黒電話が軋む夜──麗奈ちゃん枕カバー通販戦争
地元FMラジオ局「FMさいたま」。
その日のゲストは、上尾が生んだイベントコンパニオン兼人気戦隊ヒロイン・大宮麗奈。
番組終盤、DJが読み上げた一通のハガキが全ての発端だった。
〈ラジオネーム:羽毛ふとんの民〉
「麗奈ちゃん枕カバー、通販してほしいです!」
麗奈
「別に……買わなくてもいいけど……
大宮ふとん店には来てほしくないから……
通販も検討しないとねぇ……」
スタジオ内、大爆笑。
DJ
「ツンデレすぎる!!来てほしくない理由は!?」
麗奈
「迷子になるし、店は昭和だし、猫が寝てるし……」
DJ
「猫が寝てる!?どんな店!?」
リスナー爆笑。
しかしこれをきっかけに、
枕カバー通販希望ハガキ がラジオ局へ山のように届くことになる。
◆父、通販の概念に敗北する
ラジオ収録後、麗奈は急いで実家へ直行。
麗奈
「お父さん!通販の要望がめっちゃ来てるの!何とかして!」
父
「通販……? どうやるんだ?」
麗奈
「え?」
父
「商品を入れる箱は?
そもそも住所を書いて送るのか?いやこっちから行くのか?」
麗奈
「それ通販じゃなくて訪問販売!!」
祖母
「昔は“現金書留”だったねぇ。全部あれで済んだよ」
母
「現金書留なら間違いないわよ〜」
麗奈
(間違いあるから滅んだんでしょ現金書留文化……)
最終的に父がひねり出した答えはこうだった。
「電話で注文を受けて、現金書留で送ってもらう」
……まさかの昭和方式。
だが大宮家にそれ以外の選択肢はなかった。
◆そして運命の次回放送
一週間後。
麗奈は再びFMラジオに登場し、宣言する。
麗奈
「通販……えっと……電話で受け付けます……
番号は、
048Xの、ろくじゅうに——と……」
DJ
「いま“区切る位置”違いませんでした!?
市外局番と市内局番の境目がおかしい!!」
麗奈
「うちの家族……みんなこう呼ぶの……」
※住所と同じく電話番号も昭和で止まっている問題。
リスナー爆笑。
◆黒電話、悲鳴をあげる
放送翌日、大宮ふとん店の黒電話が震えた。
ジリリリリリリリリ!!!
母
「また鳴ってる〜〜!!」
父
「すげぇ……“通販”ってすごいな……!」
祖母
「はい、大宮ふとん店……え?枕……なんだって?」
電話
「麗奈ちゃん枕カバー、10枚お願いします!!」
祖母
「10枚!?……そんな買うもんなのかね?」
別の電話
「宅配できますか!?北海道なんですが!」
黒電話
「ジリリリリリリ!!」
別の電話
「現金書留送りました!先に送っときました!!」
麗奈
「まだ住所も書いてないのに!?
ていうか送料どうするの!?」
父
「送料……?」
麗奈
「考えてなかったの!?!?」
父
「商品代金はもらえるから、送料は……まぁ……
なんとかなるだろう」
麗奈
「ならないの!!全国から来てるの!!」
黒電話
「ジリリリリリリリリ……!!(限界)」
猫・クロじい
「ニャ(店が崩壊するぞ)」
その日の夜、
注文一覧を前に家族会議が開かれた。
麗奈
「これ……送料どうする?」
父
「“着払い”ってのはどうだ?」
祖母
「可哀想だよ。せっかく応援してくれるのに」
母
「クロじいに運んでもらう?」
麗奈
「どこまで行く気?全国から注文きてるよ!!」
クロじい
「ニャ(やらん)」
結局、
送料を誰が払うのか という根本問題が解決しないまま、
黒電話のベルだけが今日も虚しく店内に鳴り響き続けるのであった。




