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大宮ふとん店、本日もたぶん営業中  作者: スパイク


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いんすたバエ供物騒動 〜令和の商店街に神が降りた日(※降りてない)〜

大宮ふとん店の軒先。

今日も例の いんすたバエ看板 が、昭和の風にパタパタ揺れていた。


この看板は「インスタ映え」を“新種のハエ”だと勘違いした祖母が

手書きで作った伝説の一枚である。

以来、若者の奇妙な聖地と化しつつあった。


そして、その日――

麗奈は見てしまった。


看板の前に、妙な供物が山積みになっているのを。


飴玉、昨日の賞味期限のおにぎり、謎の手作り人形。

それから、ベーカリー中村のうぐいすパンまで。


麗奈

「……修さんのパンまで供えないでよ……!」


しかし祖母は涼しい顔。


祖母

「ほらねぇ、いんすたバエは神さまみたいなもんなんだよ。

最近の若いもんは拝むのが好きなのかねぇ。」


麗奈

「違うよ!? 映えスポットなの!!」


ところが供物は加速度的に増えていった。


恋愛成就の紙。

資格試験合格祈願。

お守り。

なぜか犬のおもちゃ。

そして、クロじいのカリカリまで供えられており、


クロじい

「ニャア(許せん)」


と怒りの声を上げていた。


そんな混沌の中、

巻き込まれ体質のパン屋、ベーカリー中村の修さんが

パンの配達に来た。


すると若者たちがざわめく。


若者

「出た……! 守護者……!!」


「誰が守護者だ! パン屋だよ俺は!!」


しかし修さんが何か言えば言うほど、

若者は“お告げ”としてメモを取り始める。


「パンは焼きすぎると固くなるぞ」

若者

「固くなる=試練! 乗り越えるという意味だ……!」


「ちがう!!」


完全にヒッチコック映画の巻き添えである。


さらに供物は膨れあがり、

朝の開店時にはちょっとした祭壇と化していた。


「商売繁盛しそうだな」

「ご利益あるってことよ」

祖母

「にぎやかで結構、結構」


麗奈

「結構じゃない!! 公道で祭壇つくるなーー!!」


商店街の噂も加速した。


「供物が増えると守護者が降臨するらしい」


「降臨しない!! 忙しいんだ俺は!!」


そんなある日の夕方。

とうとう大宮ふとん店の前が観光客だらけになり、

麗奈は腹を決めた。


麗奈

「……祖母、もう無理。供物はやめてもらおう」


祖母

「そうかい、なら看板出すよ」


祖母は店の奥から筆ペンを取り出し、

さらさらと書き上げた。


『供物ハ おやめ 下さいませ お願い いたし候』


麗奈

「旧仮名遣い!? しかも“そうろう”ついてる!!

微妙に誤字あるし!!」


しかし、その看板がSNSに投稿された瞬間――


『レトロで尊い』

『令和なのに戦前みたいだ』

『逆に供物増えるやつ』


と爆発的にバズってしまった。


「……だから俺は守護者じゃないってば……」


そして今日も供物は静かに積み上がっていく。


——疑惑は、また深まった。


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