現金書留が雪崩になる日──362ゾーンに降り注いだ“昭和の嵐”
麗奈が地元FMラジオ局「FMさいたま」で、
例のとんでも発言をしたのは月曜の夕方だった。
麗奈
「――えっと、麗奈ちゃん枕カバーは……
あの、電話で注文すれば“現金書留”で通販できます……」
パーソナリティ
「今!?令和の今!?
現金書留で!?」
スタジオ爆笑。
リスナーも爆笑。
しかし——ここから先は“笑いでは済まない現実”が始まる。
上尾市内の郵便局・仕分け室。
局員A
「……なんだこの“現金書留の山”は」
局員B
「全部宛先同じです。
大宮ふとん店(住所表記が昭和のまま)」
局員C
「……あの店また何か始めたな?」
荷台にギッシリ積まれた黄色の書留封筒。
配達員が思わず言う。
「これ……通販量じゃないですよ。災害ですよ」
配達バイクが大宮ふとん店の前に止まる。
局員
「大宮さーん!今日も現金書留でーす!」
祖母
「ありがとうねぇ〜。昔はこれが当たり前だったよ」
局員
「令和でそれ言うの大宮さんだけです……」
麗奈が駆け寄る。
麗奈
「うわぁぁ……こんなに……!?」
局員
「ほんとに。
現金書留で通販やってるの、全国でも大宮さんくらい
ですよ……」
父
「へぇ〜時代の先端を走っているな!」
麗奈
「逆!!100年逆!!」
店内に運び込まれた封筒の山。
床に積むと、まるで“金色の遺跡”のようだ。
母
「これ全部開けなきゃいけないの……?」
麗奈
「猫の手も借りたい!」
クロじい
「ニャ(嫌)」
麗奈
「冷たい!!」
郵便局、ついに大宮ふとん店対策チームを設置する。
局員B
「大宮さん、今日もこれです……」
(現金書留の麻袋を二つ担いでくる)
麗奈
「あの、なんかすみません……」
局員C
「仕方ありません。
うちでも“大宮ふとん店・現金書留対策班”作りました」
父
「おお〜特別扱いだな!」
局員C
「違います!
あなたたちのせいです!!」
局員たちの間では
「また362便か……」
「362ゾーンに突入するか……」
という謎の専門用語が生まれ始めていた。
その日の夜。
作業に疲れた麗奈がふと空を見上げる。
麗奈
「まだ……増えるのかな……」
クロじい
「ニャ(明日も来るぞ)」
黒電話
ジリリリリリリリ!!
父
「おっ、注文だ!!」
麗奈
「郵便局の皆さん、ほんとごめん……!」
こうして大宮ふとん店は今日も、
昭和の通販様式だけを武器に、
全国から飛んでくる“現金書留の嵐”と戦い続けるのであった。




