大宮ふとん店・ネット爆速伝説 ロード時間0秒の怪物ホームページ
埼玉県上尾市──。
商店街の外れにある“大宮ふとん店”には、
ある意味で日本に名を轟かせている“遺産”がある。
ホームページだ。
ただし、店の人間は誰もその“偉大さ”を理解していない。
むしろ、存在すら忘れかけている。
だが、ネット民の間ではこう呼ばれていた。
「日本三大爆速表示ホームページの一角」
残り二つは、
・俳優A氏の驚異の爆速個人サイト
・南の島・某国観光局の公式ページ
その並びに、なぜか 大宮ふとん店 がいるのだ。
◆父、突然のIT革命宣言
2012年の夕方、父が競輪新聞を読みながら呟いた。
「……これからはインターネットの時代だな」
母「…今更?」
父は胸を張った。
「うちも“ホームページ”ってやつを作るぞ!」
まるで平成初期の発言である。
◆制作開始──そして即挫折
父は近所の本屋で買った初心者向け本を開いた。
『誰でも作れる!やさしいホームページ』
父「ふむふむ……タグ……?
画像……?
リンク……???」
ページを3枚めくったところで本を閉じた。
「無理。」
祖母「早っ!」
母「3ページで諦めるってある?」
麗奈「せめて画像の貼り方まで頑張って……」
しかし父には奇妙な発想があった。
「画像を貼らなきゃ軽いだろ?
文字だけなら爆速だぞ?」
その結果──
文字だけ、背景白、写真ゼロ、装飾ゼロ、CSSゼロ、
HTMLタグすら怪しい紙のようなホームページが完成。
◆伝説の爆速ページ、誕生
ホームページのTOPはこうだ。
——————————
大宮ふとん店
営業中
(写真なし)
——————————
下に書かれているのは、
明らかに古い市内局番のままの電話番号。
0482-6X-XXXX
さらに下には意味不明な一文がついていた。
『この店は上尾市にあります』
(住所は書かれていない)
◆ネット民の発見
誰も見ていないと思われていたサイトは、
ある日ネット民の“爆速ランキング”に突然ピックアップされた。
「読み込み0秒ww」
「紙の方が重い」
「ブラウザが“瞬間移動した”」
「アクセスした瞬間、ページがもうそこにある」
謎の賞賛が集まり、
ついには──
“日本三大爆速ホームページ”
に数えられてしまった。
父「すげぇ!俺は天才か!?」
祖母「何もしてないのが功を奏したのねぇ」
母「写真がないから軽いのよ」
麗奈「写真がないと全然か伝わらないんだけど!?」
◆何も更新されないまま伝説に
爆速ランキングに載ったあと、
ネット民が期待して再アクセスした。
……が、内容は全く変わっていない。
トップページの一番下にある更新日だけが
「2012年」
で止まったまま。
リンクをクリックするたび:
・404
・空白
・謎のHTML断片
のどれかが必ず出る。
だがページは爆速。
ネット民「更新されたら逆に遅くなるから、このままでいい」
「このサイトが残ってるだけで安心する」
「令和でこの軽さは奇跡」
いつの間にか、
大宮ふとん店は“爆速の象徴”として保存されるべき存在になっていた。
父「よし。もう更新はいいな」
母「え、更新してたの?」
祖母「そもそも触ってないよ」
麗奈「……何もしてないのが一番強いってどういうこと?」
クロじい「ニャー(多分勝ち)」
大宮ふとん店のホームページは今日も爆速だ。
なぜなら──
軽すぎて、ほぼ無だが残っているから。




