上尾ミステリー:パン屋の男、国家の闇に落ちる(全部大宮ふとん店のせい)
ベーカリー中村の修さんは、
ただ平和にパンを焼き、静かに暮らしたいだけの男だった。
しかし——大宮ふとん店と関わったその日を境に、
彼の人生は“ヒッチコック映画型巻き込まれ地獄”へと変貌した。
上尾ミステリー:パン屋の男、国家の闇に落ちる(全部ふとん店のせい)
きっかけは、町内で囁かれていた噂だった。
「大宮ふとん店は公安の隠れ蓑らしい」
もちろん事実ではない。
“看板の字が消えかけてる”“電話番号が昭和のまま”“祖母が動きだけスパイ”
ただそれだけだ。
だが、その噂は何故か突然こう進化した。
「協力者はベーカリー中村」
修さん
「なんで!?パン屋に何を求めてんの!?」
しかし、噂は止まらなかった。
配達中。
修さんは背後の視線に気付いた。
振り返ると、黒帽子の男(自称ジャーナリスト)が電柱の影にいる。
男
「……見たぞ。パン屋の男……“あの店”と密接だ……」
修さん
「密接じゃなくて、ただ単に距離が近いだけ!!」
だが男は勝手に深読みしていく。
男
「パンという“日常の仮面”を使い機密の受け渡し……あるな……」
修さん
「やめて!ウチのアンパンは平和利用!!」
道を変えても——
路地に入っても——
角を曲がると必ずそこに現れる影。
「……修ちゃん……」
声の主は、ふとん店の祖母だった。
夕日の逆光で顔が真っ黒。
この世とあの世の境目に立っているようだ。
修さん
「ひゃあああああ!!……って、おばあちゃん!?
なんで!?どこから!?いつ!?」
祖母
「修ちゃんがねぇ……近くにいる“気がした”んだよ……」
その“気配GPS”やめてほしい。
そして祖母は深刻なトーンで言う。
祖母
「FAXが……止まっちゃったんだよ……」
黒帽子
「くっ……合言葉だ……!」
修さん
「違う!ただの故障!!なに暗号扱いしてるの!!」
別の日。
また背後に影。
祖母
「修ちゃん……ハエ取り紙が……また誰かに……」
男
「ハエ取り紙……秘密の粘着装置……!」
修さん
「秘密でも装置でもない!ただの罠!!」
さらには老人ホーム前でも影。
祖母
「修ちゃん……紙が……切れたんだよ……」
男
「“紙切れ”……機密文書の隠語……!」
修さん
「なんで全部を国家規模の陰謀にするんですか!!」
ネットは勝手に盛り上がる。
・大宮ふとん店=公安本部説
・ベーカリー中村=情報部門
・クロじい=スパイ猫
・ハエトリガミ=秘密アンテナ
・麗奈のノボリ=暗号旗
修さん
「……俺、もう普通のパン屋に戻れない気がする……」
逃げても逃げても影は迫る。
角を曲がれば祖母。
少し歩けば黒帽子。
気づけばクロじいが見ている。
修さん
「(なんで……なんで俺だけ……)」
祖母
「修ちゃん、今日もパンちょうだい」
修さん
「……はい。(もう抗えない)」
黒帽子
「ふっ……やはりこの町には“何か”がある……」
いや、何もない。
全部誤解である。
しかし——
疑惑は深まった。




