黒い稲妻クロじい外伝 ― 若獅子上尾死闘録:タヌキ・ハクビシン殲滅戦
まだ“じい”などと呼ばれる前、
クロじいが 上尾中央商栄会を統べた若き覇王 だった頃の話だ。
夜の商店街は荒れていた。
人通りはなく、シャッターは下り、
その隙間をぬって タヌキとハクビシンの無法軍団 がのさばっていた。
ゴミ袋は破られ、地域猫たちは押し込められ、
軒先で昼寝をされ、
挙句の果てに 大宮ふとん店の布団にまで乗る という暴挙。
地域猫たちは嘆いた。
「このままでは上尾の誇りが失われるニャ……!」
「やつら、図体だけじゃない。態度もデカいニャ!」
「クロ、あんたしかいないニャ!」
視線が集中した先に、
冷たい月光に浮かぶ 黒い影 が立っていた。
若き日のクロ。
後に“クロじい”と呼ばれるが、当時はただの 黒い若獅子。
その目は鋭く、気性は荒く、
恋にも喧嘩にも全力投球する、生粋の血気盛んなオス猫だった。
クロは静かに、しかし獰猛な声で言った。
「……やるしかねぇニャ。
やられるか、やり返すか。
この商店街じゃ、それだけニャ」
その瞬間、地域猫の若者たちは震えた。
カッコ良すぎて。
「クロ兄貴……惚れた……」
「ついて行くニャ!」
恋愛でも喧嘩でも、クロは常に“先陣”。
だから敵が強ければ強いほど、燃えるのだ。
その夜、タヌキ軍団が再び侵攻してきた。
その足音は重く、威圧感は半端ない。
「出てこいクロォォォ!!!」
親玉タヌキの咆哮が商店街に響く。
クロは、前へ。
若い筋肉が躍動し、毛並みは月光に濡れ、
その姿はまさに 黒い稲妻。
「ここはウチらの天地ニャ。
テメェらの好きにはさせねぇ!」
一声吠えると同時に、戦闘が始まった。
― ―上尾死闘編
アクション映画も霞む迫力だった。
クロは電柱を蹴り、空中で一回転しながら
親玉タヌキの鼻先に急降下パンチを叩き込む。
「ブフォッ!?」
「ひぃぃぃ!」(タヌキの部下)
ハクビシン軍が援軍として飛び込んでくるが、
クロは高速ステップでかわしつつ尻尾で目をつつく。
「ギャアアアア!!」
「ニャハハハハ!」(クロ)
商店街の路地裏で繰り広げられる、
小動物版“仁義なき戦い”。
地域猫たちも奮起し、
「兄貴ィィィ!!」
「ついてくニャアア!」
と涙目で威嚇しまくる。
(※なお実際の戦力にはほとんど寄与していない)
戦いは長引いた。
最後の瞬間、親玉タヌキの反撃がクロに直撃。
左耳の先が裂けた。
「クロ兄ィィィ!!」
「傷が……ッ!」
だがクロは倒れなかった。
血を流しながら立ち上がり、
「……こんなの、かすり傷ニャ」
そう言い放ったのち、
最後の猫ドロップキックをかましてタヌキ軍団を撃退した。
その言葉は後に、上尾猫界の語録となる。
タヌキとハクビシンの撤退後、
商店街には再び静けさが戻った。
若猫たちは英雄を見る目でクロを囲む。
「クロ兄、最高だニャ!」
「黒い稲妻、万歳ニャ!」
クロは長い尻尾をゆっくり揺らしながら、
得意げにこう言った。
「ま、若かったからニャ」
その後クロは、恋にも喧嘩にも情熱全開のまま成長し、
現在の“伝説のクロじい”へと至るのである。




