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大宮ふとん店、本日もたぶん営業中  作者: スパイク


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黒い稲妻クロじい ― 上尾猫界、恋と戦のゴールデンエイジ ―

上尾市の夜は長い。

そして、あの頃のクロじいは若かった。

いや、若いだけではない。

“黒い稲妻” の名をほしいままにした、上尾猫界きってのプレイボーイであった。


全盛期のクロじいは、電柱の陰を歩けば雌猫が倒れ、

屋根の上に座ればどこからともなく三毛が現れ、

ただ尻尾を揺らすだけで「キャーッ♡」と鳴かれる。


猫に「キャーッ♡」と言われたのはおそらく奴が世界初だ。


とにかくモテる。

そのモテっぷりはまさに “上尾の火〇正平”。

近寄ってきた雌猫は片っ端から……えーと、まあ、若気の至りということで処理した。


しかもクロじいは、決してチャラ男ではない。

雌猫にはとにかく優しい。

落ち込んでいたら寄り添い、寒い夜は一緒に丸まり、

カリカリを横取りされれば「ニャーン(いいんだよ)」と譲る紳士っぷり。


この器のデカさがまた、雌猫たちのハートを鷲掴みにしたのである。


当然、モテれば敵も増える。


「おいクロ!てめぇ昨日ウチのミケに近づいたろ!」

「違う、向こうが寄ってきた」

「やんのかコラァ!」


そこから先はアクション映画だ。


屋根から屋根へ飛び移り、

夜の商店街を疾走し、

そのスピードはまさに 黒い“閃光”。


「シュバァッ!」

「ギャッ!」

「フシュルルル!」


クロじいは無駄な戦いはしない。

だが売られた喧嘩は買う。

しかも買ったら必ず勝つ。


雄猫たちは口を揃えて言う。


「あれは猫じゃねぇ、稲妻だ」


このバトル群は現在でも語り草で、

地域猫界の若い連中からは


「クロじい様……!」

「いつかああなりたい……!」


と、ほとんど宗教じみた崇拝を受けている。


不思議なことに、クロじいは猫だけでなく人間の女性にもモテた。


・散歩中の主婦が「まぁ可愛い!」

・女子高生が「この子、イケボじゃない?」(ただの鳴き声)

・OLさんが「触らせてくれた…今日の運気MAXだわ」


クロじいは人間の女性にも優しい。

足にすり寄れば即失神級のかわいさ。

商店街の女子たちの間では


「触れると恋愛運が上がる黒猫様」


として、完全に神格化されていた。


今のクロじいは白いヒゲも増え、立派な好々ねこだ。

だが、夜風にあたりながら目を細める姿を見るたび、


「昔は大変だったよぉ……」


と、周囲の猫が勝手にシミジミ語る。

当の本人は「ニャ?」としか言わない。


しかし、今なお地域猫界にはこう伝わる。


―黒い稲妻クロじい。恋と戦の両方を制した唯一の猫。―


商店街の裏路地をそっと吹き抜ける夜風は、

今でもその名残を運んでくるようだ。

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