大宮ふとん店 “昭和ポスター博物館” ―時が止まった壁面に巡礼者がざわつく件―
大宮ふとん店の店内は、昭和の空気が濃すぎる。
布団屋なのに、なぜか壁に貼られているのは——
「ナ◎ョナル乾電池」
「日◎カラーテレビ キ◎カラー」
全部、昭和の電器屋で見たことあるやつ。
色あせて紙が波打ち、角が丸まり、
もはや“壁と融合しかけている”レベルの古さだ。
問題は、これらが布団店と全く関係ないことだ。
また、若き日の世界のホームラン王がイメージキャラクターの
「西◎のムアツふとん」のポスターは今も現役。
祖母によれば——
「おじいさんが開業当初、なんとなく貼ったんだよ」
……それ以上の説明は一切ない。
麗奈ファン(巡礼者)が大宮ふとん店に入ると、
昭和の香りが脳に直撃する。
巡礼者A
「布団屋なのに……乾電池のポスターが……?」
巡礼者B
「キドカラーって……まだ現役だったの……?」
巡礼者C
「あっ! ホームラン王のふとんのポスター……!
現存してるの見たことない!!」
巡礼者がスマホで写真を撮りまくる。
壁がどんどん“撮影スポット”化していく。
巡礼者
「これ、剥がさないんですか?」
祖母
「……そろそろ剥がさないとねぇ……」
剥がす気はゼロである。
祖母は続ける。
「でもねぇ、これ剥がすと壁が汚くなっちゃうしねぇ……
おじいさんが貼ったままだから、なんとなくねぇ……」
その“なんとなく”が50年続いているのだ。
麗奈
「おばあちゃん、それ絶対剥がす気ないでしょ」
祖母
「だって、これ貼ってあるとお客様が喜ぶんだよ」
喜んでいるのは“巡礼者の昭和マニア層”である。
一般客が喜んでいるわけではない。
特に、
「世界のホームラン王のムアツふとん」
の販促ポスターは、
巡礼者の間で異様な人気が出た。
巡礼者
「こんなの……昭和の旅館でも残ってないぞ!」
「日本で現存するの、ここだけじゃないの!?」
「資料館レベル!」
祖母
「そうかい? でも色あせちゃってるよ」
巡礼者
「その色あせがいいんです!!!」
昭和の電器屋ポスターに、まさか令和の若者が歓喜するとは
祖母も夢にも思っていなかった。
SNSではこんな投稿が増えた。
・「ふとん店なのに昭和電気店のポスターが行き残ってる不思議空間」
・「もはや壁が展示品」
・「昭和レトロ爆誕」
・「#キドカラーまだ動く気満々」
・「ホームラン王ポスター現存確認!」
祖母
「みんな好きなんだねぇ、こういうの」
父
「うむ。貼っといて良かったな」
こうして大宮ふとん店の壁は、
“昭和の電器屋ポスター博物館” として
新たな観光名所になった。
ポスターが剥がされる日は——
おそらく永遠に来ない。
今日も店の壁には、
世界のホームラン王の笑顔が色あせながらも輝き続けている。




