10.「戦況の支配者」
ある日ヨーツー姫は険しい表情をしていた。リン国からヘルニア国への侵攻の計画が迫っているとの報告を調査部隊から受けたからだ。
「ついに動きましたか。」
ヨーツー姫はそうつぶやくとリン国の侵攻ルートの予想を基に防衛範囲の下見に一人で行くように弱者太郎に命じた。
「それって、○ねってコト?!」
弱者太郎は怯えた。しかしただでさえじゅじゅちゅしの呪いによって戦力をがれているヘルニア国にとって人手不足な状況はあまり変わらないようだ。
ゼン・ニン兄は安心せいと太郎にあるものを渡した。太郎の手に渡されたものはとても小さい数字で3と書かれた卵だった。
「どこに安心するところがあるんですかねぇ」
太郎はゼン・ニン兄にかしこまって聞いた。ゼン・ニン兄の話では試作品ではあるもの呪文を叫ぶと数字の書かれた回数分までピンチを救ってくれるらしい。
太郎はよくわからないがとりあえずお守り代わりにその卵をポケットにしまった。
命令を受けた太郎はすぐに支度をし、馬に乗って目的地へと向かった。やがて馬が疲れてしまうと今夜はここで野宿した。
次の日馬が逃げてしまったのかいなくなっていた。
太郎はどぉぉぉおしてだよおおおおと途方に暮れたが必要なものは一応あるので徒歩で目的地まで歩いた。
心身ともに疲れ切った太郎は日が暮れたことがわかるとまたその場で野宿することにした。
太郎が目覚めたとき、自身の体に力があまり入らなくなっていることに気付いた。そして暗闇から以前遭遇したコ・イカゲの飼っている怪物が目の前に現れた。
「見つけた。お前、仲間、連れてく、イカゲ様。」
と太郎は怪物につかみ上げられた。太郎も抵抗するがただただジタバタと体を揺らしただけだった。
「クククーク。順調に体力が衰えているようだね。」
そこには不敵に笑みを見せているだろうコ・イカゲ(イカゲ)の姿が薄っすらと見えた。
俺にいったい何をしたと太郎はイカゲに尋ねたがマーキングの効果だよとイカゲは太郎にあっさりと説明した。
「私のペットとして命を捧げることでしか君は生きられないのさ。」
イカゲは嬉しそうに言った。
太郎はそんなことあるかと抵抗するが見る見るうちに衰弱していった。とうとう昏睡状態の中最後を覚悟する太郎に走馬灯のような夢が見えた。
「俺、この受験が終わったらあの子に告白するんだ。」
太郎は放課後の教室で同じ生徒で親友であるユタカにそういった。
「そうか、俺たち親友だもんな。隠し事なしってことだったもんな。」
ユタカも返事をした。そして二人はガシッと手を合わせるとお互いの友情を確かめた。
そこにあの子が現れた。
「なになに一二人とも一。隠し事してるんでしょー。」
そういうあの子は太郎とユタカの幼馴染で親友だった。
受験が終わった当日、太郎はあの子を学校にある伝説の木下に呼び出して太郎の思いをあの子に告白した。
「ごめん、実は彼氏いるんだ。」
あの子の予想外の言葉に太郎はガラガラと何か崩れるような音が頭の中で鳴った。
太郎は平静を装い
「へへぇちなみに誰?」
とあの子に尋ねた。あの子はつぶやくような小さな声で言った。
「・・・ユタカ・・・」
太郎は自宅でベッドをびしょびしょ濡らした。
次の日ユタカに会うなり太郎は男気でユタカを殴った。
何すんだよとユタカも負けじと太郎を殴る。
お互いに顔を殴りあいながら顔の形が違うテイストに変化していった。
最後に立っていたのはユタカだった。太郎は大の字になってボコボコになった顔が夕焼け空を向いていた。
こんなのってねぇぜと醜くなった顔をさらにゆがめて太郎は涙を流した。
太郎に背を向けたあの子とユタカはイチャコラしながら立ち去っていく。そんな姿をただ眺めているだけの太郎にはとても受け入れがたい光景だった。
あの子の顔ががぎゅんと太郎の顔に近づいた。
「でもさ。コ・イカゲ様に忠誠を誓えば君の夢も叶うってよ。」
景色が暗転した。
「終わった。」
太郎は自宅で開けてしまった会社の合否通知を見ながらそう言った。
自宅に飾られていたプラモデルがぎゅんと太郎の顔に近づいた。
「でもさ。コ・イカゲ様に忠誠を誓えば君の夢も叶うってよ。」
その後何回も何回も景色が暗転した。
そのうちに太郎はコ・イカゲ様に忠誠を誓えば自分の夢も叶うということに気付いた。
「じゃあ、やってみようかな。」
暗転した景色よりもさらに深い色の扉を開けようとすると「待て」と聞き覚えのある声が聞こえた。
太郎は振り返るとクイックボーグがそこに立っていた。
「君の英断は本当に正義なのか。」
クイックボーグは太郎に問いかけた。もういいんだと太郎はやけくそ交じりに返事をしたがクイックボーグに殴られて説教を受けた。
"君の正義はこれからたくさんの人を救うことになる。
信念を貫いた正義の心は誰かを励まし、勇気付け、力になる。
私は自身の正しいと思う正義を君の心に見た。いつも君の心に悪に立ち向かう勇気があることを忘れないでくれ。"
クイックボーグの指先から出た光が深い色の扉にぶつかってその扉は白く光った。
太郎は何を言われるまでもなく白い扉に近づいて開けた。
"ここはまだエンディングじゃない。この扉を開けて戦うんだ君の未来のために"
クイックボーグは太郎の背中を押した。
太郎からマーキングが消えた。それを見たイカゲは動揺した。
太郎は目覚めていった。
「ヘルメットがなければ即墜ちだった。」




