FAXが文明だと思っていた──麗奈ちゃん枕カバー全国発送大作戦
大宮ふとん店に、黒電話の悲鳴が鳴り続けている。
ジリリリリリリリリリリリ!!!
ジリリリリリリリリリリリ!!!
父
「枕カバーの注文が止まらん!!
これはもう……通販革命だな!!」
革命という割に、店のどこにも文明の匂いがしない。
家族総出で発送作業が始まり、
麗奈も戦力として動員される。
発送用の封筒は——なんと祖父時代の在庫。
郵便番号が5桁、
印字は旧字体、
切手は“昭和天皇在位50年記念”。
麗奈
「こんな化石みたいな封筒、使っていいの!?」
祖母
「いいんだよ。昔からこれで届いているんだから」
麗奈
「その理論いつも聞く!!」
母は黙々と古切手を貼る。
貼り方は全て斜め。
猫の毛が静電気で吸い寄せられ、作業効率がどんどん下がる。
麗奈
「もう猫の手も借りたいよ!!」
クロじい
「ニャ(嫌)」
麗奈
「即答!?」
黒電話は今にも煙を吐きそうだ。
ジリリリリリリリ!!
「枕カバーください!!」
「北海道まで送れますか!!」
「古い住所のほうがレアですか!!」
父
「電話じゃ追いつかねぇ……
そうだ、これからの時代はFAXだ」
麗奈
「今更!?」
母
「ファックスって、あれでしょ?
紙が送れるやつ?」
祖母
「私が書いた文字が遠くまで飛ぶのかい?
令和の時代は便利になったもんだねぇ〜」
麗奈
(昭和後期からあるよ……FAX……)
父が中古品店で買ってきたFAXを設置。
父
「よーし、今日からFAXで注文受付するぞ!
これで電話パンクが解消される!」
麗奈
「告知しなきゃ……」
その瞬間、嫌な予感しかしなかった。
後日。
FAX機が「ピーッ…ガガガッ……ブッ……」と鳴き始めた。
母
「きたきた〜!FAXで注文かな?」
出てきた紙:
“麗奈ちゃん枕カバー、ください
(文字がかすれて判別不能)”
さらに次の紙:
“住所:〒362-XX(読めない)”
そしてさらに:
“猫の毛がほしいです”
麗奈
「え、注文内容もう壊れ始めてる!?」
祖母
「便利だねぇ〜。紙が勝手に出てくる」
麗奈
「その“勝手に”が問題なの!!」
父がFAX前に立ち、感慨深くつぶやいた。
父
「これぞ未来……」
麗奈
「99年遅い!!」
さらにFAXは止まらない。
ガガガガガガガガ……
※紙がジャムる
母
「お父さん……紙が詰まってる……」
父
「どうやって直すんだ……?」
麗奈
「手前のフタ開けて……!」
祖母
「えいっ」
ガシャン!!(なぜか本体を揺らす)
麗奈
「壊れる壊れる壊れる!!」
結局——
誰もFAXを使いこなせなかった。
FAX導入から三日後。
父
「……FAXはやめよう」
麗奈
「早い!!」
祖母
「やっぱり手紙が一番だねぇ」
クロじい
「ニャ(最初からそうしとけ)」
こうして大宮ふとん店は、
黒電話と昭和封筒を握りしめたまま、
時代を逆走する通販を続けるのであった。




