FAXよ、沈黙からの逆襲──紙切れ四日間の恐怖
FAXを導入して数日。
大宮ふとん店の通販は一応“順調”だった。
ピッ……ガガガガ……ブッ……
(FAX特有の生き物みたいな音)
麗奈
「よし、今日も注文来てる……」
父
「文明ってすごいなあ」
祖母
「紙が勝手に出てくるなんてねぇ……魔法だよ魔法」
そんな“文明への感動”が起きていた。
だが、その文明は突然沈黙した。
ピ……(1日目)
……(2日目)
…………(3日目)
……………………(4日目)
FAXは一切鳴らない。
麗奈
「……あれ?今日は注文、ゼロ?」
母
「昨日もゼロだったねぇ」
祖母
「人気が落ち着いたんだろうねぇ。
流行りものは一瞬で終わるよ」
父
「まあ、買い時ってのがあるからな!」
麗奈
「そんな楽天的でいいの!?」
しかし家族四人、誰も疑わず。
“落ち着いた人気”だと思い込んで
のんびりお茶をすすっていた。
そこへベーカリー中村の店主、修さん登場。
ガラララッ(戸が開く)
修
「やあ、FAXの調子どうよ?」
麗奈
「あ、修さん。最近注文が来なくて……」
修
「え?この店が落ち着くわけねぇだろ」
修はFAXに近づいた瞬間、
表情を変えた。
修
「……あーーーーーー」
麗奈
「な、なに?」
修
「紙切れてんじゃん」
麗奈
「えぇぇぇぇぇ!?!?」
祖母
「紙が……?」
修
「紙がねえとFAXは沈黙すんの!!
それを四日間気づかないって何!?」
父
「人気落ち着いたと思ってた……」
修
「落ち着いてねぇよ!!紙切れだよ!!」
修さんが用紙を差し込んだその瞬間——
ピッ──ガガガガガガガガガッ!!
ピーーッ!!!
ガッシャァァァァァァァン!!!!
FAX「4日分の注文」を全部吐き出し始めた。
紙、紙、紙、紙、紙、紙!!!
麗奈
「きゃーーー!?」
母
「紙が雪崩のようにーー!!」
祖母
「前畑頑張れの時よりすごいねぇ……」
父
「修さん!!止めて!!」
修
「無理だよ!!これ生き物みたいな勢いだよ!!」
FAXは完全に暴走状態だった。
まるでヒッチコック映画で
突然鳥の群れが襲いかかるように——
“注文票の群れ”が店内に降り注ぐ。
麗奈
「紙の洪水ーー!!溺れる!!」
修
「なんでオレがこんなことに巻き込まれてんだ!!
なんで!!?」
麗奈
「修さん!手伝って!!」
修
「⋯!!」
怒涛の注文「枕カバー130件分」が床に舞い散り、
修さんはなぜか中心人物として巻き込まれた。
修
「封筒!封筒どこだ!!」
麗奈
「その祝儀袋と香典袋は使わないで!!」
祖母
「なら役所の穴あき封筒使おうかねぇ」
修
「余計ややこしいわ!!」
母
「修さん、これ大阪の人。こっちは福岡の人。」
修
「だから俺パン屋だって言ってんだろ!!」
麗奈
「ごめん修さん!
でも修さんがいないと通販回らないの!!」
修
「そんなの知るかぁぁぁ!!」
まるで主人公でもない一般人が
突然事件に巻き込まれるヒッチコック映画――
の“完全なコメディ版”が
大宮ふとん店で繰り広げられた。
全ての発送が完了した夜。
修は天井を見上げてつぶやいた。
修
「……俺、なんでふとん屋の通販手伝ってんだ……?」
麗奈
「修さん、本当にありがとう……
修さんがいなかったらもっと地獄だった……」
修
「次紙切れたら即呼んて⋯」
父
「頼りにしてるぞ、修さん!!」
修
「いや頼りにするなよ!!」
クロじい
「ニャ(修、運命だ)」
修
「猫にまで悟られるの嫌だ!!」
こうして大宮ふとん店は、
“紙切れ四日間の沈黙”という
大宮ふとん店史に残る大惨事を乗り越え——
修さんを巻き添えにして、
通販地獄の新章へ突入するのであった。




