表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宮ふとん店、本日もたぶん営業中  作者: スパイク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/108

令和に生きる昭和の番号──大宮ふとん店、電話だけ時空がズレてる件──

埼玉県上尾市。

商店街の外れに立つ大宮ふとん店は、

看板の「と」の字が消えかけて“ふ ん店”になっていることでも有名だが、

もうひとつ強烈な特徴がある。


家族全員、電話の市内局番が“3桁になったことを理解していない”。


理解していない、というより——

興味がない。


そもそも電話がほとんど鳴らないため、

記憶が昭和のままなのだ。



ある日、商店街の会合で誰かが言った。


「大宮さん、そろそろ正しい電話番号に直したほうが……」


祖母はキョトンとした。


祖母「え? うちは“ろくじゅうに”だけど?」

会長「違いますよ!今は“048-(略)”で——」

祖母「いや、うちにかかってきたら“62”で鳴るから大丈夫」


母が静かに同意する。


母「うん、電話番号なんて気持ちで覚えるものでしょ」

父「実際、誰も電話してこないから問題ないって」


会長「問題あるから言ってるんです!!!!!」




トークショーの帰りにファンから聞かれた。


ファン「大宮ふとん店の電話番号いくつなんですか?」

麗奈「来なくていいけど、0486の——」

ファン「え!?」


家族の会話を聞きすぎて、

知らぬ間に口が覚えてしまっていた。



客「お店の電話番号教えてください」

祖母「ろくじゅうにの……」

客「いや、3桁のはずですが」

祖母「でも、うちは“62”なんだよ」


父「048のあとに6が来るんだろ?

 だったら“0486”じゃねぇか」

客「それは区切り方が変なんです!!!!」


母はもっと自由だ。


母「『ろくじゅうに』って言い慣れてるから、

 数字変わっても言い直す気がしないのよねぇ」


客「気持ちの問題!?」



電話局の担当者が訪問。


技術員「市内局番が3桁になったのはご存じですよね?」

祖母「なんとなくは」

技術員「では“62”はもう使われません」

母「でも、電話鳴るじゃない?」

技術員「えっ」

父「たまにだが鳴るぞ。月1くらい」


説明すればするほど混乱が増える。


祖母「新しい番号、長くて覚えられないねぇ」

母「3桁は多いのよ」

父「2桁で十分だろ。昭和は良かった」

技術員「令和なんです!!!!」




配送ワゴンの側面にはこう書かれている。


大宮 とん店

TEL:62-XXXX


麗奈「……せめて“ふ”だけ直して……!」

祖母「今さら直してもバランスおかしくなるよ?」

母「電話番号よりそっち?」

父「むしろ“とん店”のほうが目立つだろ」


麗奈(……この家、価値観どうなってるの……)


市民の口コミ。


「大宮ふとん店は“62”でつながるらしい」

「時空が昭和で止まってる店」

「Googleマップの電話番号が正しくても、

 家族が誰も覚えてない」

「店に行ったら“0486”って言われた」

「区切りがおかしい」


ついにはSNSでこう呼ばれる。


“上尾の時空歪曲店”


麗奈「……もう好きに呼んで……」


祖母「でも“62”は大事なんだよ」

母「だってうちの歴史だから」

父「覚えやすいしな」

麗奈「……歴史より正確さを優先して……!」


だが、大宮ふとん店は今日も平然としている。


なぜなら——


電話がほとんど鳴らないから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ