黒い稲妻クロじい外伝・最終章 ― 猫侍七人衆 最終決戦!上尾キャットウォーズ
上尾中央商栄会の歴史は、静かで長閑なだけではない。
ときに荒れ、震え、そして――燃えた。
その“最終の炎”を語るためには、
ひとつの夜の伝説に触れなければならない。
猫侍七人衆、最終決戦。
上尾キャットウォーズ。
若き日のクロ(のちのクロじい)が、
本物の“伝説”になった夜である。
――嵐の前触れ
商店街に奇妙な気配が漂い始めたのは夕暮れ前だった。
風が止まり、
犬が吠え、
地域猫たちが妙に落ち着かず尻尾を膨らませる。
そのとき、遠くから――
ドス、ドス、ドス……
地響きのような足音が近づき、
電柱がかすかに揺れた。
タヌキ軍団、再結集。
その背後には――前回の倍はいるハクビシン野武士団。
商店街は震えた。
屋根の上の猫、路地裏の猫、物陰の猫。
すべてがその“影”に息を呑む。
そして親玉タヌキの咆哮が響き渡る。
「クロォォォーー!!
最終決戦だぁぁ!!」
クロは電柱の上から静かに敵を見据えた。
若く、猛々しく、しかし揺るぎない眼差し。
「……七匹で十分ニャ」
呼ばれた六匹は影から現れた。
・シロばあ:老練参謀
・ミケ姉:色仕掛け策士
・サブ:肉弾戦担当
・マサ:静かなる暗殺者
・銀二:封鎖戦術の鬼
・三毛太郎:ノリ担当
クロが一歩前へ出る。
「これが最後ニャ。
上尾の街は、猫が守る」
月光を背負ったその姿に、七匹の侍は深くうなずいた。
――上尾キャットウォーズ、開戦
戦いは突然だった。
タヌキ軍団が突撃し、
ハクビシン野武士団が木の上から奇襲し、
商店街全体が戦場と化す。
だが――猫侍七人衆は負けない。
◆サブの肉弾頭突き
タヌキを一匹吹っ飛ばす。
◆ミケ姉の色仕掛け戦法
野武士の士気を半減させる。(伝統芸)
◆銀二の封鎖戦術
敵の逃げ道を完全に断つ。
◆マサの無音突撃
背後に回り込んで戦意をへし折る。
◆シロばあの参謀力
敵の動きを読み切り、七人を導く。
◆三毛太郎の奇声
士気だけは上がる。
だが、敵の数は圧倒的。
猫侍七人衆は徐々に追い詰められ――
クロはその中心で、じっと機をうかがっていた。
そして、
親玉タヌキが雄叫びをあげて突撃した瞬間――
クロは宙へ。
月光の弧を描き、
電光石火の速度でタヌキの頭上へ降下する。
「にゃあああああああああッ!!」
渾身の稲妻パンチ。
渾身の稲妻キック。
渾身の稲妻しっぽムチ。
タヌキ軍は一瞬で総崩れし、
ハクビシン野武士たちも足を止める。
そして――
商店街に静寂が訪れた。
タヌキ軍、撤退。
ハクビシン野武士団、敗走。
勝利である。
戦いが終わると、七匹は肩で息をした。
「兄貴……勝ったニャ」
「やったニャ……」
クロは空を見上げ、静かに言う。
「……これでいい。
上尾は今日も平和ニャ」
シロばあが微笑む。
「お前さん、ほんに強うなったねぇ……」
七人は互いに目を合わせ、
そしてゆっくりと散っていった。
侍が役目を終えて去るように。
その後もクロは商店街の猫たちを守り続けたが、
やがて歳を重ね、今では丸く穏やかな“クロじい”として暮らしている。
しかし――
若猫たちは今も語る。
「あの黒い稲妻のクロじいは、
昔、猫侍七人衆を率いて
タヌキとハクビシンと戦ったんだぞ」
そしてクロじいは、少しだけ尻尾を揺らしながら言う。
「……そんな昔のことは覚えてないニャ」
だが、商店街の誰もが知っている。
この黒猫こそ――
生きる伝説。
上尾の守護者。
黒い稲妻クロじい。
その名は今も、夜風とともに商店街を駆け抜けている。
黒い稲妻クロじい外伝 《完》




