詩小説へのはるかな道 第14話 その言葉は、きっと
原詩:「からっぽ」
からっぽ わたしの心
からっぽ あなたの心
それを うめるのは
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詩小説「その言葉は、きっと」
彼と彼女は、言葉を交わさない関係だった。
出会ってから三年。
一緒に暮らしてから一年。
それでも、互いの心は「からっぽ」だった。
彼は自分の空虚を、彼女の沈黙で埋めようとした。
彼女は彼の空虚に、自分の沈黙を流し込んだ。
ある夜、彼女が言った。
「ねえ、愛って、からっぽな心を満たすものなのかな」
彼は答えなかった。
代わりに、紅茶にシナモンスティックを落とした。
渦ができた。
その渦に、喜びも、悲しみも、苦しみも、すべてが吸い込まれていくようだった。
彼女はその渦を見つめながら、ぽつりとつぶやいた。
「憎しみも、愛も、溶けてしまえば、ただの熱ね」
彼はうなずいた。
「その熱が、いつか言葉になるなら」
二人は言葉を待った。あふれだすまで。
春が来て、彼女は部屋を出ていった。
何も言わずに。
彼は、何も言えずに。
数ヶ月後、彼女から手紙が届いた。
一行だけ、こう書かれていた。
「その言葉は、きっと、あなたの中にある」
彼は、紅茶を淹れた。
シナモンスティックでかき回す。
渦ができる。
その渦の中に、彼女の声が、少しだけ聞こえた気がした。
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ショートショート:空っぽ収集局
(わたしの原詩を読んで作ったAI君の作品です)
その町には、“空っぽ”を回収する部署がある。
正式名称は「感情空洞管理局 第三収集課」。
通称「空っぽ収集局」。
人々が失恋したとき、夢を諦めたとき、誰かに裏切られたとき──
心にぽっかり空いた“空っぽ”を、局員たちが回収しに来る。
彼らは白いスーツに銀の手袋をはめ、無言でやってくる。
ある日、少女が局に訪れた。
「わたしの心、からっぽなんです」
受付の女性は、淡々と答えた。
「どの種類の空っぽですか?」
「えっと…愛されなかった空っぽ、です」
「それは“未充填型”ですね。少々お待ちください」
少女は待合室で、他の“空っぽ”たちと並んで座った。
隣には、夢を失った青年。
向かいには、ペットを亡くした老婦人。
誰もが静かに、自分の空っぽを抱えていた。
やがて、呼ばれた。
「空っぽ番号A-113、愛されなかった空っぽ、回収します」
少女は、局員に心を差し出した。
局員は、銀の手袋でそっと触れた。
「これは…未充填型の中でも、希少な“言葉待ち型”ですね」
「言葉待ち…?」
「誰かの言葉で満たされるのを、ずっと待っていた空っぽです」
少女はうなずいた。
「でも、その言葉、誰もくれなかった」
局員は、空っぽを丁寧に瓶に詰めた。
ラベルにはこう書かれていた。
空っぽ:言葉待ち型
状態:未充填
可能性:残存
「この空っぽは、保管されます。いつか、誰かの言葉で満たされるかもしれません」
「それって…希望ですか?」
「いいえ。可能性です」
少女は、少しだけ笑った。
局を出ると、春の風が吹いていた。
彼女はポケットから小さなメモを取り出し、そこに一行だけ書いた。
その言葉は、きっと、わたしの中にある。
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。




