地図アプリが迷子になる店──上尾最後の秘境、大宮ふとん店
上尾市の外れ。
昭和で時間が止まったような「大宮ふ ん店」(“と”が消えかけ)は、
今日もゆるゆる営業していた。
しかし最近、この店が妙な形で話題になっている。
理由はただひとつ——
地図アプリが店をまともに案内できない。
ある観光客が、スマホを見ながら言った。
「このルート……住宅街のど真ん中で終わってるんだけど……?」
「しかも“目的地に接近しています(猫注意)”って出てるぞ」
そう、説明文が明らかにおかしい。
アプリの店舗紹介欄には、なぜかこう書かれている。
「猫がいます」
「誤字があります」
「布団が時々飛ぶことがあります」
「インスタバエ注意」
「店主はそろばんの達人です」
布団情報、ゼロ。
客A「ここ……布団屋ですよね?」
客B「さぁ……猫屋かもしれん……」
麗奈
「だれ!?誰がこんな情報載せたの!?」
祖母
「猫はおるし、誤字もあるし、合ってるよ」
母
「“インスタバエ”は私が書いたのよ〜。ハエ注意って意味で」
麗奈
「だからその誤解が広まってんの!!」
父
「布団が飛ぶのも事実だぞ。去年の台風のときなんか——」
麗奈
「言わなくていいから!!」
アプリに従って歩いてきた観光客が、
何故か毎回、店の裏手の茂みから登場する。
観光客
「最短ルートに従ったら……最後ジャングルみたいな道に……」
麗奈
「ここ埼玉ですよ!?密林ないですよ!!」
そして極めつけは口コミ。
「猫に案内されてたどり着きました」
「誤字POPが尊い」
「ハエ取り紙に感動しました」
「上尾の秘境」
布団の話はほぼ皆無である。
祖母
「猫に案内?うちのクロじいかねぇ」
クロじい
「ニャ(してない)」
※なぜか否定している感じだけ伝わる。
ついに地図アプリ側が根を上げたのか、
目的地の説明がこう変わった。
「この店は案内が困難です。お気をつけて。」
麗奈
「そんなことある!?店への案内を放棄するアプリって何!?」
父
「うちは秘境扱いか……」
祖母
「まあ、店は逃げないからねぇ。来たい人は来るさ」
母
「猫のエリアも作ったし、観光客もわりと楽しそうよ〜」
麗奈
「そういう前向きさ、嫌いじゃないけど複雑!!」
地図アプリ迷子の観光客が、
裏手の茂みをかき分けて店に到着する。
観光客
「すみません……案内に従ったらなぜか竹林みたいな——」
麗奈
「だから竹林ないってば!!」
クロじい
「ニャ(また迷子か……)」
こうして“大宮ふとん店・秘境伝説”は、
今日も静かに(しかし盛大に)更新され続けるのであった。




