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大宮ふとん店、本日もたぶん営業中  作者: スパイク


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33/108

永遠に終わらないセール地獄

埼玉県上尾市──商店街の外れに立つ大宮ふとん店には、

他のどの店にも存在しない“恐るべき特徴”がある。


年間イベントが……終わらない。


いや、厳密に言うと、

終わる前に次のイベントが始まり、

さらにその上に別のイベントが積み重なり、

最後は何がなんだかわからなくなる。


店頭のガラスには、重なり合ったポスターが層になっており、

もはや木の年輪のようだ。


◆第一層:「創業祭」


時期:不明

理由:誰も覚えていない

貼付者:祖母


「創業祭開催中!」

と書かれた昭和フォントのポスターが貼られている。


祖母が胸を張って言う。

「うちはいつ創業したかは忘れたけど、記念日は毎日なんだよ」


記念日の概念が崩壊している。


◆第二層:「新生活応援セール」


時期:数年前の春

貼付者:母


母は“季節を感じた時に貼る”という方針だが、

剥がすという行為を知らない。


「新生活応援!」

の文字の上に

祖母の“創業祭”が重なっており、

さらに破れた角から“値引き30%”が半分だけ見える。


客「これって、新生活のセールですか?」

母「今日の気分は創業祭かな〜」

祖母「わしは新生活応援の日だと思うけどねぇ」

父「俺は閉店セール推し」


価値観が三つ巴で戦っている。


◆第三層:「閉店セール」


時期:不明

貼付者:不明

目的:不明

セール内容:不明

存在が:不安


“閉店セール!”

と書かれたポスターは、誰が貼ったのか本当にわからない。


祖母「私じゃないよ」

母「私も貼ってない」

父「俺が貼るわけねぇだろ」


麗奈「じゃあ……誰?」

祖母「幽霊かもしれんねぇ」

父「上尾の風のイタズラだな」


閉店セールポスターの上に

“創業祭”のポスターが貼られており、

閉店して創業して新生活応援している店になっている。


◆極めつけ:ポップの地層化


新しいセールを思いつくたび、

祖母と母は古いポップの上から貼る。


その結果──


・「創業祭」の上に「歳末大感謝」

・その上に「秋の寝具フェア」

・その上に「真夏の大特価」

・その上に「半額以下(“以外”に見える誤字)」

・さらに「新生活応援」

・最後に「閉店セール」


重なりすぎて、もはや

“歴史の年表”のような壁面が完成していた。


祖母は誇らしげに言う。

「ポスターって重ねると丈夫になるんだよ」

母「うん、破れないし便利」

麗奈「意味は破れてるよ!!!!!!」


◆混乱する客たち


客「今日って何のセールなんですか?」

祖母「全部やってるよ」

客「全部!?」

母「今日は気分で“新生活応援”の日かな〜」

父「俺は閉店セール派だけどな」


客「閉店するんですか?」

祖母「しないよ」

客「じゃあ閉店セールって……」

父「毎日シャッター下ろしているよ」


誰も核心には触れない。


その日のSNSには

「ポップの地層を持つ店」

として大宮ふとん店の写真が拡散され、

またしても“インスタバエ・スポット”としてバズった。


大宮ふとん店のイベントは、

今日も、明日も、来年も続く。


なぜなら──

誰も剥がさないから。

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