スタンプが導く“昭和の迷宮”──麗奈巡り大暴走ラリー!
上尾中央商栄会は考えていた。
――麗奈人気が続いているうちに、とにかく便乗できるだけ便乗しておこう、と。
商店街のダサい横断幕がSNSで「昭和感が逆にイイ!」とバズったのが自信につながったらしく、理事長(70代・昭和の遺産)は次の企画を高らかに発表した。
「期間限定! 麗奈巡りスタンプラリー開催!!」
麗奈も知らない。
もちろんヒロ室も知らない。
いや、誰も相談を受けていない。
それでも商栄会の面々は胸を張り、
「麗奈ちゃんには、あとで言うから大丈夫!」
と昭和の商店街特有の“押し切り精神”で突っ走った。
配られたスタンプカードには
祖母が描いた“昭和の少女漫画風麗奈”のイラストがデカデカと印刷されている。
その絵がまたシュール。
異様にキラキラした目(ハイライトが星型)
やたら長い髪が昭和アニメのように風でなびく
背景には、なぜか“鳥居”と“ねぎ束”
ポーズはセーラー服でウィンクしているが、麗奈はセーラー服を着たことがない
商栄会の誰も気にしていない。
協賛店もやたらとやる気満々で、
八百屋、古本屋、文具店、喫茶店……
全店が“麗奈仕様”になっていた。
古本屋:「麗奈特設棚」は半分が野球漫画、半分が昭和歌謡のムック本。
八百屋:「麗奈ねぎ」なる深谷ねぎにリボンをかけた商品を並べる。
喫茶店:麗奈が一度だけ注文したナポリタンを“麗奈セット”として倍の値段に。
スタンプを押す判子は手作りで、
祖母が彫った麗奈の似顔絵(雑)が彫刻刀の跡バリバリで押される。
スタンプを全店分集めると、
豪華(?)な景品がもらえる。
麗奈イラスト入りクリアファイル
→祖母作画のため、麗奈の顔が“昭和のキャンディーズ風”
麗奈缶バッジ
→なぜか後ろに金色の龍のイラスト
レア景品:ふとん店倉庫から出てきた昭和50年代の未使用タオル
→「麗奈」と油性ペンで後書きされたもの
全部許可を取っていない。
だが参加者は大喜びで、
SNSには写真が次々とアップされた。
「この雑さが逆に好き」
「祖母の画力、味がある」
「令和に突然昭和が殴り込んできた」
「麗奈巡り、意外と楽しい」
若者たちは、
この奇妙な昭和レトロ感にハマってしまったのだ。
麗奈が知ったのは、
ファンから届いたDMだった。
「スタンプラリー全店制覇しました!
麗奈ちゃんの龍バッジ一生宝物にします!」
麗奈「龍バッジ……? 私そんなの許可してない……」
商栄会に抗議しに行くも、理事長の答えは一言。
「いや〜、人気なんだよ。うちの麗奈ちゃんグッズ!」
“うち”の、ではない。
だが、麗奈は商店街のあまりの盛り上がりに何も言えなくなった。
「麗奈巡りスタンプラリー」は、
なぜか近隣のショッピングモールをも圧倒する人気を誇り、
シャッター通りだった商店街は一時的に満員。
理事長はご満悦。
「昭和は死なず! 麗奈ちゃんと商栄会さえいれば永遠だ!」
麗奈は遠い目をしながら呟いた。
「……私、いつから昭和の象徴になったんだろう……」
だがSNSでは絶賛され続けていた。
“祖母作の麗奈イラストは癖になる”
“缶バッジの龍は何?でも好き!”
“商店街の悪ノリ、もっとやれ”
こうして、
上尾中央商栄会はまた一つ、
昭和と令和を融合した奇跡の混沌を作り上げたのであった。




