戻っていった。


男は、自分が弱者太郎エキスの適合者だという男に煽られ、俺も適合したいと勢いで弱者太郎エキスを吸飲してしまった事を話した。

女子高生と咲兄の記憶は、魔法で消し去り、事なきを得た。咲と友達みんなで、咲兄に会うためにホスト村に来た、という事にし、その場をやり過ごした。

咲兄は「ここは危ないから、早く帰りな」と、いつものように言い、ホスト村へと消えていった。

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